【白い思い出と紅い約束】四、月下(3)【小説】

2014.07.18 23:53|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

四、月下(3)

 翌朝、二人はトオルからこの町で仲間が捕まったと話を聞いた。捕まったのはトオルと同期の先輩格の男。
 昨夜、トオルは違う部隊の後輩達――以前、道で会った二人だ――に会ったのだ。経験不足の後輩達に、拘束された彼が殺される前、もしくは首都に送られる前に助けて欲しいと懇願されたそうだ。
「あの馬鹿が、検問に引っ掛かったらしい」
「あの馬鹿って……あの人ですよね」
 眉間にしわを寄せながらトオルが頷き、マリがげんなりした。ヒナは「あのバカ?」と、きょとんとしていた。
「私たちだけでうまくできますかね……」
「軽く話を聞いてきた。だから何とかなるだろうし、何とかする」
「私もがんばるよ! トオルのためにがんばる!」
 目を輝かせながらトオルの言葉に何度も頷いているヒナ。マリは呆れ顔で、その様子を見ていた。


 三人は夜遅くに行動を起こすことにした。小さな町の小さな駐屯地。昼のうちに中の人数を確認し、牢屋の位置は把握していた。
 長刀を腰に装備したトオルが、物陰に潜んで様子を窺う。
 マリが町の人間を装い、駐屯地の門を叩く。ヒールのあるパンプスにワンピース姿のマリ。遠目にその姿を確認したトオルが首を傾げる。
(なんでマリはあんな服ばかり持ってきているんだ? まぁ、こういう時に役に立つが……)
 程なく軍服を着た男が出て来た。マリは怯えた風を装い、暗い町並みを指差す。「翼ある者」を見たと話し、証拠としてヒナから貰った白い大きな羽根を一枚、手にしていた。
 奥から幾人か男達が出て来て、マリと共に歩き出す。そのタイミングで霞んだ月明かりの中をヒナが羽ばたいた。
 優雅に羽ばたく姿はトオルからも確認できた。輝く白い翼。ヒナが空を舞う姿を見たのは初めてだったが、見惚れるほどに美しかった。
 中にいた軍人達もばらばらと表に出てきた。「本当にいたのか?」そんな叫び声も聞こえた。皆がヒナの後を追う。銃を手に走る者もいた。マリも小走りでその後に続いた。
(ヒナ、撃たれるなよ……)
 人のいなくなった建物の中にトオルは静かに入り込む。奥の鉄格子の中に、その捕らえられた仲間がいた。
「サトル、無事か?」
「ういッス! 無事だよ、トオル」
 牢の中であぐらをかき、縄で縛られている姿でくつろいでいる男。茶色の瞳、茶に染められた長めの髪をした細身の男。トオルの古くからの友人、幼馴染のサトルだった。
 首都配属の際にも同じ部隊で行動を共にした。戦場に出れば有能な軍人だが、私生活では難がある人間だ。顔には殴られた跡があった。
「……気楽な奴だな。助けにきた」
 トオルは近くの壁に掛かっていた牢屋の鍵の束を手にする。トオルが鍵を確認しつつ、鍵穴へ鍵を差し込むが、なかなか鍵が合わない。
「お前を待ってたんだよ。俺の後輩ちゃんたちは役に立たないからね」
 くつろぐサトルに対し、少々焦り気味のトオル。その様子をサトルが不思議そうに見ていた。何本目かの鍵で、ようやく軋んだ音を立てて牢の扉が開いた。
「何して捕まったんだ? マリたちが囮になっているんだ、早く」
 拘束していた縄をナイフで切ってやると、サトルは立ち上がり、背伸びをしてトオルを見て笑う。
「ちょっとここの軍人さんをからかっちゃって、ばれちゃったのさ。マリっちは誰と一緒にいるのさ? 俺の後輩?」
 トオルは何も答えなかった。二人が出ようとした時、数人の軍人が戻ってきた。
「あいつら!」
 軍人は銃を構えた。トオルは鞘から刀を抜き、低い構えから、獲物に喰らい付く獣のような勢いで切り掛かっていく。
 血飛沫。銃の引き金を引く間もなく、刄を突き立てられ、斬られて倒れていく男達。元は仲間でもある彼等を斬ることに抵抗はありつつも、殺さざるを得なかった。後味が悪い。トオルは顔をしかめる。
 しかし背後ではサトルがトオルの刀さばきに拍手をしていた。
「……お前は呑気だな」
 サトルは長めの前髪を息で吹いて揺らし、腰に手を当てながら笑顔で答えた。
「トオルの腕を信用してるからね。でもさ、マリっち大丈夫なの? あの子短距離は早いけど長距離は苦手だったよ」
 沈黙するトオル。その様子を見て、サトルはその件に関しては何も言わず、話を変えた。
「とにかく俺もさっさとこの町から出るわ。次に会うのは紫水晶かね?」
「そうだな。もう捕まるなよ」
 お互い軽く手を挙げ、二人は別の方向に走った。トオルは走りながら二人の身を案じる。マリとヒナは無事だろうか。
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コメント

最初のつかまったの文で
嫌なフラグがあたまに浮かんだけど
無事に助かってよかった

サトルの呑気さはつかまってるのに
どこか余裕があって
よほどトオルが助けjにくると信じてるんですね

ヒナちゃんケガだけはせんといてね
トオルはもちろんマリだってなんだかんだで
心配するだろうし

(;・ω・)ドキドキ

なかなか鍵が合わないところでドキドキしちゃいました…はやくー!て(^∀^;)
読みやすくて一気に読み終わっちゃいました。
緊迫した空気感の中にところどころにある「マリはなんであんな服ばかり持ってきてるんだ」とかがまた面白いです♪

余談ですが、あのトーナメント、たしかにあのアイコンは…って感じですよねw
しかも当の本人は不参加なのかな?w

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(*^▽^*)

馬鹿は死なないですwサトルっちは死なないのですw
幼馴染でなんだかんだとお互い知ってるからこそどこかで信じているのです。
トオル的には毎回巻き添えくらっているんですけど(;´∀`)

初めて飛びました。なんのための翼だろうとwww
飛んだ姿を描かねば・・・
ヒナは飛んでマリは走る・・・そんな感じです(*´ω`*)

freilさん

コメントありがとうございます(*‘ω‘ *)

トオルは焦っているんですよね。二人が心配で(;´Д`)
サトルは「たぶんトオルが助けてくれるだろう」とのんびりしてるんですw
トオルもマリがかわいい服を着ているのが不思議だったのですw
ヒナもワンピやら着ているのですが・・・。
(周りから見たら両手に花で旅をしてるように見える・・・むしろそう)

アイコンは自作かどこかで拾ってきているのかな・・・と思ったり。
他のトーナメントでも同じ写真が使われていたりしているし・・・?

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