【白い思い出と紅い約束】三・再会(1)【小説】

2014.06.07 23:40|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

三、再会(1)

 昼の空は霞んで青く、暖かな陽光が大地に降り注いでいた。歩く二人の間を風が静かに通り抜けていく。霞みを帯びた空気には害があるらしい。空が霞んでから呼吸器の病気が増えた。

 二人はひたすら街道を歩いていた。歩く人は少なかった。通りの片側に町が見えたが、人の気配がなく寂びれた様子だった。反対側は草が伸び放題だったが、墓が見えた。墓地のようだ。石も立てられず、木を地面に突き立てただけの簡素な墓も多かった。
 横を歩くヒナをトオルはちらりと見た。
 トオルは無邪気なヒナを信用し始めていた。酷い目に遭ってきた分、自分を頼っているのだろうと考える。今まで培ってきた勘が彼女の存在を「安全」だと言っていた。ただ、トオルには解らなかった。ヒナはどうしてそれほどまでに自分を信用しているのかが。
 ヒナはトオルの横を、後ろを、楽しそうに歩いた。腕を組もうとする度にトオルに振り払われ、淋しそうな顔をした。彼女にしたら空を飛ぶほうが楽に違いないのだが、絶対に飛ぼうとしなかった。
「お前は何で飛んだんだ? こんなに歩くのが好きなら、歩いていりゃ目立たなかったのに。そうすれば狙われなかったろうに」
「そうなの?」
 ぽかんと口を開け、ヒナが吃驚した顔をしている。そしてトオルの腕にしがみ付こうして払われ、淋しそうな顔をしていたが、トオルは無視して言葉を続けた。
「そうだろう? 『翼ある者』の存在が知られなきゃ、捜索もされなかったんだぞ? もう少し慎重に行動していれば……俺にも捕まらずに済んだんだぞ?」
「そうなんだー」
 言われて初めて気付いた様子のヒナに、トオルは呆れた。
「何も考えてなかったんだな……」
 彼女の耳にはトオルの溜め息は聞こえていない。空を見上げるヒナの顔は嬉しそうだった。
「ひとりで歩くのは、イヤ。人、怖いから。だから高く飛んだの。歩くのはトオルとだからいいの」
「俺とだと?」
 不思議そうにヒナに問い掛ける。頷きながら、ヒナは笑顔で答えた。
「ふたり、で歩くと楽しいの。それがトオル、なんだもん」

「あれ? 先輩じゃないですか?」
 途中、街道で後方から声を掛けられた。見ると違う班の後輩二人が歩いていた。
「無事だったか?」 
「先輩こそご無事で何よりです。俺たちみたいに船で移動しなかったのに、こんなに早いなんて。さすがトオル先輩です!」
 後輩含め、トオル以外の仲間は船で移動した筈だった。後輩に視線をやりながらも、ヒナが腕を組もうとしてきたのを払いのけた。慌ててトオルの後ろに隠れるようにしてから、ヒナは二人を見上げていた。
「琥珀亭あたりで会えるかと思っていたんだが、同じになったんだな」
「俺たちは……まぁ、ちょっと遅れたんです。あの先輩が先に行っちゃったんで追いかけてるんですよ」
 二人が申し訳なさそうに下を向いた。トオルはやれやれと溜め息をついた。
「お前たちの先輩は、あいつだからなぁ……。あいつは遊んでるんだろう。もし先に琥珀亭に着いて、出来たら待機していて欲しい」
 後輩達は顔を引きつらせながらも、なんとか肯定の返事を口にした。
「あと……隣の女の子はどうしたんです? 町では見たことない子ですが……」
「先輩の彼女……ですか? それにしては可愛すぎるというか……」
 聞きづらそうにしつつも、後輩達が疑問を口にした。興味には適わなかったようだ。色気がないというか、胸もないというか……と後輩達が口籠もる。
「こいつか? こいつは……」
 トオルは横を歩いていたヒナをどう説明すれば良いか悩む。「翼ある者」と言ってしまえばいいのだが、まだ年若い彼らには話さない方が良いと思った。つい口から出てしまうこともある。それは彼らを危険に晒す。トオルが思案していると、ヒナが笑顔で答えた。
「あのね、私を助けてくれたの。だからついて来ているの」
 それを聞いた後輩二人はトオルを引っ張り、道の端に追い詰めて耳元で囁く。
「先輩気を付けてくださいね! 女は危険ですって。もしかしたら罠かもしれませんよ!」
「それはないから……」
「それはなくても女は何を考えてるかわからないですから! あんなに可愛いけど、助けただけでついて来るなんて、普通じゃないですって!」
「政府の罠かもしれませんって。先輩の命を狙っているとか! 気を付けてくださいよ!」
 トオルは後輩達の想像力に唖然とした。状況が判らず、きょとんとした顔でヒナが三人を見ていた。彼女まで声は聞こえていない。
「買ったとか、付き合うとか、そんなじゃないなら、さらに怖いですよ!」
 後輩は執拗にトオルに注意をした。その後で謝罪をし、深く頭を下げ先を急いだ。急ぐ二人に向かって、ヒナは無邪気に手を振っている。
 トオルはその様子を見やりながら苦笑する。
(確かに、普通じゃないんだがな)
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コメント

後輩たちよ口篭ったとはいえ

色気がないとか、胸もないとかw
ヒナちゃんは可愛さと癒しで補っているから(力説)


同じ班の仲間にあったら
根掘り葉掘り聞かれそうだなトオル君

言葉の使い分けがすごいです(^ヮ^)

さすがですね♪

後輩が茶化す場面ですが、色気とかおいても、先輩が女の子といれば茶化すと思います。
普通なら「トオル先輩、犯罪じゃないですか?w」と笑う後輩がいるのでしょうけど、「命の危険はないのか?」と持ってくるあたりが、さすがだなーって思いました。そういう世界なんだなというのがわかります(^ヮ^)

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(´ω`*)

胸はないんですけどwww
色気はまだないんですけどwww
今までのトールてんぱいのイメージからかけ離れた人を連れていたので
後輩はびっくりしたんだと思うのですw
今までのトールてんぱいが結構アレだったので(アレすぎたので・・・)
噂を聞いてた後輩はびっくりしたんです・・・
(;´∀`)

freilさん

コメントありがとうございます(∩´∀`)

いえいえ、たいしたことではないんです(*‘ω‘ *)
これは今までのトオルてんぱいの行いが・・・ゲフンゲフン・・・アレだったのもあるのですw

そして女性に対してあまりいい社会ではないのですよね・・・。
書いた後あまりいい表現ではないなと思ったのですが・・・。
そういう時代になってしまったということです・・・(´・ω・`)
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