【Cry*6】1-3、ふしぎな同棲生活

2015.10.29 21:00|【Cry*6小説】第1章
「手をつなぐ」

【Cry*6】
 0、序章
 1-1、ちぐはぐな出会い
 1-2、何も訊かない


1-3、ふしぎな同棲生活

 ルアトがリルと共に過ごすようになって数日。
 雨が続く中で、珍しく曇天ながらも雨が降らない穏やかな昼下がり。二人はテーブルで黙々と作業をしていた。森で拾ってきた木の実の皮をナイフで剥いでいる。
「この実って食べられるんだね。知らなかった」
 ルアトはいろいろなことを知っているんだね、とリルが関心の溜め息をもらす。
「このままじゃ苦いけど皮を取って炒るとおいしいんだよ」
 この皮が硬いんだよなぁ、とルアトは疲労の溜め息をもらす。その様子を見て、リルは笑顔で立ち上がり、棚からカップを取り出す。
 お茶を淹れ、二人で休憩していると、かつんと硬い音が外でした。その小さな音にリルの体が強張る。リルの家に住むようになって、何度か耳にしている音だった。ルアトは顔をしかめる。
「また、石をぶつけている人がいるの?」
「うん、仕事の依頼……かな」
 静かにカップを置いて、リルは立ち上がった。外壁に石を投げているのは村人。石は紙に包まれ、紙にはリル宛の仕事が書かれている、らしい。仕事の内容についてはリルが話さなかったので、ルアトもあえて訊かなかった。
 紙に包まれた石を手に戻ってくる。
「これは失礼なやり方じゃない? 仕事なら面と向かって頼むものでしょ。石投げるとか、まるで嫌がらせみたいじゃないか」
「そ、そうかな? 私はこれでいいんだ」
 自分のことのように憤慨するルアトを、困惑しつつも笑顔でなだめたリル。紙を拡げて内容を確認すると、リルの笑顔は曇った。
 その日も、顔を隠すように黒いローブを纏い、リルは外出する。その姿はルアトに不吉な印象だけを与えた。

 夕刻、夕食の準備をしていたルアトの耳にドアが開く音が聞こえた。リルが帰宅したのだろう。野菜を刻んでいたので顔を上げなかった。
「おかえりなさい、適当に夕飯作ってるよ。もう少しでできるから」
 返事がなかったので、手を止めてルアトが顔を上げると、息切れしたリルがドアに掴まって震えていた。
「リル?!」
「ただいま」とリルは薄く笑った。
 血の気が引いて今にも倒れそうな様に、包丁を放り、ルアトは慌てて駆け寄った。手にした袋が重そうだったのでルアトが持ってあげた。
「ど、どうしたの? 何があったの?」
「これ、貰ったんだ。お仕事、で」
 袋の中で金属のぶつかる音――貨幣だろう。ルアトの慌てた様子にも気付けない有り様、今まで見た中でリルの様子が一番酷かった。
 ふらついて倒れそうな体をルアトが支えた。この細い体で力仕事は出来ないだろうに。体が震え、呼吸は早く浅かった。
「か、顔色がすごく悪いし、つらそうだよ。いったい……」
「……これくらいなら大丈夫、だよ……休めば」
 つぶやく唇も震えている。長椅子に寝るのを助けると、少し休むと言った後、震えながら掛け布に潜り、意識を失うように眠りにつく。静かに雨が降り始めていた。
 ルアトは掛け布の上からリルの背を無意識にさすっていた。冷えた体で力なく眠る姿が、このまま起きないのではないかと不安にすらさせた。彼女の体がただ心配だった。
(リル、大丈夫なのか? こんなに辛そうにして。いつも一体何をしているんだろう)
 何度も思っていたが、どんなことをしているのか、訊くことができないでいた。


 リルが不在中、ほぼ怪我が治ったルアトは暇をしていた。薪割りや畑の世話をしようと思ったが、体が思い通りに動かずに諦めた。体が――しいて言えば腕が――鉛のように重かった。ルアトは溜め息をついて、諦めてベッドに腰掛けた。
 額と右腕には包帯を巻いていた。痛みはないが、未だ血が滲んだ。
 寝転がりながら、包帯が巻かれた右腕を上げて眺める。特に右腕の傷が塞がらないことをリルが心配し、毎晩ルアトが眠るまで手を握っていた。
(……迷惑じゃないんだけれどな)
 年頃の娘に、毎晩傍に居てもらうことが気恥ずかしかった。出会って数日。同じ部屋に居るだけでも気を遣うのに。
 そこまでしなくて大丈夫だと言うと、させてほしいと懇願された。断るに断れなかった。
「心配な傷なんだ……。化膿とかそういう類ではないのだけれど。治りが悪いから」
「これくらい大丈夫だよ」
 ルアトは軽く笑って安心させようとしたが、リルの表情は硬く、譲らない。
「お願い、お願いだからその手を看病させて?」
 切実なリルの願いをルアトは拒否出来なかった。逆に、そこまでしてもらうことが申し訳ないと思っていた。
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コメント

お互いがお互いに相手を気遣ってるんですね

仕事の内容までは聞かずにいたり
伝達方法を自分のことのように怒ったり

傷の治りが遅いから?毎晩寝るまで
そばで手を握ってあげていたり

コレだけ見るといいパートナーに見えますよね~

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(・∀・)

仕事も何もかもどう聞いていいかわからない
親しいようでいて親しくなれてないような・・・
人懐こいルアトと挙動不審なリル
二人の距離感が出ればなと思っています(*´ω`*)

面白いです。
どんどん読んでしまいそう、でも、今日はここまで。
自分でお預けをww出しています。
気になる事が一杯あって、でもまた後で・・。
そんな気分です。

いつも訪問ありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
応援して帰ります。ヽ(≧▽≦)/全部ポチ

雫さん

コメントありがとうございます。
いつも読んでくださってありがとうございます。
うまく伏線を張れていたらいいのですが(;´・ω・)

最近はご訪問しても
心の余裕がなくてコメントをすることが出来ずごめんなさい<(_ _)>
またお伺いします(*´ω`*)

いつもありがとうございます(*´ω`*)
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清水結衣

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