【白い思い出と紅い約束】九、回想(2)【小説】

2015.01.02 22:00|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

九、回想(2)


 あの電話から一週間余りが経過していた。この日、軍と町とで会議が開かれた。その後、トオルとサトルは軍の駐屯地の建物の屋上にいた。
 一面が暗い闇。町は闇に包まれている。
「なぁトオル。俺たちは首都の仲間に見捨てられたんだよな?」
 冷たいコンクリートの屋上にサトルは寝転んでいた。その近くに角灯が置かれていた。
「そうだな。あいつの電話から連絡は途絶えたままだ。こちらから人を派遣しても帰って来ない。捕まったか、殺されたという話だが……」
 近くの鉄柵にトオルは寄り掛かっていた。軍と町の役所の人間が、政府へエネルギー供給の再開を嘆願に行き、その返事を待っていたが戻って来なかった。
「会議でここの軍も反逆者……というか反乱軍になるって決まったし。電気も止められたから、町も全面的に協力するって話になったしね」
 サトルの話を聞きながら、柵に寄り掛かったトオルは、腕を組んで渋い顔をしていた。
「仲間だった奴と殺りあうのは、正直気分は良くないな」
 夜空を見ながらサトルは無言のまま頷いて、視線をトオルに移した。
「……あのさぁ、トオル。……俺たち、仲間を殺してまでさ、この地方を守る必要あんのかな?」
「サトル?」
 怪訝な表情を浮かべるトオル。サトルは体を起こし、あぐらをかいた。
「世界がずっとおかしいんだぜ。世界が滅んだら、こんなちっせえ国のこんな寂れた町なんてさ、どうなろうとカンケイなくね?」
 トオルは夜空に目をやる。空は霞んでいた。
「確かにな。だが最後まであがかないと、俺は気が済まない」
「俺もそうだけどさ」
 と、サトルが言い、二人で顔を合わせ軽く笑った。サトルは口をへの字にした。
「天使、っているのかね」
「噂の政府が逃がした『翼ある者』って奴か? どう考えても作り話だろ? 俺はどうでもいいんだが」
「うーん。願いが叶うのは無しだとしても、何かとてつもない力とか持ってないのかね? 前にそんな話があったよね? 神様級のとてつもないすんごいのが地上に降りて来て、この異常気象やらを起こしてるとかってさ。……天使かぁ。俺は可愛ければいいなぁ。……そうだなぁ、ルチルちゃんみたいにさ」
 眼を輝かせるサトルを見て、トオルは呆れて溜め息をついた。
「ルチルは天使じゃないだろう。どう考えても、あいつは悪魔だろう。……今も会いに行ったりしてるのか?」
 何かを思い出したようで、サトルが笑った。
「ま、ね。首都に行った時は顔出すよ。俺の顔を見ると『何でまたサトルなのよ!』って怒られるけどね」
 サトルは度々休暇を利用して首都に行っていた。仕事とプライベート両方の用事らしいが、ルチルに逢いに行っていたのだろう。
 ルチルの真似をするサトルに、トオルも笑い、空を見上げた。目を細めるトオルに、懐かしさといとしさを堪えるような表情が浮かんだ気がしたが、サトルは何も言わずにいた。
 小さく息を吐いてから、サトルは話を戻した。
「……実際、天使が一人いたところで、何も変わらないだろうしねぇ」
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コメント

自体が良くなろうが悪くなろうが
あがけるまではあがく

でも弱い人にとってはありがたいだろうな
救世主とまでいかなくても1つのよりどころにはなるのかなと

後にヒナちゃんと出会って安らぎ?を感じてるのをみると感慨深いものがありますね

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(●´ω`●)

二人ともこの世界が長く続かないことは解りつつも、
それでも故郷の為に戦うことを選ぶわけです。

サトルはルチル的天使を熱望・・・だったわけですが(笑)
現実はちょっと(いや、かなり)違っていたようですが(;^ω^)
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