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2017-05

【白い思い出と紅い約束】一・出逢い(1)【小説】 - 2014.04.14 Mon

「白い思い出と紅い約束」

一、出逢い(1)

 海に面した小さな小国の、最も海から離れた場所にある小さな町。
 寂れた町の外れにある、煤けた建物が軍の駐屯地。事務室では数名の若者たちが雑談をしていた。
 紺のトレーニングウェアに身を包んだ若者――軍に志願した若者――が数名と、軍服を纏った男――こちらは正規の軍人である――が二人。椅子や机に座り、各々が勝手気ままに時間を潰していた。事務所らしく机が並んでいたが、今はほとんどが使われていない。
 首都を離れれば規律も緩く、地方赴任の軍人と現地採用の志願兵の若者は、先輩後輩のような穏やかな関係を築いていた。
 正規軍人のトオルは、窓際で煙草の煙を燻らせていた。外を見ても灰色の景色しか見えないが、煙草をくわえながら、静かに窓の外を眺めていた。
「この世界どうなっちゃったんだろうねぇ。太陽が恋しいねぇ」
 椅子に腰かけたまま背伸びをして呟いているのが、もう一人の軍人のサトル。彼の周りに後輩が集まっていた。
「空が霞んで寒くて農作物は不作だし。今年もこっちは大雪でしょ?」
 志願兵の中の紅一点のマリは、机に向かって書類を書いている。手を止めることなく背を向けたまま、サトルの言葉に返事するように言い放った。
「異常気象もここまで来ると末期ですよ」
 一人がぼやいた。
「精霊サマが荒れているとかって噂もあるっすよね」
「あ、あの噂ね。本当だか怪しいけどねぇ」
 後輩の呟きにサトルが答えた時、シンが新聞を手に戻って来た。大人しく真面目な青年だ。
「町にやっと新聞が届きました。でも、一昨日分と昨日……古い情報ですが」
 港から走ってきた彼は、肩で息をしていた。
 この国の中心には大きな湖がある。リトス湖と呼ばれる湖は国の唯一の水瓶で漁業ができる場所だった。しかしこの湖が国を分断していた。国内の移動、荷物の搬送にも、船を利用する羽目になっていた。
「お、サンキュ。僻地の俺たちにはさ、軍本部からなーんも連絡ないからね。古くても情報は情報。有難いねぇ。シンちゃんは気が利くねぇ」
 そう言うサトルは新聞を読もうとはしなかったが。代わりに机に向かっていたマリが、シンから一昨日の新聞を受け取ってバサリと広げた。
「ふぅーん。隣接する国以外の情報は無し、っと。東の国は変わらずだそうで国民流出防止のため、警備強化される模様……こりゃ逃げられなくなるわぁ。西の国は荒廃がひどく、餓死者続出。こっちには行かないわぁ。北の山脈の向こう……大陸は何者かの仕業でほぼ壊滅……」
「この前北部の山脈を越えて偵察に行った連中がいたな」
 背後から低い声がして、慌ててマリが姿勢を正して振り返る。煙草を吸い終えたトオルがマリの後ろから新聞を眺めていた。
 この情報と引き換えにトオルの同僚が大怪我を負った。北の山脈は険しく、立ち入るのは命を捨てるに等しいことだった。しかし、政府と軍の命令には従わねばならない。
山向こうにある広大な大陸が黒く焼け、地面から灰色の煙が立ち上っているのしか見えなかったと、怪我を負った同僚は言っていた。怪我が癒えぬままこの情報を首都に持ち帰った後、同僚は死んだらしい。
「あとは大した情報はなさそうか」
「ですねー。ん? え? ええ!」
「どした? マリっち」
 叫び声をあげたマリに、サトルが心配そうに声を掛けた。
「政府が精霊を捕まえたらしいですよ!」
 一同にどよめきが走り、マリの周りに駆け寄り、新聞を覗き込む。
「マジかよ。ガセじゃね?」
「『翼ある者』だって。……それって噂の? 天使?」
「翼ある……ってんだから、天使じゃないの? 精霊なの? 本当にいたんだねぇ」
 皆が騒ぐ中、昨日付の新聞を見ていたシンがぼそりと言った。
「――でも、昨日の新聞には『翼ある者』を逃がしたと書いてあります。首都配属の軍が怪我を負わせた、その精霊を逃がしてしまったようですよ」
「精霊って怪我するの?」
「それより精霊ってどんなの? イケメンなの?」
「いや、たぶん美人さんじゃないの?」
「美人の方がいいよな?」
「ったくよー。逃がすなんて馬鹿だなー」
「先輩に比べたら軍の本部の人は馬鹿じゃないんじゃないですかー?」
「うっせ。お前も馬鹿だろ。俺だってやるときはやるんだぜ。ま、軍にはさ、俺と同じくらい強い奴らがいるってのにねぇ。精霊サマは怖いんだねぇ」
 後輩達のからかいにサトルは怒った風もなく楽しそうに言い返した。その様子をトオルは苦笑を浮かべながらも無言のまま眺めていた。
「やーん。精霊って怖いー」
「俺がマリっちのことを護ってやるぜ」
「サトルさんには護ってほしくないでーす」
 流し目をしてみせるサトルに向って、マリはあからさまに嫌そうな顔をして舌を出した。
「……なんで俺を先輩って呼ばないワケ?」
「部隊違いますしぃ、さん付けなだけマシですし。先輩はトオル先輩だけっすからー。ね、トオル先輩! 何かあったら私のこと護ってくれますよね? ね?」
「何のために訓練してきたんだ? そんなこと言うなら志願兵辞めろ」
 冷たくあしらわれて、マリは「残念」と肩を落とし、周りで笑いが溢れる。その笑い声の中、眉間に皺を寄せたままシンが紙面を凝視していた。
「何か書いてあったか?」
 心配そうにトオルが声を掛けると、シンはトオルの顔を見て、静かに頷いた。
「――政府が首都近郊以外への、電気供給の全面停止を決定したそうです。数日中に各地域への送電を止めると……。政府の科学部門の責任者の話が……載っています」
「電気まで? ガスでもしんどいんだぜ? あれ?」
 シンの横から新聞を見た後輩が声を上げた。
「こっちの記事はなんだよ。地方からの反逆者? 処刑? 誰が何に殺されてるの? ……うわ、たくさんある」
「地元を救いたいって嘆願した役人さんも反逆罪で死刑? 地方に派遣された軍の人間の名前もあるじゃないか……。皆、仲間だぜ? 本部や首都に行っただけで殺されたってことなのか?」
 新聞を見たサトルの声が震えた。見知った名前が幾つもあった。理解したくない現実。水を打ったかのように事務所内は静かになった。
 突然、けたたましく事務所の電話が鳴った。
「あ、電話。こんな田舎の軍に何の電話でしょーね」
 嫌な予感がしたが、マリはわざと明るく言った。電話の近くにいた後輩が立ち上がった。
「俺、出るっすー」
 電話に出た後輩の様子がおかしい。緊張をしているようでしどろもどろだった。そしてトオルに目で助けを求める。
「どうした?」
 受話器に手を当てながら、後輩は困惑顔で助けを求める。
「トオル先輩、ちょっと……怖い人が」
「怖い人?」
 首を傾げつつ、受話器を受け取ったトオルの顔が青ざめた。
「お前は……」
 その電話の後、町中の灯りが消えた。


