【白い思い出と紅い約束】三・再会(5)【小説】

2014.06.26 11:54|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

三、再会(5)

「へぇ、良いホテルとったんですね。かなり嬉しー」
 バッグを振り回しながら部屋に入ってきたマリ。豪華な部屋にマリの目が輝く。宿はトオルが用意していた。
「安宿より安全だろうと思って、用心してな。壁も厚いし」
 そっか~、盗聴注意だもんね、とマリは独り言を言う。
「あ、そだ。先輩、これ」
 肩に掛かる袋の重さを思い出し、マリは背負ってきた細長い袋を肩から下ろしてトオルに差し出した。
「すまなかった。船では大丈夫だったか?」
 手渡しつつ、マリは大袈裟に溜め息をついてみせた。
「女一人だったから目立ちました。こっちの船着き場では色々と訊かれましたよ。最初は『職探し』って言ったけど、荷物を見て怪しまれちゃって。とりあえず、『男探し』とか言っときました。男釣ります、とか変な話までしちゃったし。話に花が咲きすぎて、検問の人に顔憶えられました、多分」
 マリは気さくで話し掛けやすい。そして話上手だった。問題なく検問を抜けてきたようだ。
「帰りの船は泣きながら乗れば、怪しまれないかもな」
 頷きかけてから、マリは首を横に振って不敵な笑みを浮かべる。
「イイ男見つけますから! 大丈夫っす!」
 窓の外の明かりにマリが目を細めた。
「電気ついて羨ましーの。ガスにも不便してなさそうだし。あったかいシャワー浴びれるのかなぁ。んー早く浴びたいっ! でもこの町、電気ちょっと無駄遣いしすぎじゃないっすかね。勿体ないなぁ」
 しばらく独り言を呟いていたマリ。そして大きく呼吸をし、荷物をドスンと床に置いた。そしてトオルの腕にしがみついているヒナを睨んだ。
「で、先輩。このオンナはなんなんです?」
 相変わらずヒナはトオルの上着を羽織っている。ヒナは怖がり、トオルの後ろに隠れた。
「マリ、そんなに怒るな。ヒナが怖がる」
 怯えるヒナをトオルが庇う様子を見て、マリの視線がさらにきつくなる。
「怖がるって、別に構わないっすよ! なんで先輩、このオンナと馴々しくしてるんですか?」
「……こいつは、『翼ある者』なんだ」
 言葉を失うマリ。
「う……っそぉ。本当ですか? っていうか本当にいたんですか……?」
 カーテンを閉め、見せてくれとトオルが言うと、ヒナはトオルの上着を脱ぎ、翼を広げる。翼を見てマリは驚いた。
「……噂じゃなかったんだ。すごい……天使みたい」
 マリは恐る恐る翼を触ってみる。それから、そっと撫でてみた。柔らかく滑らかで、触り心地が良い。
「てことは、この人を連れて帰ればいいんですね。あとは潜入ですね。……あの緑の会社の資料、ちょっとだけど他の町の軍人さんからお裾分けしてもらって手に入れました。先輩、他の仲間に連絡は?」
 小さな声でマリが「ありがと」とヒナに言うと、ヒナは静かに翼を閉じた。そしてトオルに書類の入った封筒を渡す。
「資料お裾分けって……大丈夫だったのか? 無茶なことをしたのか?」
 心配そうに自分を見るトオルに、マリは不敵な笑みを浮かべてみせる。
「いかがわしいことしたわけじゃないので大丈夫っす。検問で揉めているところに仲裁に入ってあげただけで。その後話してたら、仲間ってことで資料写させてくれたんです」
「資料まで手に入れてきてくれてありがとな。仲間への連絡はまだだ、先に向かったらしい。ヒナの記憶もなくて、まだ情報も得られてない」
「……いろいろと残念でしたね」
「そうだ、マリ。荷物の中の服、使わせてもらったぞ。ありがとな。あと、今晩ヒナと一緒に寝てくれ」
「あ! あれ使ったって……もしかしてこの女がですか?」
「そうだ。俺が使うわけないだろうが」
「ちょっと先輩使ってくださいよー。『かわいい後輩が傍にいますよ』的な意味合いで入れたんですよー」
「可愛いだけの後輩はいらん。……またあの馬鹿にからかわれたんだろ」
「んー、本気じゃないけど、冗談で入れといたけどぉ。一応私の私服ですよ~。私、何度か着てるし。この人、それ着ちゃってるし。やだなぁ。しかも、寝るってなんでこの人と?」
「私、トオルのそばがいい~! この人、怖いよぉ」
 苛立つマリを怖がり、涙目のヒナがトオルに抱きついている。その様子をマリは静かに見ていた。
「先輩……」
 しばらく沈黙した後、マリは投げ遣りに言った。
「わかりましたよ! もう男とだろうが女とだろうが、何とでも寝ますよ、寝ます!寝てやりますよ!」


 翌日、マリが泣き付いてきた。
「もうあの子と二人で寝るのは嫌です! あのヒナって子、本当にうっとうしい! 抱きついてくるし、体冷たいし。怒ればうじうじ泣くし、本当に嫌! 嫌ったらイヤ!」
 怒り狂うマリの姿を見て、トオルは苦笑した。
「まぁ、我慢してくれ。たまにでいいから頼む」
「……先輩、毎晩あんなカンジでいたんですか?」
 口籠り、トオルは「ま、な」と曖昧な返事をした。
「……先輩」
 いつもと違う、低くまじめなマリの声。見るとマリの目は真剣だった。
「先輩。いつも他人には偽名を教えるのに、あのヒナって女には偽名じゃなくて、本名を名乗ったんですね。何でですか?」
「あいつなら信用できると思ってな。人に虐げられてきた分、かなりの人間嫌いだ。懐けば、俺たちに不利なことはしない」
 マリは俯いた。
「そんなこと……」
 険しい顔つきでマリは顔を上げた。
「そんなこと、私には信じられない、です。情がうつったんですか? それとも……」
「トオル~!」
 今度はヒナが部屋に飛び込んできて、泣きながらトオルに抱きついてきた。
「マリがね、ベッドからね、追い出すの。ひどいよ。さびしかったよぉ」
「わかったわかった。だから泣くな」
 と、トオルがヒナの頭を撫でている。マリは不安だった。何かが不安だった。
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コメント

マリさんの登場で

一気に空気が明るくなりましたね(^ヮ^)
きっとムードメーカーなんでしょうね。
トオルさんのようなクールなパーティには欠かせない存在だと思います。
最後の締めの綴りが気になります♪
つづきを楽しみにしてますね!!

freilさん

コメントありがとうございます(*´ω`*)

読みにくいのにありがとうございます。
マリが出てこないと進まないんです。
二人だとだらだら歩いて爆ぜろリア充なだけになってしまうので・・・(あ・・・そうでもないですね(;´∀`))
喋りたいこと喋ってくれるキャラなので、とても楽ちんです←

なんだろうこの
嫁と姑の間に挟まれるダンナのような雰囲気はww

さりげなく、ヒナちゃん一晩で
この人からちゃんとマリって呼んでますね
打ち解けるにはもうちょい時間かかりそうですね

2人がそれぞれトオルに泣きついてるのは
想像すると笑えますねww

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(*´ω`*)
お返事遅くなってごめんなさい(;´・ω・)

天然嫁と小うるさい小姑って感じですかねwww
トオルはそこまで気にしてないんですよねw
少し安心してるというかw(ヒナの相手ができたとwww)
とりあえず何かあると二人がそれぞれトオルに泣きついていくのですがwww
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