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2017-04

【白い思い出と紅い約束】三・再会(2)【小説】 - 2014.06.14 Sat

「白い思い出と紅い約束」

三、再会(2)

 夕闇が漂い始め、二人は野宿をすることにした。
 街道から離れた森の中。草木が茂っていない場所を見つけ、枯れた枝と葉を集め、マッチを擦り、トオルが火を焚いた。トオルの背後から、ヒナが興味津々の様子でトオルの手元を見ていた。
「珍しいか?」
 トオルは手にしていたマッチ箱をヒナに差し出す。
 ヒナは嬉しそうにしつつも緊張した面持ちで、マッチ箱を受け取った。箱からそっとマッチを一本取り出し、まじまじと見つめる。
「これで、火、できるんだね。すごいね、すごい」
「見たことないのか?」
 大きくヒナが頷いた。今まで何で火を起こしていたのかを尋ねると、ヒナは両手を広げ「ぱ、ってついたよ」との答えが笑顔と共に返ってきた。トオルは首を傾げたが、それ以上訊くのはやめた。
(とても面倒な話になりそうだから止めておこう……) 
 二人は焚き火を挟むように座り、非常食で夕食を済ませた。
 トオルは先ほど会った後輩達の言葉を思い出す。この翼のある不思議な娘に出会って数日。彼女は「怖い」存在ではなく、誰かの「罠」でもなかった。
(しかし、こいつはどんな理由で、俺に付きまとうんだろう?)
 その問いの答えは、いつも「トオルだから」である。それ以上の言葉を彼女は言わない。適切な言葉が浮かばないのか、いつも悩んで答えられない。
 考え事をしているトオルの目の前には、燃え盛る炎を興味津々に見つめるヒナの姿があった。トオルの上着を羽織り、膝を抱えて座っている姿は普通の少女と変わらない。
 焚き火の照り返しを受け、赤く染まったヒナの顔をしばらく見つめていたトオルは、長めの木の枝を手にして焚き火をいじりながら、小さな枝を火にくべた。
「そんなに焚き火が面白いか?」
「うん、面白いよ。……ねぇ、トオル」
 顔を上げると、ヒナがトオルの顔を真っ直ぐに見ていた。
「火の粉って消えちゃうのかな?」
「火、の粉……?」
 困惑するトオル。例えか、思いつきか。深意を測れずトオルは悩んだ。その様子を、純粋な光を湛えたヒナの瞳が静かに見つめている。
「……しばらくは消えないんじゃないか?」
「そっか、良かった」
 嬉しそうに呟いたヒナが、トオルの横に擦り寄ってきて、横に座った。
 焚き火に枯れ枝を放り込みながら、トオルは赤々と燃える炎に視線を固定していた。
「訊きたいことがある」
 トオルの視線は動かない。揺れる炎を見つめたままだった。
「なあに?」
 ヒナの無邪気な返事がトオルの耳に届く。横から顔を覗き込んで嬉しそうにしているが……。
「お前は、どこで政府の奴らに捕まった? そして、どうやって逃げてきたんだ?」
 ちらりと横に目をやると、案の定ヒナの顔が蒼白になっていた。焚き火の照り返しがあっても分かるほどに。
 街中では絶対にトオルの傍を離れない。軍服を着た人間を見ると、トオルの陰に隠れ、脅えて震える姿を見てきた。問えば怖がらせるだけだろうとも解っていた。しかし知っておきたいこと、知っておかねばならないことだった。
 トオルからは、俯いてしまったヒナの顔は見えない。触れ合った彼女の肩から震えが伝わってくる。
「……か、川、でね。水遊びしてたの。そしたら、おなじ服を着た、銃、を持った人がね、近づいてきて。急に腕をつかんでね、翼もつかんで、そのあと、地面にぶつけられたの」
 消え入りそうなほどか細い、震える声で、ぽつりぽつりと話し出したヒナ。
 トオルは無言だった。同じ服を着た人……軍の人間だ。華奢なこの娘を、獣のように地面に叩きつけたのだろう。
「でね。だれかに会ったの。でも、名前は……なまえ……は」
 恐怖で記憶を失ったのだろうか。トオルは頭を抱えて苦しむヒナを悲しい瞳で見た。
「もういい……」
「あのね、だれかに会って、から、どこかに運ばれた。あの、動くの……車、で。しばられたし、足と腕がずっと痛かった。でも、途中からおぼえて、ない。気づいたら、ひとり、で、森、にいたの。で、で……」
「もういい。もう話さなくて、いい」
 トオルは震えるヒナの肩に手を置いた。ヒナがよろよろと顔を上げた。
「……辛いことを訊いてすまない。怪我は、大丈夫だったのか?」
「うん、だいじょうぶ、だよ」
 上着を脱いで、両腕をトオルの前に差し出してみせながら、ヒナが微笑んだ。怪我ひとつない白い肌。トオルの胸が痛む。
 最初に会った時、自分もこの華奢な娘に縄をかけ、引き摺って歩いたことを思い出した。
 お互いが無言のまま、時が過ぎた。
 ヒナもトオルの真似をして、焚き火に木の枝を投げ入れる。木の爆ぜる音だけが辺りに響いた。
 沈黙の後、トオルは静かに口を開いた。
「お前は……今、世界を破壊している精霊の仲間か? 大陸を焼いたのはお前か?」
「焼いたの、は、私、じゃないよ。違う誰か。私は、そんな力、ないから」
 首を傾げながら、霞んだ夜空を見上げたヒナ。空に月は無く、星の輝きも見えなかった。
「私、精霊、かな。精霊、なのかな。ちゃんとした精霊だったら、もっとよかったのかな」
 ヒナではない「違う誰か」とは何者なのか、彼女の言う「ちゃんとした精霊」とは何なのだろうか、と。
 この時、トオルの頭に様々な疑問が浮かんだが、ヒナの横顔を見て何も言えなくなった。
 淋しげな笑みを湛えたまま、静かに涙を流していたからだ。
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● COMMENT ●

徐々にヒナちゃんの正体に近付いてますね♪

二人の流れる時間…焚火を囲む二人の姿が想像できます。
とてもいい物語ですね(^ヮ^)

火の粉は消えるのかという問いに、例えか思い付きかを測れず返す言葉がカッコイイです♪

freilさん

コメントありがとうございます(*^▽^*)

この記事は予約投稿していたことに気づかなくて朝見てびっくりしましたwww
だいぶ前から予約していたっぽいどwww

焚き火囲むのっていいですよね(*´ω`*)
ここは以前に話を入れたんですよね・・・二人の距離感を出すために(あと字数をかせぐ…ゲフンゲフン)

ヒナの面倒くさい質問に答えたげてるようになってきました(*´ω`*)
いつも読みにくい文章を読んでくださってありがとうございます<(_ _)>

ヒナちゃんの意味深な火の粉は消えちゃうの?発言
まるでヒナちゃんの事いってそうでちょっと
怖い想像が頭をよぎっちゃいましたね

小さいときとかってマッチとかの火が
珍しくてヒナちゃんみたくじ~っと見てたり
そんな行動をしたことありましたねww
その後ばあちゃんに怒られましたがw

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(*´ω`*)

ヒナが言っていることのどれくらいが本当なのか
例えなのかですが、難しいです。
トオルも困ってます( ̄▽ ̄;)

子供の頃、上手くマッチつけられませんでした(;´д`)
ライター(昔ながらの、がりって歯車?みたいのをまわすやつ)も
上手く使えませんでした(;´д`)

読んでくださってありがとうございます(о´∀`о)


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