【白い思い出と紅い約束】一〇、潜入(2)【小説】

2015.01.14 22:00|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

一〇・潜入(2)


 他地方の仲間も含めて潜入するため、何度も打ち合わせが行われた。
 打ち合わせ場所は毎回違うが、トオルのみが出席し、ヒナとマリは隠れ家で時間を潰すことになる。隠れ家は狭いが三階建てで、三人は三階の空き部屋を借りることになった。
 今まで物置状態であったので、物は溢れ、埃が積っていた。マリとヒナで掃除をする羽目になった。が、ヒナには「掃除」が解らず、マリにまとわりついて遊んでいたので、マリは部屋からヒナを追い出し、掃除をした。結局、マリ一人で掃除をした。
 ヒナは見知らぬ仲間や外出を怖がり、トオルがいないと三階の部屋に籠っていた。ヒナを心配するマリは、彼女の近くで縫い物やらトレーニングを行い、時間を潰していた。
 しかし、ぼんやり外を眺め、トオルの帰りをただひたすら待つヒナに付き合うのにマリは退屈を感じ始める。家中をうろうろし、先輩連中をどかして掃除をし、美味ではないが料理を作り、たまには一人で買い出しと称して外出もした。
 マリの愛嬌と働きぶりに他の仲間もマリを信頼するようになり、隠れ家の留守番を任されることになった。
 誰か来ても、見知らぬ人を通さなければいいだけだと、マリは簡単に考える。
(ま、見つかったらもうアウトっしょ)
 テーブルクロスも無い、無骨な木のテーブル。そこでマリは、お茶を飲みながらのんびりする。そして背後の階段をちらりと振り返った。
 ヒナもお茶に誘ったが、毛布にくるまりながら悲しそうな顔をし、首を横に振った。
 彼女にとって、この町自体が怖いのかもしれない。そう思ったマリは、いつもと変わらない笑顔でお茶を差し入れし、一人でぼんやりと一階で留守番をすることにした。
 時計の針の音しかしない静かな部屋で、テーブルに肘を付いてうつらうつらし始めた時、ドアがノックされた。
 マリに緊張が走る。静かに立ち上がり、そろそろとドアに近付く。片手にナイフを握りながら、覗き穴で外を確認する。
 そして溜め息をつきながら、ドアを開けた。
「どうぞっす」
 ――サトルがやって来たのだ。
 マリが鋭い目つきで睨む中、サトルは恐る恐る入ってくる。マリの片手にはナイフ。それを見て、サトルが青ざめる。「刺しませんよ」と呆れたマリが言った。
「……あのコ、いる?」
 ゆっくりとした動きで、マリはナイフをしまって、サトルに鋭い視線を向けた。
「仲間のヒナならいますけどぉ、何か用事ですか?」
 ヒナは部屋に籠っているので、マリ達の声は聞こえていないだろう。
「あ、違う! 違うって! 悪口言うわけじゃないから。……この前はごめん、本当に」
 素直に謝罪するサトルに、少々マリはびっくりした。「はぁ」と気の抜けた返事をし「ヒナ呼びますか?」と、とりあえず訊いてみた。
「あ、呼ばなくていいから」
 席を勧め、お茶を出す。サトルは「ありがとう」と笑顔で礼を言い、嬉しそうにお茶を飲む。
「最近、トオルはどう?」
「先輩……普通ですよ? てか会ってないんですか?」
「いや、会ってるけど。普通ならいいんだ」
 いつになく歯切れが悪いサトル。何かあったのかとマリは心配になった。
「サトルさんは打ち合わせに参加しないんですか? 先輩は毎日のように変装して出掛けてますよ」
「俺はいいんだ。陽動で騒ぐだけだからさ。細かい打ち合わせはないワケ」
 首を傾げながらもマリはとりあえず納得した。
「あのさ、マリっち。トオルを見ててやってくれないかな」
「見るって?」
「うん……無茶しないようにね。気をつけてほしいんだよねぇ」
「すでに無茶の連続っすけど。どんな無茶っすか?」
「……いや、いいよ。まぁ、気にしないで」
 気にしないでと言われたらさらに気になると、文句が口から出そうになった時、サトルが先に口を開いた。
「それより、マリっちは本当に潜入するの?」
「もちろんっす」
「やめた方がいいよ」
「何でですか?」
 自分の実力不足を指摘されているのかと、マリが不機嫌そうに答える。しかし、サトルは気にせずに言葉を続けた。
「女の子が捕まって何かあったら嫌じゃない。乱暴とかやばいじゃない。今、軍も統制とれてないみたいだから、命だってやばいよ。俺は後輩ちゃんを帰すことにした。あいつらは男だけど、命の保障できないからさ。マリっち、心配だって。襲撃には参加しないでよ」
 前に座るサトルは心底心配しているようだった。マリも様々な最悪の事態を考えてはいた。無事に帰れるとは限らない。
 不安はあったが、トオルとヒナが行く所には行くつもりだった。
「大丈夫っす。覚悟できてるんで……心配ありがとうございます」
「ヤバくなったら逃げてよね。無事が一番なんだからさ」
 先輩と認めず冷たく接しているが、やはりサトルは先輩だとマリは思った。
 最近心配されることがないマリは、驚きと嬉しさに涙腺が弛んだ。言葉を発した拍子に涙がこぼれそうで、上手く返事が出来なかった。マリは無理矢理に笑顔を作り、頷いてみせた。
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コメント

ヒナちゃん掃除をそのうちやりたいとか言ってそうだな~実際ちょっとやらせてすごいことになったから
部屋の外に出したとか想像できる

ドア開いて片手にナイフ持ってたら怖いだろうなww

後輩を危険に合わせたくないから任務から遠ざける
何気ないところで先輩というよりもやっぱり
普段おちゃらけてても優しいなサトル

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(*´∇`*)

ヒナはホウキにまたがって遊んだりしてそうですよね(*´∀`)
マリはサトルを先輩だと思ってなくても
サトルにとっては可愛い後輩なんです(*´ω`*)

ヒナが弱ってるのでマリが頑張っている状況です。
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