【白い思い出と紅い約束】一・出逢い(3)【小説】

2014.04.25 09:32|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

一、出逢い(3)

 娘は川原に裸足のまま上がってきた。石にぺたぺたと黒い足跡を付けて。
白い肌、風になびく柔らかな黒髪。形の良い唇は優しい笑みを湛えている。そして、陽光に煌めく白い翼。
 美しかった。この世のものと思えない程に、神々しくすら感じた。トオルは動けず、ただ娘を見つめていた。
(天使……なのか? 本当にいたとは……)

 しばらく見とれていたトオルだったが、はっと我に返る。自分の目的を思い出し、トオルの目付きが変わった。獲物を見つけた獣の目のように鋭く光る。落ち着いて、出来るだけ穏やかな口調で娘に問い掛けた。
「……お前は、ここで何をしている?」
 トオルの言葉に反応してか、娘は小さな背に翼をたたんだ。
「水遊び、してるの」
 言葉は通じるようだ。たどたどしい話し方が幼い印象を与える。
 静かに娘に歩み寄るトオルに娘は怯える様子もない。微笑を湛えたまま、その場を動かずにいた。
「お前は精霊だな? 『翼ある者』だな?」
 トオルが娘の目の前に立った。トオルの頭ひとつ分背が低い娘は、曇りのない黒い瞳でトオルの顔を見上げた。
 ズボンのポケットに左手を入れた。背に隠したトオルの右手には、短いナイフが握られていた。
「お前が『翼ある者』だな?」
 もう一度、静かに問い掛けてみる。娘は首を傾げたあと、無邪気に言った。
「あなたも、そう?」
 無言のまま、トオルは左手で娘の腕をとる。
 娘は小さな悲鳴をあげたが容赦しない。ナイフを口にくわえ、ポケットに忍ばせていた紐で娘の両手をきつく背で縛り上げる。背に小さくたたまれた翼にも紐をきつくかけた。
「いたっ! やっ、やめて!」
 トオルは娘の豊かな黒髪を掴み上げた。無理矢理顔を上げさせ、娘の首もとにナイフを突き付けた。首もとに突き付けられたナイフの冷たさに、娘が震えてべそをかく。
「お前が何をしたと言う訳ではないが、お前を捕まえるのが俺の仕事なんだ」
 無表情に娘の顔を見た。
「お願い、……いじめないで」
 娘の目には涙が溢れていた。純粋に恐怖に震える娘を見て、トオルが娘の髪を離す。豊かな黒髪が娘の背を流れ、小さくたたまれた翼をうまく隠していた。トオルは啜り泣く娘を見下ろし、冷たく言い放った。
「お前は俺の獲物だ。いじめやしない。ただ俺の言う通りにして、ついて来ればいい。それだけだ」
 啜り泣きながらも、娘は何度も頷いた。
 それから二人で山を歩き、町が近くなり人が踏み固めた山道に出た。トオルは後ろも見ず、自分の歩幅で黙々と歩いた。娘はしくしく泣きながら、繋がれた紐で引きずられて転びそうになりながらもトオルの後に続く。

 長くかからずに町へ出た。リトス湖の船着場のあるルトゥチ町の東側に位置する、比較的大きな町だった。トオルは娘の頭を押さえ付け、茂みに隠れて様子を窺った。人も多く、街は賑わっている。
「ま、町……行くの?」
 震えるか細い声で、娘がトオルに訊いた。
「そうだ。お前は黙ってついて来い。変な真似はするなよ」
「まね、しないよ。へんな、真似。でも、人、こわいよ」
 娘は青ざめながら、トオルに擦り寄ってきた。トオルは不思議に思った。この女は他の人間は怖くて、俺は怖くないのか?縄で拘束している人間なのに。
「俺の傍を離れるな。そうすれば誰にもお前を傷つけさせない」
 トオルの顔を見つめながら、娘は静かに頷いた。

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コメント

少女の喋り方に萌え萌えです(;艸;)

イラストなくてもどんな人物像なのかがちゃんとわかります♪
とっても面白いです!
毎回「おかわりはやく~(^ヮ^)」って思います♪
次回も楽しみにしてますね♪♪

いきなり、縛られて普通殺されるって思うところを
いじめないでって表現で幼さが残る少女って印象が強くなりましたね

それにしても、トオルにはおびえないのが不思議ですね。なにか安心?できるものでも嗅ぎ取ったのか
続きがきになりますね~

freilさん

コメントありがとうございます(о´∀`о)読んでくださってありがとうございます(^人^)
次回楽しみにしてるなんて嬉しいです( 〃▽〃)
お世辞でも嬉しいですー( 〃▽〃)キャピピーピキャー!(///ω///)♪ピャー(狂喜乱舞中)

この辺りはましなのですが………………
これからだんだん誰かがキャラ崩壊していきますw

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(*^^*)読んでくださってありがとうございます( ☆∀☆)

知り合いに読んでもらったとき、この「いじめないで」はまず普通言わない言葉で
それをあえて使うのは、実はこの子はあざとい女設定?と聞かれたことがありますw

そんな難しいこと、わたし、知らない、よ?

と思ったりしました。
どうしてこんなにトオルになつくのかは彼女なりに理由はあります( ☆ω☆)

続きが気になるなんて嬉しいです。ありがとうございます( 〃▽〃)

女の子可愛いなぁ、たどたどしい喋り方なのが
無邪気さや幼さを強調してますね、精霊とするなら
虫の翅じゃなく、鳥の羽なのが気になります。

無邪気キャラを書こうとすると、ウザくなったり
空気が読めなくなったりするんで、こういう
純粋な可愛さ、読んでて素敵です。

トサカランさん

コメントありがとうございます(≧▽≦)
読んでくださってありがとうございます<(_ _)>

たどたどしい感じをどこまで文章にしたらいいのかと悩みつつ変換していますw
句読点が多すぎたりしてますが、読みにくくはないかと心配です(;´Д`)

翅じゃなくて羽・・・のあたり・・・気づかれましたか・・・('Д')
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