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2017-05

【白い思い出と紅い約束】七、昔の女(3)【小説】 - 2014.12.08 Mon

「白い思い出と紅い約束」

七、昔の女(3)



 ヒナの前に現れたのは、トオルではなく軍服に身を包んだ女だった。
「トオルじゃなくてごめんなさいね」
 甘く艶めかしい声音。胸は豊かで、腰は細く括れている。釣り上がり気味の茶の瞳、紅い唇、緩やかに波打つ亜麻色の長い髪。長身の美しい女だった。
「あ……なたは?」
「トオルに訊いてみて頂戴」
「可愛らしい子ね。トオルの恋人? ペット?」
「どっちでも、ない……」
 ヒナが頬を赤くして当惑していると、女は嬉しそうに微笑んだ。
「翼が生えているなんて、ペットじゃないの? いろんな意味で」
 優しい口調の中に刺々とした悪意が込められていた。恐怖にヒナが後退りすると、女はヒナの腕を掴み、ぐいっと引き寄せた。
 逃げようともがいても、女の力は強く逃げられない。ヒナは小さな悲鳴をあげた。女は微笑んでいたが、目は笑っていなかった。鋭い獣の目。
「逢いたい人がいるのよ。一緒に待ちましょう、ね?」

「ヒナ!」
 寸刻も待つこともなく、トオルが駆け付けた。腰には刀を帯び、手には銃を握っていた。暗い公園の広場の中心に立つ。外灯の明かりは弱々しく、頼りなかった。
「騎士様のお出ましね。まあ、早かったのね」
 女の声に、冷笑を浮かべるトオル。
「伝言があったからな」
 トオルの不機嫌そうな低い声に、女は嬉しそうに微笑んだ。
「早く逢いたくて小細工もできなかったの。お久しぶり。元気そうね、トオル」
 女は右手にナイフを握り、震えるヒナの細い首筋に刃を当てていた。
 右腕を肩に載せられ、ヒナは動けずにいた。女は左手を腰に当てながら優雅に微笑んでいる。
「……お前か? 俺たちをつけていたのは」
「きっと来るだろうと思っていたから、ずっと部下にあなたを捜させていたの。でも、まだ上には報告してないわ」
「暇人だな」
「そうね」
 女は左手で豊かな艶のある髪をかきあげる。そして公園の奥、林に向かって声を掛けた。
「お嬢ちゃんも出ていらっしゃい。隠れていても無駄よ」
 見つかってたか、マリが舌打ちしながら木陰から出てきた。
「あなたの趣味が変わっていてびっくりしたわ。ロリコンになったの? こんなに可愛らしい子に熱を上げて。しかも翼もあるのね。天使がお好き?」
 トオルが銃口を女に向ける。
「ヒナを離せ」
 女はトオルに睨まれ、嬉しそうに笑った。
「この子は傷つけないから安心して。スマラグダス社の研究者に渡す気はないの。だって嫌いなあいつがいるもの。私はあなたに用があっただけだから」
 女はヒナをその場に残し、優雅な足取りでトオルへ歩み寄る。トオルは銃を構えたまま動かない。ヒナはその場にへたりこんだ。
「マリ! ヒナを」
 トオルの呼び掛けで、慌ててマリがヒナの元へ駆け寄る。
「ヒナ、大丈夫?」
 震えながらも、ヒナはしっかりと頷いた。ヒナの無事を確認し、マリはトオルに声を掛ける。
「先輩! この人誰っすか? 知り合いですか?」
「ルチル……昔の仲間だ」
 ルチルと呼ばれた女は間合いをはかりつつ、トオルに向かい合うように立ち、微笑んだ。
「それだけじゃないでしょ? あなたの昔の女でしょ?」

「む! む! む、ムカシの……オンナ!」
 涙目でルチルの言葉を繰り返すヒナ。そのヒナの肩を掴み、マリが「気にしちゃ駄目!」と言い聞かせる。
「あの頃のあなたは激しかったわ。あなたはまるで獣のように激しくて、私はいつも叫びながら気を失ったわ。手錠を掛けて私の服を裂いて、私の胸に爪と歯を立て……私を縛り上げたうえ、蝋燭をちらつかせて、上からも下からも息もできないくらい私を攻めて……」
 ルチルは動揺する二人を楽しそうに眺めながら、胸元に手を当て、昔を懐かしむような素振りをしてみせる。
「……トオル、こわい」
「先輩……マジっすか。そんな趣味があったなんて知らなかったす……」
 青ざめる二人に目をやり、トオルが溜め息をついてルチルを睨んだ。
「冗談はやめろ。あいつらが真に受けるだろ」
「本当に冗談かしら? でも、真にうけちゃうなんて可愛らしい子たちね」
 クスッと笑った後、ルチルは真顔になり、トオルを静かに見つめた。
「あの時、私には……あなたしかいなかった」
「俺は、誰でも良かった」
「でも、トオル……愛したオンナしか抱かない、って言ったよ」
 震える声でヒナが言った。ルチルがちらりとヒナを見たが、トオルの視線はルチルから動かなかった。ただ、銃口がぶれた。
「俺はおまえを愛してはいなかった」
「でも抱いたわ、あの晩。あの時、私は愛されていなかったことぐらいわかってた。それでも良かった」
 腰に装備していた長刀をルチルは優雅な動きで引き抜く。ルチルは街頭の光で鈍く輝く刃先をいとおしそうに見つめた。
「ただ、また会いたかった。あなたが地方に赴任してから、いとしさばかりが募って仕方なかったの」
 顔を上げたルチルは、冷たい眼差しでトオルの顔を見つめた。
「そして今回、あなたが反乱軍として来るならば、殺してみようと思ったの」
 ルチルは刀を構える。トオルも銃を地面に放り、腰に提げた刀を鞘から引き抜いた。
「マリ! 出来ないとは思うが手出しはするな! あとヒナ! 何も言うな!」
 無言で二人は頷いた。頷いたが、マリが首を傾げる。
「何も言うなって……どういうこと?」
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● COMMENT ●

Σ(;゚Д゚)

そ、そ、そんな趣味があったんですかー!?←こっちも真に受けてる

(3)読み逃してた…ショック。
今になってのコメントすいませんです。
緊迫した空気感が流れてますね♪
ルチルさん…イラストで登場してたかな?
初めて聞く名前じゃないので…。
ここで登場するんですね!

freilさん

コメントありがとうございます(*´ω`*)

そうですそんな趣味だったんです(違
女遊びは派手だったんですけれど・・・

ルチルは前から描きまくってます(*´ω`*)
以前「針のような女性」「金紅石」のタイトルでもイラストを描いています。
(あえてカテゴリーはイラストに入れてますw)
あと縛られてる絵もあった気がしますwww
好きなキャラですwww
こんなに動くキャラになるなんて最初は思ってなかったんです(*´ω`*)

縛るくらいならやりそうだな~と思ったら
蝋燭までとは...トオルさんすげえなww


2人の大人な関係がはたから見たらドロドロな感じに見えそうですね
話半分だとしてもマリちゃんヒナちゃんは頭ぐるぐるに7なっていそうw

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(●´ω`●)

縛るに至った経緯は別にトオルのせいじゃないのですよ(゚Д゚;)(;゚Д゚)
蝋燭はルッチーの嘘ですwww(多分

ヒナは頭ぐるぐるですね。
マリは・・・むしろ想像してウィヒヒ///かもしれないです(;^ω^)


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