【白い思い出と紅い約束】六、紅衣(2)【小説】

2014.11.20 21:00|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

六、紅衣(2)


 ピアノの演奏がされている高級クラブ。町が停電しても、ここだけは煌煌と明かりが灯り、華やかだった。
 三人はそれなりの格好で来店していた。トオルはスーツ姿。マリは若草色のワンピース。二人とも「ストレス解消」の衝動買いの品を着用している。マリは髪を結い上げ、普段よりも大人っぽく見えた。同系色の石が付いたイヤリングにネックレスも身につけていた。
 ヒナは胸元に銀色のリボンをあしらった、スリットの入った紺色のワンピースを着ている。先程、トオルがマリに頼んで購入したものだ。それに合わせてヒールの低い靴をマリが選んでくれていた。
 胸元の露出は控えめだったが、背中が大きく開いていたので、翼を出した。髪を下ろしているから翼は見えないが、念のためショールを羽織らせた。ショールの他に銀細工の腕輪とネックレスを身につけていたが、それらはマリの私物だった。
「似合うよ、ヒナ」
 マリに言われ、ヒナは嬉しそうに微笑んだ。

 席に案内され、トオルとマリはメニューを一寸見て迷いなく酒を注文したが、ヒナだけは頬を膨らませて黙ったままだった。メニューが読めないようだ。
「お酒は飲めないの?」
「ジュースにするか?」
 二人に訊かれ、ヒナは渋い顔をした。
「……お酒にがい。おいしく、ない」
「飲めるなら甘い果実酒とかにしてみるか?」
 トオルがヒナに酒の説明をしていると、マリはきょろきょろと辺りを見回す。先に注文していた二人分のグラスが届いたので、その一つを片手に立ち上がった。
「じゃ、ここからは単独行動しますんでぇ」
「はい、了解」
 顔も上げずに、トオルは片手を軽く挙げて返事をした。ヒナはが興味津々にマリの顔を見上げた。
「マリ、キレイだよ! お持ち帰り、できたらいいね!」
 マリがじろりとヒナを睨んだ。
「……ヒナ、一言多い! どちらかというとお持ち帰りされたいんだけど」
 トオル達のテーブルを離れ、マリはカウンターに一人腰掛けた。ヒナはトオルの耳元で囁く。
「イイ男、探すの? お持ち帰り、するの? されるの?」
 トオルが笑った。
「マリから聞いたのか? それもあるかもしれないが、一応情報収集が仕事だ。こういうこともしていいことになっている。……しているのは俺たちだけだろうけれどな」
 着替えの時に、マリが「トオルの奢りで出掛ける」と話していた。
「夜に停電するような町だが、この店だけは例外だ。停電もしない、かなり流行っているようだし、役人も来るらしいからな」
 この店の話はマリがホテルのスタッフから聞いたらしい。入店方法まで教えてもらったそうだ。マリ曰く「世間話をしていたら教えてくれた」とのことだ。
 ヒナにもグラスが運ばれた。グラスを手にしたヒナは、恐る恐る一口飲んでみる。「おいしい」と嬉しそうな笑顔を浮かべ、甘い酒を口にした。
 マリに声を掛ける男はちらほらいたが、マリは全く相手にしない。しばらく一人で時間を潰していたが、一人の男が隣に座り、マリと話し始めた。
「お持ち帰り? かな?」
「あれじゃ、まだまだだな」
 二人でマリを観察していると、ドレスアップした女性が男性にエスコートされて店に入ってきた。鮮やかな赤いドレスを身に纏っていた。
「すてきだね、すてきだね!」
 頬を赤らめ、胸のあたりで両手を合わせて目を輝かせるヒナ。ドレスを初めて見たのだろうか……。片肘をつきながら、トオルはぼんやりとヒナを見ていた。
「……お前にも、赤いドレスが似合うだろうな」
 ドレス姿の女性を横目で追いながら、トオルが何気なく呟いた。
「本当? 本当に? 本当にぃ? そうかな?」
 ヒナは相当嬉しかったようで、トオルにしつこく訊き返す。
 思っていたことをうっかり口に出してしまい、トオルは顔をしかめて黙った。本当に怒ったのかと心配するヒナが顔を覗き込むと、さらに頬を赤くして顔を逸らした。
「……しつこい! 酔ってるのか? しつこいと置いていくぞ」
「や! 置いていかれるの、いや!」
 トオルにしがみついてヒナが駄々をこねていると、腕を組みながらマリが渋い顔で戻ってきた。騒ぐヒナを無視し、マリに声を掛けた。
「イイ男はいたか?」
「残念なことにいませんでしたよ。ただ、気になる話を聞きました」
「貿易か……」
 マリが聞いた話。民間人には内密で未だこの世界に存在している国と貿易が続いていること。東の国に船を着け、国境のある山間を越えてくるようだ。そのために政府は高い山を削ってまで道を造ったらしい。
 自国からはエネルギー資源の鉱石を少しづつ輸出し、不足している食糧や繊維等を輸入している。それらの輸入品はもちろん市場には出回らない。
「役人ばかりが良い生活をしているわけか」
「て、ことですよね。資源だって、何年もつか解らないのにさ……ギャンブルぅー」
 二人が真剣な話をしている間、飽きたヒナはテーブルに顔を載せたり、足をぶらぶらして遊んでいたが、気付くとテーブルに突っ伏して寝ていた。グラスは空だった。
「あらま、寝ちゃった。ヒナ、お酒に弱かったんですね」
「みたいだな」
 トオルは苦笑しながら、ヒナの肩を揺すったが、起きる気配がない。
「マリ、悪いがこいつを連れて先に宿に戻る。あとをよろしくな」
「わかりました。私はちょっと粘ってみます」
「……俺は正直疲れた。悪いが、先に休ませてもらうぞ」
「お疲れさまっす。私もちょっと疲れたし傷つきました……みんなの言うことはわかるけど、あんな風に言われて辛かったです。ヒナも気にしてますよね。あんなことの後あとから尚更心配……」
 眠るヒナを見るマリの目が細められた。無理して笑顔を作り、立ち上がるトオルを見上げた。
「お休みなさい、先輩。ヒナを頼みます」
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コメント

役人ってのはどこも至福をこやしてる嫌な奴が
多いもんですね

ヒナちゃんは案の定弱い酒でも酔っちゃうのね(笑)
いやそこもすごくかわいい
特に足ぶらぶらとか萌える

マリちゃんがんばって情報収集。後持ち帰りする方だったりされる方だったりww

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(●´ω`●)

なんだかいつもお返事が遅くなってごめんなさい(>_<)

いろいろと資源がなくなって来ているのにこのありさまで、
一般市民はやってられないですね・・・

トオルに絡んでそのまま寝てしまうwwwヒナの年はいくつだろうとwww
マリがいいと思う男性ってなかなか難しいですが・・・(;´∀`)
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