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2017-05

【白い思い出と紅い約束】七、昔の女(5)【小説】 - 2014.12.14 Sun

「白い思い出と紅い約束」

七、昔の女(5)



 三人が歩み去るのが、ルチルの霞んだ瞳に映っていた。
「……憎むのも、難しいものね」
 そう呟いて微笑を浮かべた。
 ――トオル、できたら長く生きてほしい。でも、幸せだったら早く死んでしまえばいい――。


 十年くらい前か。
 ルチルの恋人が戦死した。訃報を聞いたあの日、あの晩。バーで荒れていたルチルにトオルが声を掛けた。トオルはサトルを含め、仲間達と飲みに来ていた。
 同じ部隊で同じ任務に就いたが、仕事以外ではほとんど会話をしたことはなかった。
 何を話しただろうか。酒を飲んでいたから憶えていない。本当は憶えていたくなかっただけだろう。ルチルはグラスを握りしめて喧嘩腰に話した。トオルは無愛想だったが、静かに話を聞いてくれた。
 泣くのを堪えていたルチルは、強がらないでもっと素直になればいいと、トオルに言われた。
 ルチルが誘ったらトオルは部屋に来た。無理矢理連れ込んだのだろうか。二人共若かったから、遊びだったのかもしれない。
 亡くした恋人の名前を繰り返し呟きながら、トオルの胸で泣くルチルを、トオルは荒々しくも優しく受けとめてくれた。何度も抱き合い、唇を重ね、最後はトオルの名を繰り返しながら、彼の逞しい腕の中で眠りに落ちた。
 朝を迎え、トオルはルチルの耳元で囁いた。俺はお前の男の代わりにはなれないと……。そう言い残して部屋を去った。
 それからも何度か寝た。それは恋人と言う関係ではなかった。
 トオルは冷酷に任務をこなしていた。そして気紛れで不特定の女を抱いていた。その様子は何かに疲れ、投げ遣りに見えた。
 その遊びの女の一人だったのかもしれないが、トオルはルチルの誘いを断ることはなかった。
 何故断らなかったのか。あの時は解らなかったが、今なら解る気がする。
 お互い淋しかったのだ。トオルには何もなく、彼は何もなくなったルチルの淋しさに気付いてくれた。だからこそ寝てくれたのだと思う。
 そしてトオルは首都を離れることになった。ベッドの中でルチルは訊いた。
「何でそんなに帰りたがるの? 何かあるの?」
「何もないから帰るのさ。俺は人を殺しすぎた。もう疲れたんだ。いろいろと、な」

 トオルはいつも遠くを見ていた。ルチルには何を見ているのか解らなかった。
 引き止めたかったが、その術をルチルは知らなかった。

 あなたが去って、私はトオル……あなたの代わりを探し始めた。でもやっぱりあなたの代わり、あなた以上の人はいなかった。
 私はどう頑張っても天国には行けない。地獄であなたに逢いたい……。

 こんなに深く刺してくれたけど、これじゃあまだ死ねないじゃない。あなたはわざと急所を外したの?

 私は部下を呼ぶ気はないのに。あなたに刺されて、私はこのまま死んでしまおう……早く死んでしまおう……。

 ルチルは震える手で腰にあった銃を取り出し、銃口をこめかみにあてた。涙が一筋、頬を伝った。
 ロックを外し、引き金を引く――。
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● COMMENT ●

いいですね、ルチルさん。

ここにきて登場したばかりのルチルさんのファンになりました!
このまま終わってほしくないです(;艸;)
人の想いっていいですよね。(ん?前も同じこと言ったような)
トオルの手で終わらせたかったルチルさん、美しいです!
物事の片づけ方、終わらせ方って、その人らしさが出ますよね。
なぜルチルさんがトオルに剣を向けたのか…そこがとても気になります(;艸;)

freilさん

コメントありがとうございます(*^▽^*)

ルッチー大好きなキャラです。思いついて出したキャラなのですがキャラ立ちしてくれました。

愛の反対は無関心で、彼女の場合は憎むほどにトオルを愛していたんです。
18歳から10年・・・ここまで長い時間こじらせると確かにおかしくもなりますよね(現実的に考えると・・・)
一番楽しい時期を戦いに明け暮れて紛らわす・・・
同じ国にいるんだから会いに行けよって話なんですが、出来ないところが彼女の不器用なところ。
変なところで変なプライドがあるのです(;^ω^)

トオルもルチルもお互い分かり合っていそうで分かり合えてない・・・
トオルがずるいんですけれどね・・・でもそれはルチルも知ってたのです・・・(´・ω・`)

引き止めるのが無理なら付いていけば...
でもそれはそれでつらいのかな
一緒に入れたとしても自分を常に見てくれてる訳じゃないなら酷ってものか

できれば助かって欲しいけれど、生きていたらやっぱりつらさを更に実感するんだろうな
あ~生きてて欲しいのにこの矛盾した気持ちww

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(*^▽^*)

付いて行けただろうけれどそれは嫌だったんですね。
素直になれない性格・・・自分からそんなこと言えない性格だったので・・・。
意固地になった乙女心・・・っていうかトオルたんが悪い(押し付けw

でもトオルにとって人と付き合うなら(?)ルチルが一番合っていたと思います。
結婚は無理ですね・・・(;´∀`)

(ヒナ「わたし、にんげん、じゃないのかな?(´・ω・`)」)


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