【Cry*6】間章「夜明けの国」

2017.05.11 00:00|【Cry*6小説】間章
「不機嫌フローラ」


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間章、夜明けの国

 空と大地が穢され続けたことに嘆き、大地に降りたいと願った形ない存在。それが「精霊」だった。
 人の姿を模した精霊という存在は、強い力を纏って地に降り、人は力を持つようになる。
 力は魂に宿り、転生を繰り返すが、力は人々の魂に宿るごとに薄れていき、扱える人間は少なくなる。
 今はその力を魔力、その力を使う術を魔術と呼んでいる。
 魔力には炎、光、闇、大地、水、風の属性がある。そして稀代の存在の生命と月。
 魂に継がれ、人が持つことのできる魔力の属性は一つだった。
 ――アウローラ国の魔術師たちは例外として。


 白亜の建物が立ち並ぶアウローラ国の首都に王宮がある。
 白い石で造られた宮殿の上層階の一室に、彼女はいた。大きな窓が開け放たれ、バルコニーからは涼しげな風が流れている。
 淡い紅紫色の髪を揺らしながら、光の魔術師であるフローラは、椅子に腰掛け、気怠そうにテーブルの上の割れた水晶を眺めていた。若草色のスリットの入った細身のドレスを着て、足を組む。髪と同じ色の瞳は不機嫌そうに細められている。
 重い足取りで杖を手にした、紅い瞳の女が部屋に入って来た。
「お帰り、アニタ。どうだった?」
 部屋に入って来たのは湖の神殿から戻った魔術師のアニタ。彼女は項垂れたまま部屋の入り口付近で立ち尽くしている。手から杖が滑り落ち、鈍い音が響く。
「どしたの? また、なにかひどいことがあった? された?」
 杖を床に落としたまま呆然とするアニタに、フローラが心配そうに声を掛ける。
「違う。闇の魔力を持つ人間に会ったの……」
「やだぁ……ホントに?」
 そこでようやくアニタは顔を上げ、フローラを見た。彼女の眉間にしわが寄っている。フローラの機嫌が悪いのは珍しいことだった。
「フローラこそどうしたの? その様子だと……何かあったの?」
「水の呪いが解けちゃったのよ」
 フローラは忌々し気に、割れた水晶を手で払った。テーブルから離れ、重力に引かて落下するが、絨毯の上に落ちる寸前に爆ぜて跡形もなく消えた。フローラの光の魔術だった。
「水……。あの子のせいね」
「あの子って誰よ」
頬を膨らませたフローラがアニタを見た。
「湖の神殿にいた、というかひょっこり出てきたの。魔力の気配すらなかったから、突然現れて吃驚したわ。見た目は普通の女の子だったけれど……」
 思案しながら呟くアニタの言葉に、フローラが首を傾げる。
「ん? 闇の魔力を持つ人間がいて、さらにひょっこり出てきた子が水の魔力を持っていたの?」
「違うの。神殿で出てきたのが闇の子なの。雨を降らせて、私が都に放った炎を消して……。フローラが呪いをかけた子も一緒だった。あの子、まだ生きていたのよ」
「まだ生きてるの?」
 フローラは目を輝かせる。彼女がどうしてそんな表情を浮かべられるのか、理解できないアニタは肩を落として涙ぐむ。
「あの闇の子に、あなたの呪いを抑える力があるなんて……」
 細い声でアニタが嘆いていると、開いたままのドアをノックして、一人の男が部屋に入ってくる。
「アニタ、戻っていたのか」
 肩につく長さの銀の髪を靡かせ、白いローブを纏った男は、冷めた勿忘草色の瞳でアニタを見た。
「カレヴィ……あの」
 その男を前に、アニタは頬を赤らめた。唇が震え、うまく言葉を紡げない。
 光の魔術師として戦いに赴く時は虚勢を張っているアニタだが、いつもは繊細で気が弱く、涙脆い。カレヴィに好意を抱いているが、彼の存在に涙する。おろおろするばかりのアニタを見て、フローラが横から「ダメだったらしいわよ」と小声で言った。
「水の大魔術師は見つからなかったの……」
「そうか」
「闇の魔力を持つ者がいたの……」
 上目遣いで話すアニタに、カレヴィはただ頷くだけだった。
「その闇を消したのか? その闇を前にして、お前は逃げたのか」
 彼の冷たい眼差しを受け、アニタは俯き、震えて涙を溢した。カレヴィは無言でアニタを見下ろしている。二人の相変わらずの様子にフローラは溜め息を吐いたが、文句は言わずにいた。
「水の大魔術師サマをあぶり出そうとしたら、違うものがあぶられたってわけね。……でも今まで、その闇の小娘はどこにいたの? 私が呪った男も生きていたらしいしねぇ」
 腕を組んで悩むフローラ。しかし鼻歌を歌いながら悩む姿は楽しそうにも見えた。
「今時、闇の魔力を持つ人間が幾人もいるとは思えない。たぶん闇の魔力の主だろう。闇の司の化身――闇の力の主は、結界を作るという。無意識に結界を張り、気配を絶っていた可能性がある」
「女ってのがね……闇の司の化身なら、男でしょ?」
 精霊の力は魂と共に転生するが、炎と光と闇は転生する性別が決まっていた。炎の乙女の化身は女性、闇と光の司の化身は男性だった。
「精霊が地に降りてからだいぶ経っている。例外も出てくるだろう」
 アニタは涙を拭い、心を落ち着かせながら、二人の会話を静かに聞く。
「闇の司の化身なら呪いを緩和することもできるだろうな。フローラが呪いをかけた男の気配が消えたのは、その闇の魔力の女と共にいたからかもしれない。とすると、その男の気配が消えた辺りにいたのか」
 淡々と話すカレヴィの言葉を聞きながら、フローラは目を細めた。
「水の魔術師はどこに行ったの? 突然気配が消えたということは死んだの?」
「もしかすると、ずっと前からいなかったのかもしれない……」
 二人の話を聞きながら、アニタが呟いた。
「闇を隠すために、か。俺たちは何年も騙されていたのか」
 以前からクレプスクロム王国との国境近くに、水の魔力を感じていた。水の大魔術師・ベアトリスだろうと彼らは推測し、水の魔術で降雨を操り様子を伺っていたが、最近まで妨害されて何事もなかった。
「結局、水の魔術師のいるはずの場所では、水害は起こらなかったわね。最近になって、湖の神殿のあったオクトーベルの都で日照りが続いてたけれど、それは闇の女が動いたせい?」
「闇は無意識かもしれない。魔術師はわざと水の魔力だけを残して死んだ可能性もある。死してなお、闇を護っていたのかもしれんな……」
 感情のこもらない声でカレヴィは淡々と話していた。その横で自分が叱責されている錯覚に陥り、どうしていいのか判らなくなったアニタが涙を溢す。
「もう泣くな。落ち着け」
 カレヴィは震えるアニタを抱き寄せた。アニタはカレヴィに縋りついた。フローラはその様子をにこにこしながら眺めていた。
「――とにかく」
 フローラは立ち上がった。
「闇があるなら消す。その闇の魔力を持つ人間を殺しましょ。敵じゃなくても存在が忌々しいのだから」
 立てかけてあった剣を手にした。彼女には不似合の武骨な片手半剣だった。
 問題があったら一つづつ解決すればいい。最善の方法が見いだせなくとも、道は何処かにあるはず。フローラは冷笑を浮かべながら、ドレス姿のまま剣を腰に装備した。
「何処へ行くんだ?」
 カレヴィがフローラに声を掛ける。
 フローラ、アニタ、カレヴィは白光の四天王と呼ばれていた。彼らの行動は基本的に自由だった。
「となりの黄昏の国を冷やかしに行ってくるわ。今のところ、魔力を使いこなすあの国が一番の脅威だもの」
 歌うように呟いて、フローラは目を閉じ、小さく呪文を唱えてその場から姿を消した。移動の魔術だった。

