【Cry*6】0-序章

2014.07.31 10:37|【Cry*6小説】序章
\始めます/

「リル」

Cry*6はクライムと読みます(*´v`)
文章を追記に載せる形にしています。


0-序章

 その日の夕方も、朱に染まっている空には、いつもと変わらない力なく佇む太陽があった。
 娘は窓辺に歩み寄る。肩に軽く掛けているショールの装飾の鈴の軽やかな音と、柔らかな絹の衣擦れの音が部屋に響いた。今まではこの屋敷も、この部屋ももっと賑やかだったのにと、俯いた娘は睫毛を震わせた。
 幾重にも垂れるカーテンをめくり、高い塀に囲まれた庭に人がいないかと気にしつつ、外を見た。黄金の髪が空と同じ色に染まる。赤紫の空はいつもと変わらずに美しかった。美しかったはずだ。
 それなのに怖かった。夜に染まりつつある時刻。山へ帰る烏の鳴き声が勘にさわる。
 震える身体を両の手で抱きしめた。
 寒くないのにどうして? 何か怖いの? 私は、何も怖くないよ?
 それは不吉な予感だろう。希望はないのだから。娘は思う。そして胸に宿る嫌な気持ちを揉み消すように、羽織ったショールを胸元にたくしよせた。
 その時、静寂が漂う部屋にコツコツと音が響いた。金の装飾が施された豪奢な扉がノックされたのだ。胸元で両手を握りしめ、娘は小さな声だったが、しっかりと返事をした。これで自分の番がやってくるのだ。


 被った黒いフードを外し、黒髪の娘は夕空を見上げた。
 風が吹いた。それは静かな風だったが、彼女には地を剥がすほどの突風に感じた。息苦しいほどに重い力──強い魔力──が動いたのがわかった。
 ──いやなことが通りすぎた。
 黒曜石のように深い黒の瞳が、上向きの白磁の顔が、漆黒の髪が、夕刻の朱の光に照らされる。
 水の入った桶と少しの野菜の入った麻袋を持つ手に力を入れ、歩く気力を奮い起たせる。
 野菜は村人の好意でいただけたもの。早く去らねば迷惑がかかる。フードを目深にかぶり、歩き出したところで立ち止まった。視線を上げる・――見つけてしまった。
 次の瞬間には、走り出していた。大事に運んでいた袋と桶を投げ出して。


 走って走って逃げた。
 燃える家々の間を走り抜け、草むらを掻き分けて、山に駆け込んで必死で走る。振り返らず、傷ついた腕を押さえ、がむしゃらに闇雲に樹の生い茂る山を走る。
 木々の枝が、逃走を阻むように体に当たる。痛い。顔を庇いながら走った。
 逃げなければ、殺される。殺される、あいつに! あいつの呪いで、みんなが死んだように、殺される! だから。殺される前に、逃げないと。
 ――逃げないと、みんなと同じように殺される……!
 ──殺される?
 そこで足を止めた。
 皆、死んだのに。俺だけが生きている。……俺は、なんで生きているんだろう? もう、生きていなくても良いんじゃないか? こんなことになってまで。
 そんな思いが込み上げてきた。今まであったものを失った恐怖。そして生死の境にいた恐怖。そして生き残っている恐怖。自分を追い詰める絶望感と喪失感。息苦しかった。滲む視界。震える体。
 彼は考え……そして。
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コメント

こんばんは!
cry*6の序章読みました。

楽しみにしてましたヽ(*´∀`*)ノ
前回&前々回の4コマ(キャラの個性的な所が出てて面白かったです!)で、ひょっとして始まるのかなと思っていたので…!

タイトルはクライムと読むんですね(・∀・)
清水さんの作品のタイトルは読みたくなるような、惹かれる所があると私は感じてます!

これから、物語が進むのがワクワクです(∩^ω^∩)

新たな物語スタートですね。
白い思い出と平衡して読ませていただきます!

序章から不穏な空気ですが、これからどんな展開になっていくのか楽しみですw

それぞれが同じ時間軸(と思う)で
それぞれの視点で語られてるんですね

彼のいう呪いは日が暮れたら
行われるんでしょう(多分)
それで考えると、屋敷にいる少女は...

八剣みちるさん

コメントありがとうございます(●´ω`●)
返事が遅くなってしまってごめんなさい<(_ _)>

4コマの方が動かしやすいキャラ達ですw
タイトルについては・・・悩んだのですが・・・これでいいかなってことで落ち着きました(;´∀`)
意味はちゃんとあるんですが、もしも話が続いたらタイトルの意味をばらそうと(?)おもいます。


更新は遅くなると思います。のんびりお付き合いいただけたらと思います(*´ω`*)

gaeanさん

コメントありがとうございます(*‘ω‘ *)
お返事が遅くなってしまってごめんなさい<(_ _)>

新しい話をまた始めてしまったのですが・・・
序章でけっこう悩んだのでこれから大丈夫か心配です(;´Д`)
できたら絵を載せつつの更新にして読みやすくしていけたらなと思ってます。

これからもよろしくお願いいたします(*´ω`*)

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(*^▽^*)
返事が遅くなってしまってごめんなさい<(_ _)>

それぞれ、ほぼ同じような時間軸で語られています。
たぶん誰が誰かわかってしまうと思いますw

うまく本編に入れるかどうかということですが・・・
もしよろしかったらまた長い物語になってしまうとおもいますが・・・お付き合いくださいませ・・・|д゚)
(面倒くさくてごめんなさい・・・)

こんばんは、驚きました。書き慣れれていますね。
途中で引っかかるところがない、読みにくかったり、
閊えたりしない。
更新を見たら、2013~成程、って思いました。
少しずつ、読ませてもらいます。ポチ

雫さん

コメント&ポチ、ありがとうございます♪
読んでくださったのですね。ありがとうございます。

書き慣れてるだなんて(*ノ▽ノ)
下手の横好きなのです。

なかなかご訪問できず申し訳ありません。

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