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2017-04

【白い思い出と紅い約束】五、羽根(3)【小説】 - 2014.09.29 Mon

「白い思い出と紅い約束」

五、羽根(3)




 深夜、空に現れた月は町に青白い光を降らせる。何年か前までは、月の輪郭すら見えないほど夜空も霞んでいたが、今宵の空は欠けた月の輪郭がわかる程に澄んでいた。
 夜の闇と静寂に沈んだ町。寝静まった町はコバルトブルーの海底のようだった。
 寝ながらトオルはいつもの癖で、横に寝ているだろうヒナを抱き寄せようと手を伸ばす。しかしそこには何もいなかった。
 いるはずのヒナがいない。トオルは慌てて体を起こす。白い羽根が一枚、青白いシーツの上に落ちているだけだった。
「ヒナ?」
 トオルは不安になる。羽根が落ちることも初めてだったし、夜に姿を消すことも初めてだった。部屋には彼女の気配がなかった。
 燭台を手に、マリの部屋へと向かい、ドアを叩く。しばらくして目を擦りながらシャツに短パン姿のマリが出てきた。
「ヒナがいなくなった。そっちには行ってないか?」
 寝起きのマリは、目の前にトオルがいるというのに、頭をかいて欠伸をしていた。
「ん~、ヒナっすか。添い寝はしてないっす……ん~? えっ、ヒナがいない?」
 寝呆けていたマリの頭がようやく事態を把握する。
 二人は手分けしてホテルの周り、町を走り回りヒナを探した。冷たい月光が降る町に、ヒナは見当たらなかった。羽根も落ちていない。
「先輩……どこにもいないっす! 路地に入ったのかな」
「一人で町に行くとも考えられないんだが……」
 街中を走り回ったマリが肩で息をしていた。
「こう暗いと見つけにくいな。いったん部屋に戻ろう」
「そうですね。どこ行ったんだろう、ヒナ……」
 真っ暗な廊下を歩き、月明かりが射し込む部屋に戻った。カチ。そんな音がした。
「……先輩?」
 部屋に入った二人は無言で頷き合った。音は浴室からした。トオルは浴室へ続くドアを静かに開けた。
「ヒナ?」
 蝋燭の灯りをかざしつつ、トオルは息を呑む。後ろに続いていたマリは小さな悲鳴をあげた。
 窓がなく月の光も射さない浴室。闇に包まれてヒナがいた。
 刀を両手で握りしめ、首から血を流して座り込んでいた。辺りは真紅の水たまり。その中にいるヒナも全身真紅、血まみれだった。
 マリが持っているのと同じ、トオルの鍔のない小刀を握っている。トオルに気付かれないように、こっそり拝借していたのだ。
「ヒナ! お前、どうしてこんなことを!」
 燭台を洗面台に置き、汚れるのを厭わずトオルが近付くと、ヒナが顔を上げた。目から涙が溢れていた。
「……出来ないの」
「何が?」
(出来ないって、これ以上何をするつもりなんだ!?)
 トオルが心の中で叫んだ。
「私、トオルのためになんでもやりたい。でも……でも出来ない。トオルのために命捨てることできない。血、流しても私、死ねないよぉ!」
 刀の柄を握りしめ、首に刃を当てたままヒナが咽び泣いた。マリが震える両手を口に当てた。
(この子……私の言ったことを本気にして……)
 握りしめた小刀の柄からヒナの両の手を優しく外してやるトオル。側にかかっていたタオルを取り、ヒナの首に当てる。穏やかな声音で呟いた。
「俺が、お前にやって欲しいことはそんなことじゃない」
「ト、オル?」
 ヒナがのろのろと顔を上げ、焦点の定まらない瞳でトオルの顔を見た。
「俺の傍にいろ。俺の傍を離れるな。それだけだ。それだけでいい」
 血に濡れたまま泣きじゃくるヒナを、トオルは無言のまま抱きしめた。
 浴室の外では、壁に寄り掛かりながら、マリが小さくうずくまり、肩を小刻みに震わせて静かに泣いていた。
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● COMMENT ●

これは誰もが心が痛い出来事ですね

床に血だまりが出来るほどの出血...
きっと何度も何度も首に当てては
自分を傷つけていたんですね

マリちゃんも口にはださないけど
気にし過ぎて落ち込み過ぎないようにね

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(*^_^*)
お返事が遅くなってごめんなさい(>_<)

ぎーこーぎーこと首を切ってたわけですが・・・
痛みは感じるので、ヒナも相当の苦痛だったと思います。

マリっち・・・軽く言ったことがこんなことになってしまったので
自分を責めてしまってるだろうなって思います。


最初の方でバレバレな会話をしているので、そこんとこがダメですね(;'∀')

コメント遅れてすいません。

この章を読ませていただいて、ずっと考えてたんですよ。
ヒナちゃんのまっすぐな性格なのはわかりますが、これだとヒナちゃんとマリちゃんの間に溝ができちゃうんじゃないかって。
結衣さんがここで表現したいことって何だろうって、ここ3日間ずっーと考えてました。
でも、ここだけ読んでもわからないだろうから次回を待とうと思ってたんですが…少しお休みになるんですね(´・ω・`)
きっと結衣さんにも色々と事情があるのでしょうから、次の更新をゆっくりと待たせてもらおうかと思います(^ヮ^)
それまでは私も絵の練習を続けてますから♪
色々なことが整理できて落ち着くまで待ってますね♪

freilさん

コメントありがとうございます(*´ω`*)

すみません、気づいたらめっちゃ話が途中ですよね(;´Д`)
次くらい載せておきたいと思います。
というかこの章ちゃんと載せとかないとですね。すみません(;゚Д゚)

私ってホントバカ・・・(;'∀')



マリとヒナはおマセな姉と単純な妹みたいな関係で、その単純さ(素直さ)が招いたトラブルですね(;´∀`)
表現したいことを明確には定めて書いていない場所です。
書きたいものを書いた場所なのです。
ヒナが死ぬことを理解していないことと死ねないこと。
過程のひとつとしてこの場所は書いたのですが、実力不足でどこまで伝わるか・・・というのが問題です。

こんな調子なので今現在悩んでいるんですが・・・(;´Д`)

なるほど

確かにブログを続けるということは、それなりに時間を取られちゃいますからね。
もし今の結衣さんが、ブログより優先させたいことがあるなら、そちらが優先で構わないんじゃないですか?(^ヮ^)
みんな快く戻るのを待っててくれますよ♪
無理して物語を載せないで、とりあえず優先させたいことをしてくださいね♪
連コメすいませんでした(^^;)

freilさん

コメントありがとうでした。遅くなってごめんなさい。

皆に忘れられてるんじゃないかと不安になってしまいます・・・(;゚Д゚)

一応復活したいと思ってるので、いろいろとブログにうpろうとおもってます。
よろしくお願いします。


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