【白い思い出と紅い約束】六、紅衣(1)【小説】

2014.11.17 21:00|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

六、紅衣(1)


 夕刻になり、通りは夕食の買出しに行く人や、家路につく人の往来で騒めいていた。その騒々しい中を三人は無言で歩いていた。
 トオルはただ前を見て黙々と歩く。ヒナはそのトオルの袖の端をつかみながら俯いて歩く。その後ろをマリが眉間にしわを寄せて、腕を組み、唸りながら歩いていた。酒場を出た後は、誰も一言も発しなかった。
 袖を引っ張る感触に、トオルは振り向かずに背後を気にする。ヒナが眉をしかめて唇を噛み、涙を堪えながら歩いている姿が想像できた。
 酒場でヒナは一言も言葉を発しなかった。トオルの「獲物」として、静かにトオルの後ろに控えていた。トオルの胸が痛んだ。

「あ~ああ!」
 マリが大きすぎる溜め息をついて立ち止まった。二人が振り返ると、マリは近くにあった服屋に入ろうとする。
「マリ?」
「……買ってやる! 買ってやるっす! ストレス解消っす!」
 俯きがちのヒナに目をやって、トオルがマリに声を掛けた。
「じゃあ、ヒナの分も頼む。金はあとで渡すから思いっきり買ってこい」
 にんまりとマリが笑みを浮かべ「あとでどうなっても知らないっすよ」と捨て台詞を残して店に入る。

 ホテルに戻り、ヒナは窓辺に運んだ椅子に腰掛けていた。膝の上で両手を握りしめ、外も見ずに俯いていた。
 トオルはベッドに座り、両手を頭に当てて俯いていた。マリは買い物袋を持ったまま、トオルの腰掛けているベッドに俯せに倒れていた。
 寸刻の時間が流れた後、トオルが「よし」と言って立ち上がる。ヒナが顔を上げた。
「気晴らしを兼ねて、出掛けるとする、か」
「もしかして、あれっすか? 弾けちゃうっすか?」
 嬉しそうにマリが顔を上げた。
「そうだ」
「了解っす!」
 にやりと笑ってマリが立ち上がる。袋を持ったまま、ごそごそと音を立てながらヒナの所に行く。
「準備しよ! ヒナ」
「じ、じゅんび?」
 マリはヒナの手を引っ張り、無理矢理立たせて、背中を押す。
「さ、ヒナ。行くよ!」
「え? 行くって?」
 ヒナには何のことだか解らない。マリに押されるまま、ドアの所まで連れていかれていた。ヒナは困ってトオルを見た。どことなくトオルも楽しそうな様子だった。
「じゃ、先輩。ヒナ借りますね~」
「二人で準備しておいてくれ。俺もストレス解消に買出しに行ってくる」
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コメント

酒場を出てしばらくはピリピリした雰囲気で歩いていたんでしょうね

ちょww荷物持ったままベットに倒れる状況想像したらいったいどんだけの量を買ってストレス解消したのか気になります


荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(*´ω`*)
お返事が遅くなってごめんなさい(>_<)

どれだけ買ったのかwww
マリは自分の服は持ち歩いているのですが・・・どんだけ買ったかw
今度ざっくりと絵でも描こうかと思います(*´ω`*)
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