 光の魔術師は名前の通り、光の魔力を中心とした魔術師の集団だった。
 魔力を持つ者が虐げられる状況に変化をもたらすため、十年以上も前から暗躍していた。彼らは旧アウローラ国を征服して、新国として国を興した。それが九年ほど前。
 アウローラ国と南北で隣り合わせのクレプスクロム王国、そしてそれ以外の隣接した国々にも争いを挑んでいた。
 光の魔術師は少数精鋭であり、その中でも権力と力を持つ四人は白光の四天王と呼ばれ、自国では崇められ、他国では恐れられていた。
 新国を興した際に擁立した国王は退位し、現在は四天王の一人が国王として治政していた。そのため、現在四天王の一席は空席になっていた。
 魔力をわずかしか持たない人間、魔術を使えない人間を卑下し、光の対にある存在、闇と月の巫女を憎悪した。

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コメント

こんにちは。
テーブルの上にある物はなんだろう?
って思ってたのですが、もしかして溶けちゃった?
魔力を鍋にたとえると
火・激辛鍋、水・水炊き、大地・キノコと山菜の味噌煮込み、闇・闇鍋
ってところで、闇鍋? 意味わかんねーっおなかすいたー(笑)
とか、アホなことを想像してしまいました~(笑)

きれいなひと…(=◇=人)❤
ぴんくの髪がすてき…だあれ?