 大陸の南端にある小国・アルヒミヤ。その国の最北の町・ミタールは孤立することになる。
 湖は流通も情報も、時には人の心も分断してしまう。


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● COMMENT ●

ガスや電気が止められるっていうとこが
現実感を出してて、悲壮感が出てますね

反逆者は死って部分が切羽詰って
どんどん状況も悪くなる日常が出てると思いました

タバコすいながら窓際とかから景色見てると絵になってかっこいいですよね

仕事中なのに

一気に読み切っちゃいました(^ヮ^;)
イラストも描けて、文章も書けるなんて羨ましいです(;∀;)
続きが楽しみです♪
楽しみに待ってますね♪♪

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(∩´∀`)

現実的なものと非現実的なものの境界が定まってなくてすみません。
たぶん相当読みにくいと思います・・・(:_;)
そんな中読んでくださってありがとうございます<(_ _)>
電気がなくなる!という設定だったのですが、
ガスはどうなの?って思って・・・付け足しつけたししました。


タバコ・・・は吸えないし苦手だけど、かっこいいんですよね☆Y(o0ω0o)Y

freilさん

読んでくださってありがとうございます&コメントありがとうございまする!<(_ _)>

このあたりすっごく読みにくいと思いますが、この先はちょっとましになるかと思います。
自分が思ってるものを相手に伝えることは難しいなぁと思う今日この頃です。
まず文章・・・読みにくいかどうかとか、書いてるうちはわからなくて試行錯誤です(;'∀')

挿絵っぽいの描きたいと思いつつなかなか描けない(;´∀`)

誤字脱字ないように頑張ります!!


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