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2017-05

【Cry*6】3-7、両手に花 - 2017.04.27 Thu

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3-7、両手に花

 夕食後、休むリルにレイリアが添って客間へと行った。ルアトも続く。リルは僅かな時間、ルアトの右手を握った。
「リル、大丈夫なの?」
 心配そうに顔を見つめるルアトにリルは小さく微笑んだ。
「少しだもの。大丈夫」
 極力魔力は使わないようウルリーカに注意されている。ルアトの額の傷の出血は止まり、額の包帯は外していたが右手は未だ出血する。リルがベッドに入るのを確認してから、ルアトはカイトの部屋へと向かった。
 屋敷の灯りはすべて魔術で灯されていた。揺らぎもせず、明るく屋敷の中を照らしている。
 部屋を訪れると、カイトは本を読んで待っており、丁度、侍女たちが酒の席の準備をしていた。カイトがルアトに席を勧める。侍女は準備が済むと静かに下がった。
 ドアが閉まったのを確認して、カイトは二つのグラスに葡萄酒を注ぐ。
 二人はグラスを合わせ、葡萄酒を飲む。
「疲れているところ、酒に付きあわせてすまない」
「大丈夫です。カイトさん、何から何までありがとうございます。泊まるところまでお世話になってしまって」
「俺の屋敷だ、気にするな。楽に過ごしてほしい。こちらこそ、隊長の遺品を運んでくれてありがとう」
 昼と違い、マントや鎧を外してラフなシャツ姿になったカイトは優しく微笑んだ。
「大変な中、ここまで来てくれて本当にありがとう」
 ルアトは静かに首を振る。
「俺は何も、していません。一人だったら無理でした。でも、リルが助けてくれたから、死なずに来れました。レイリアも気遣いしてくれて、俺一人じゃ来れなかったと思います」
「国の兵が向かったのに、お前の村を護れなくてすまなかった」
「仕方、なかったんです。俺も――」
 何もできなかったし、と呟いた。
「……村を襲った魔術師は、どんな奴だったか?」
「髪の長い、――ピンクのような、薄紫のような色の髪をした女でした。湖の神殿で会ったのは違う女でした」
「そうか」
 険しい表情を浮かべ、カイトが黙り込む。
「カイトさんは、村に行ったんですよね。……村は、みんなはどうなっていましたか」
「皆亡くなっていた。……俺たちで埋葬した。祈りもなくて申し訳ないんだが」
 いえ、ありがとうございます、とルアトは頭を下げる。
「俺の、恋人は……最後まで逃げたんだけれど……」
「もしかして隊長の近くに倒れていた娘か? 彼女も……埋葬した」
 ルアトが俯いた。膝の上で握りしめた両手が震えている。気付かないふりをして、カイトはルアトのグラスに酒を注ぎ、話題を変えた。
「そういえばルアトは……レイリアとリル、どっちかとあれしてるのか?」
「……あれ、って?」
「ここに来るまで両手に花だったろう? 長く旅していたんだから手を出したんだろう。どっちだ? まさか両方か?」
「な、何言ってるんですか? 何もしてません! 手なんて出してないです!」
 とルアト。
「そんなことしてたら普通に旅していませんよ!」
「――そうか?」
「リルは頑張り屋だし、レイリアはいい子だけど、なんていうか……ずれてるし」
「……確かにな」
 納得するカイト。しかしそこで追求の手は緩めない。
「でも、リルとはよく手を繋いでいるだろう。実際はどうなんだ? 夜は手だけじゃなくて、それ以上だったんじゃないか?」
 ルアトが口に含んだ酒を吹き出し、咳き込んだ。その様子をカイトは楽しそうに眺める。
「あれは俺の呪いを解くためで! そんな、別に理由とかないですし、それ以上なんて……!」
 ふーん、とカイトは目を細めてルアトを見る。口元が笑っている。意地悪い顔だ。
 余裕あるカイトの様子に、ルアトはますます焦った。
「呪いを出来るだけ抑えるために、手を繋いでいるだけです!」
「毎晩一緒にいて手を繋いでいて、何もないのか?」
「カイトさん?!」
 からかわれて、ルアトは苛ついた。手前にあるグラスの酒を飲み干した。
「別に疑ってはいない。確認だ。ということは、俺があいつを狙っても構わないのか? ルアトにとって特別な何かではないのなら」
 歪む視界に感情が渦巻いて靄がかかる。視界に映ったカイトは真剣な眼差しだったようにも見えた。
「そう、ですけど」

 夜更けにレイリアは目を覚ました。起き上がって横のベッドを覗くと、リルは寝た時と同じ姿勢で静かに眠っていた。寝返りすら打っていない。ルアトは部屋に戻っていなかった。履き物を突っ掛け、リルの傍に行く。
 いつもリルがルアトにしているように手を握る。手はほんのり温かい気がした。
(一緒に寝たら、体あったまらないのかな)
 履き物を脱いでリルのベッドに登り、薄手の寝衣をたくし上げたところでドアがノックされた。
「はーい」
 鍵は掛けていない。部屋に入ってきたのはカイトだった。彼はレイリアを見て唖然とする。
「お前……何をしているんだ?」
 服をたくし上げ、裸体同然のレイリアは恥ずかしがる様子もなく、呆れ顔の騎士をきょとんと見ている。
「何って?」
「――リルを襲う気か?」
「違うわ! 一緒に寝ようと思っただけよ。肌と肌を合わせたら温かくなるかなって思っただけ。……ねぇカイト。ルアトはどうしたの?」
 たくしあげた服からようやく手を離して、レイリアは首を傾げる。彼女の露わだった肌が隠れ、カイトは安堵した。
「俺の部屋で酔って寝ているぞ。あれは放っておいていいのか? 手が呪われているんだろう?」
 レイリアははっとしてベッドから降りた。
「いつもならリルが手を握るけど……今日はリルが無理だし。心配だから私行ってくる。私にはどんな呪いかすらわからないし……何も出来ないけど……」
「ルアトに何をしても、リルには告げ口しないから安心して行ってこい」
「もう、カイトじゃないんだから、何もしないで見守るの! そんなことばかり言うからリルがカイトを怖がっちゃうのよ! もう、どうしてリルは寝てるのよ! 早く元気なリルになってほしいんだから! もう!」
 レイリアがカイトに喚き当たり散らす。不安によるストレスのはけ口が自分に向かっていると、カイトは心の中で溜め息を吐いた。
「――いや、いい。早く行ってこい。こっちは見ているから」
「ルアトには内緒にしてあげるから、リルとゆっくり楽しんでね」
「何もしねーよ」
「アヤシイわ!」
 頬を膨らませながらレイリアはガウンを羽織って部屋を出る。ドアが閉まるのを確認してから、カイトはリルの寝ている寝台に腰掛け、寝顔を見つめた。
「リル……か。……闇の魔力、自然なのか?」
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● COMMENT ●

お疲れ様、短期間の間に、良く書けましたね。

カイトが一体何を考えているのか?
リルは、ルアトは、レイリアも・・。
どうなるのか物凄く気になります。
でも、続きはゆっくりと。
読みたいと思います。

いつも訪問ありがとうございます。
応援して帰ります。ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡

雫さん

コメントありがとうございます。
結構時間はかかっているんです(汗
予約投稿のおかげで何とか定期的に投稿できています……


ありがとうございます。


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