【白い思い出と紅い約束】九、回想(1)【小説】

2014.12.30 22:00|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

九、回想(1)


 北の町・ミタールの駐屯地。煤けた建物の事務室で若者達と雑談をしていたあの日、あの時。かかってきたあの一本の電話から、全てが変わった。
「あ、電話。こんな田舎の軍に何の電話でしょーね」
 マリはわざと明るく振る舞い、後輩が立ち上がって受話器を取った。
 しかし電話に出た後輩は緊張した様子で、トオルに目で助けを求めた。
「どうした?」
 怪訝な表情でトオルが歩み寄ると、受話器に手を当てつつ、後輩は震える声で囁いた。
「トオル先輩、ちょっと……怖い、人が」
「怖い人?」
 首を傾げつつ、トオルは受話器を受け取る。
「代わりました」
『久しぶりだな、トオル』
 耳に響いてきたのは冷酷な男の声。しかし、聞き覚えのある声だった。
「お前は……」
 驚きにトオルは言葉を失う。その様子を察したかのように、受話器の向こうにいる相手は鼻で笑った。
『お前とは何だ。失礼だね。久しぶりに声を聞きたくて電話したんだよ。しかし、君もだが君の部下も挨拶もまともにできないとは。田舎者は困ったものだ』
「……サルファか。久しぶりだな」
 受話器に発した声は掠れていた。その名前を聞いて、顔を強張らせてサトルが立ち上がる。マリが不安な面持ちで二人を交互に見た。
 電話の相手は軍の兵器開発部門にいたサルファだった。今は政府の、国の研究部門の責任者、そしてスマラグダス社の研究部門の責任者になっていた。
 首都配属から外れ、今まで一度も連絡をとったこともない。その彼が電話してくる用事があるはずもなく、嫌な予感しかしなかった。
『君に知らせておきたいことがあってね。わざわざ電話したんだよ』
 勿体ぶった言い方をしてきた。トオルはあえて平静を装い、横柄に答えてみせる。
「わざわざこの俺に知らせていいのか?」
『君に会いたくなってね。首都に戻って来ないかいと連絡したわけだよ。あの跳ね返りも君に会いたいようだしね』
 質の悪い冗談だろうとトオルは考えを巡らせる。「あの跳ね返り」はルチルのことだろう。嘲るような響きがあった。
 サルファとルチルは仲が悪かったはずだ。神経質で慎重なサルファ、そして大胆で奔放なルチル。性格が合わず、サルファは女を蔑む節があり、ルチルはそれが気に食わず、サルファに対して露骨に嫌な顔をしていたのを思い出す。
「俺が今更、そっちに行くわけがないだろう」
『君の住んでいるミタールという所はかなり田舎だね。最近は雪も降るようだね』
「だから、どうした?」
 本題に入らずに嫌味を込めて遠回しに話をするサルファに、トオルは苛立ったがどうにか堪える。苦虫を噛んだかのような表情も、電話の相手には見えない。
『今の時期、電気の供給が止まったらどうするかな? ガスもないだろう? 私たちは役に立たない貧しい田舎を切りたいんだ。資源の節約をするためにね』
「何だと?」
『情報を遅らせているがね。今、電気の供給を止めた地方から、昔の仲間がこちらにのこのこ来ているんだよ。しかし、政府の命令で軍は捕まえた彼らを拷問し、反逆者として殺している。見せしめに』
 トオルは言葉を失った。反逆者として、殺されている?
『君の地方の電気も今から止まる。船の運航も止まれば物資も止まる。最近の冬は寒いから生きて越せるかな』
「お前は……」
 怒りに震えるトオル。受話器を持つ手が怒りに震えた。サルファはくっくっと喉の奥で笑う。
『私のせいではないよ。政府が決めたのだからね。軍は政府の犬だ。政府は、私たちの犬だが。まあ、死にたがりの君のことだ。来るだろう? 来たくなっただろう? 仲間が殺され、大事な田舎が窮地に追いやられる。耐えられないだろう? ……あの馬鹿も来るだろうけれどね。あれは役に立たない。まぁ、首を長くして待ってるよ』
「……おい、サ……」
 トオルの言葉を遮るように電話は切られた。その電話の後、町中の灯りが消えた。
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コメント

ぐわー!!悪役というかいやみな奴は話に1人は必要だとわかってはいるけど

やり方が汚すぎる(だからこどの憎まれ役)
直接じゃなく周りから徐々に埋めていく
戦略としてはいいけど外道って思ってるだろうな

今年は訪問させていただいたり
いろいろとお世話になりました。
来年もよろしくお願いします

振り返りの座談会wwみんなくくつろいでるし
ものすごい和んでるな~

「白い思い出と紅い約束」版ムスカきましたねw
はっはっはっ!どこへ行こうというのかね?

ぞ、続編があるですと!?
(; Д )゚ ゚
これは楽しみな2015年になりそうじゃないですか♪♪

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(●´ω`●)
いつもすぐにコメントくださってありがとうございます(*´ω`*)
嬉しかったです(●´ω`●)

来年もまたよろしくお願いいたします<(_ _)>

回想はブログのほうで載せようか悩んだのですが、サルファの嫌なやつ感を出すのに必要かなって思ってw

座談会はこの子たちがやった方が楽しいと思ってw
私が一人愚痴りをやるよりも楽しくやってくれていますwww

freilさん

コメントありがとうございます(●´ω`●)

サルファは嫌いじゃないんです(●´ω`●)
エリートコースできたけれどコンプレックスの塊で、実は女慣れしてないインテリ野郎だと思うのですw
惚れた女性に薔薇とか贈りそうとかwww勝手に妄想www


ひとつお蔵入りしている話があるんです。
ずっとこの話を作る前から書いている話・・・古くから書いているから腐敗しはじめた話・・・なのですが
その話を終わらせないといろいろと終わらないという・・・
なので来年に書けたらいいなって思ったりしますが・・・Cry*6をほったらかしにしたら・・・書けるかも?(;´∀`)
(ユーファが暴れてしまうwww)
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