【白い思い出と紅い約束】七、昔の女(2)【小説】

2014.12.05 22:00|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

七、昔の女(2)


 ホテルで悶々とする女二人。マリが持参したハーブティーを煎れ、それを飲みながら、途中で買ってきた菓子を食べる。マリは椅子の上であぐらをかき、ヒナはベッドの上でゴロゴロと寝転んでいた。
「トオル、なんで狙われるんだろ?」
 ヒナが天井を見上げながらぼそりと言った。
「先輩はね、うちらの住んでる町に戻ってくる前は、首都配属でかなりエリートだったんだって。軍としても帰らないでいてほしかったらしいけど、先輩がすごくミタールに帰りたがったらしいよ。それからずっとミタールにいるんだって」
 天井を見上げながら溜め息をつくヒナ。
「トオル、すごいんだね」
「そーだよ、かなりすごいんだから、先輩は! だから狙われちゃうのかも」
 あぐらをかきつつ菓子を食べているマリが嘆いた。
「あー、こういうお菓子食べるのって久しぶり。おいしいけど、ちょっと罪悪感」
「なんで?」
「こーんなお菓子なんて、そう食べられる状況じゃないんだ。私たちの住んでるトコは食糧不足になりかけているの。たぶん他の地方も同じだと思う……」
「そうなんだ。大事、に食べよ」
 座り直し、神妙な顔つきで菓子を食べる二人。
 その時、ドアがノックされる。大急ぎで起き上がったヒナは、飛び付くようにドアを開けたが、そこにいたのはホテルマンだった。トオルを待ち侘びていたヒナは露骨にがっかりする。
「トオル様からヒナ様に伝言があります」
「伝言……?」
 二人は顔を見合わせた。

「いない……」
 ヒナは夕刻の公園に立っていた。
 太陽は厚い雲に隠されて、空は淀んだ紫色だった。遊具はあるが薄暗く、遊ぶ子どもの姿はない。公園の奥は林になっており、濃い闇が漂っていた。
(呼び出された場所、はまちがいなかったはず、だよ?)
 辺りを見回したが誰もいない。トオルにすぐ会えると思い、薄手のワンピースのまま出てきてしまった。肌寒かった。風も出てきて、淡い桜色の裾がはためく。髪に隠れた背の翼が見えてしまうかもしれない。ヒナは久しぶりに「ひとり」だった。心細く不安だった。そこに後ろから近付く人の気配があった。
「トオル?」
 その気配に、嬉しそうにヒナが振り返る。


 空が暗くなってから、トオルがようやくホテルへと到着する。部屋でだらけていたマリは、トオルが来ると慌てて姿勢を正した。
「先輩……ヒナは?」
 首を傾げるマリをトオルは不思議そうに眺める。
「ヒナ? ヒナはマリといたんだろう? 俺は尾行を撒いて……」
「え? さっき先輩からの伝言があったからヒナが……」
「俺は何も」
 しばしの沈黙。マリが頭に手を当てながら声を上げた。
「あ……名前! 私の馬鹿っ!」
 マリが上着を手にした。伝言が偽名ではなかったことに気付かなかった。
「すみません、先輩! 私……」
「行こう」
 慌てるマリの様子に状況を理解したトオル。二人は部屋を飛び出した。
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コメント

おお!まさしく佳境に!

まさかヒナちゃんが狙われるとは!

程よいペースで物語が更新されるので、いつも楽しみしてます(^ヮ^)
こりゃ、本が届いても読めないじゃないですか!(;艸;)

まさに目の前に人参をぶら下げられた馬状態w

freilさん

コメントありがとうございます(●´ω`●)

今までにない勢いで予約投稿をしています(笑)
自分の文章を見返せない気分になってしまっているので
そのまま載せちゃってる感じなのでさらに誤字があるかも・・・(本にした文とは違うデータなんです)

ただ六の(3)だけ載せるのをためらってます。

昔の女は熱いですw
燻った炎ほどたちが悪いですね(;´∀`)

うわっ!!
ついにヒナちゃんにも追ってというか魔の手がのびてきちゃいましたね

しかもこれは呼び出してだから余計にヤバイって感じが漂いまくりですね

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(*^▽^*)

偽名じゃなかったことに気付かなかったのはマリの失態ですが、
ヒナがひとりで出歩くのが初めてだったんですよね。
いつもならマリが付いていくのに。
トオルを心配してるのに、心配しているほど気を付けていなくて
なんだかんだ気が緩んでいた二人です。

死なない程度に可愛がってくれると思います(違!
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清水結衣

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