バケツさん

コメントありがとうございます(*´▽`*)
テーブルの上にあるのは割れた水晶玉です。水までだらだらです(;'∀')

豆乳鍋も追加しておきましょう♪
闇鍋って何をいれてもいい鍋でしたっけ?(違

今日は一日肌寒いので鍋食べたくなりました(´艸`*)

Baby pink amyさん

コメントありがとうございます(*´ω`*)

敵の女の子です(´艸`*)
しかも結構強い(`・ω・´)
紫っぽくしたいのにいつもピンクになってしまうんです(;´Д`)

こんばんは。こちらの記事はけだるげな横顔の
フローラさん、表情、露出した足、そして割れた水晶も
美しいです。カレヴィさんがアニタさんを抱き寄せた
シーンはドキドキでした…!そして動き出した
フローラさんの今後の行動にドキドキです…!

先日は結衣様の素敵なありすちゃんを
紹介させて頂いた記事にコメントありがとでした☆
飾らせてくださり、本当にありがとうございます!
ブログにも丁寧なコメント、皆さんからたくさんの
愛のこもったプレゼントがたくさん届いて素敵、
と言って頂けた事も嬉しいです!こちらでも感想を
書かせて頂きましたが、結衣様も愛のこもった
プレゼント、改めて本当にありがとうございました!

いつも丁寧なお返事もありがとです!みんな仲良しな
ドキプリ、1~最終話までご覧になっていたのですね…!
学校が違うありすちゃんの制服姿は最終回のみでしたし
私も私服姿の印象が強いです。私服との色合いが違う
制服姿は新鮮で可愛いですよね☆いつか全員描いて
みたい、とは素晴らしいです…!fateは凛はアーチャーとの
関係も好きです。そしてセイバーと士郎の物語も素敵ですよね。
1番最初に見たアニメの印象が強く、最後まで誇り高い
セイバーの姿は、とても美しく格好良かったです。
長々と失礼しました。読んでくださり、ありがとでした!

本編の方は4人の今後が気になり
ドキドキしてます…!
リルちゃんどうなるの!?

そして、カレヴィさんが、気になってます(ソワソワ)

最後に
結衣さん、結衣さんのサイトとリンクさせていただいても
よろしいでしょうか?
お願いします!!

それでは!

風月時雨さん

コメントありがとうございます(*´ω`*)

フローラ褒めていただきありがとうございます(*'ω'*)
髪の色からして普通じゃない子ですが、どうなっていくのか楽しんでいただけたらと思っています(*´ω`*)
敵の国の登場人物にもちゃんと物語を作っていこうと思って現在奮闘中です(;'∀')
カレヴィとアニタについても物語を描いていこうと思っています。
(アニタは初回登場時の湖の神殿とキャラが違い過ぎていますが(;'∀'))

ドキプリはキャラデザが好きなんです♪
敵側のキャラクターたちも好きだったので、いつか描けたらなと思っています(*´ω`*)
風月さんのブログで描かれていたマーモ姉さんを見て、私も描きたいなと思いました(´艸`*)

FateはDEEN版アニメも言われるほど悪くなかったんじゃないかな…と思っています。
ラストとギル様とOP、EDは良かったと思うんです。
凛はアーチャーとの関係がいいですよね(*´ω`*)
セイバーとは士郎かなと(桜にはライダーがいるし……(違)

いつもありがとうございます(*´ω`*)

音鳴さん

どもです♪コメントありがとうございます(*´ω`*)

君は一体なにをかきたいんだい?(´・ω・`)ってルアトに突っ込まれそうな状況になってます(笑)
クールダウンの意味も含めて(主に自分の頭)間章として敵側を書いてみました。

カレヴィとアニタの関係も書いていこうと思っています。
リルたち4人はしばらくお城でまったり過ごす予定になってます(まったりかは未定(;´∀`))

リンク、私の方からもさせていただきたいと思っていました!
大丈夫です。私もリンクさせていただいてもよろしいでしょうか?
こちらこそお願いします(*´▽`*)
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プロフィール

清水結衣

Author:清水結衣
いつもご訪問いただきありがとうございます。

オリジナル中心でお絵かき。たまに版権絵。
そしてぼちぼち文章を。
プロフ画は野分シムロさんに描いていただきました
(*´ω`*)

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