【白い思い出と紅い約束】一一、火焔(2)【小説】

2015.01.30 22:00|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

一一、火焔(2)


 軍本部へは行かず、二人はスマラグダス社へと連行された。そこで、ヒナはトオルと引き離され、研究施設に連れて行かれた。
 両手を拘束されたヒナはつまずきながらも固い床を歩く。機械だらけの白い部屋、白衣を着た者達。ヒナには皆同じ顔に見えた。ヒナは怯え、震えていた。
 一人の男がヒナの前に立った。白衣を着た男。髪をきれいに整え、眼鏡を掛けていた。
「この前は挨拶しそびれたね。君は気を失っていたからね。
 私は、スマラグダス社の研究部門の責任者のサルファだ。軍の開発部門の責任者と兼任だ。とすると、国の研究部門の責任者でもあるわけだ。君には名前があるのかね?」
「……ヒ、ナ」
「ヒナ、か。この前の怪我はすっかり治っているのか。それもまた興味深い。この前出来なかった質問をまずしよう。君はどこから来たのかね? 目的は何かね?」
 ヒナは知らないと言うばかりだった。
「憶えていないのか。もしくは言わないだけか。あとでショックでも与えるとしよう。何か思い出すかもしれない」
 翼の仕組みを解明するため、研究員達に無理矢理俯せに寝かされ、手足と翼を拘束された。腕と首から血を抜かれ、羽根をむしられた。ヒナは痛みに耐えられず、悲鳴をあげた。
「いやっ……いたっ……」
「翼が生えていても、人並みに痛みは感じるんですね」
「翼のこの部分は骨? 筋肉? 組織を少しとりますか?」
「翼がある以外、人と変わりないですね。最近の異常気象で産まれた奇形ですかね?」
「どんな奇形で翼が生えてくるんだ?」
 肩で息をしながら、痛みに耐えるヒナ。その横で、研究員達が談笑していた。
 サルファが眼鏡を押し上げながら、台に寝かされているヒナに近付いた。
「あのトオルも捕まるとはな。君に熱を上げてるとか? 人間ならまだしも、こんな生き物に……馬鹿馬鹿しい。ルチルも昔の男は殺せなかったか」
「トオル、と……あの女の人……、知って……いるの?」
 サルファがヒナを見下ろし、嘲笑う。
「トオルも私の昔の仲間だからな。私が開発した武器を使って、ためらいも無く多くの人を殺したよ。
あの冷酷な男を仕留めるのは、ルチルしかいないと軍は思っていたようだが――、所詮は女。情に流されて死んだ。女に任せるとは、軍も愚かなものだよ」
「ひどい……あの人の、ことを……」
 ヒナが悔しそうにサルファを見上げた。
「君には人並みの感情があるんだね。驚きだ」
 サルファは腰を屈め、ヒナの顔を見た。
「隠しごとなら今のうちに言っておいたほうがいいよ。もっと痛い目にあうことになる。君はどこから来た? どうやって翼を持って産まれてきた?」
「し、らない……ない」
 ヒナは首を横に振った。それが精一杯だった。「そうか」とサルファは頷き、研究員に声を掛ける。
「採血した結果は?」
「精密検査に回さないと言い切れませんが、獣の血と変わらないかと思われます」
「羽根も大きいですが、やはりただの羽根ですね」
「やはり何も使えなかったか。天使と呼ぶには神々しさの欠片もない。ケモノ並み、ゴミ並み、だな。一応すべて検査に回しておくように。あとは記憶がほしいのだが、期待は出来ないか」
 研究員の一人がサルファを振り返る。
「電気ですか?」
「ああ、そうだ」
「電気でショックを与えて……耐えられるかどうか。命の保証はないですよ」
「死んだらそれでいい。捨てればいい。役立たずには用はないからね」
 研究員達はぐったりしたヒナを椅子に座らせ、拘束し装置をつける。
「もう一度訊くよ、ヒナ。君はどこから来たのかね?」
「……」
 ヒナは震えながら、首を横に振る。恐怖で言葉は出ず、もう首を振ることしかできなかった。
 サルファの合図で装置のスイッチが入れられ、ヒナに電気が走る。行き場のない痛み、苦しみ、ヒナの絶叫。
「この悲鳴、彼氏くんに聞かせたかったねぇ。ま、あっちも大変なことになってるだろうがな」
 サルファが嗤う。ヒナはしばらく苦しみに耐えたが、意識を失った。

 意識を失う寸前か、失った後か、ヒナは夢を見た。
 ヒナは炎に包まれていた。紅蓮の炎の中に自分ともう一人、女性がいた。
 紅玉髄の瞳。白い肌。燃える炎の髪の乙女だった。辺り一面が燃え盛る炎なのに、熱さは感じなかった。ヒナは彼女の膝に頭を載せていた。彼女の傍にいて、彼女に触れていて、何故か心が落ち着いていた。炎の髪の乙女は、優しくヒナの黒い髪を撫でながら、ヒナに語り掛ける。
「あなたは私の妹。あなたの血は炎……今のあなたは死ねない。ただ、眠るだけなの」
「どうして、姉さま?」
「それはね……私と約束したからなのよ」
「やくそく……」
「約束を果したら、その時に……」
 炎の髪の美しい乙女の、美しい微笑……。

「ね……え、さ、ま?」
 装置から外され、冷たい床に放られたヒナの口元が小さく動いた。
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コメント

サルファ...もしかしたら軍内でも数少ないいい奴かもと思ったけど
後で電気ショックするとか、やばい読んでて頭こづいてやりたいと本気で思ってしまった


「今のあなたは死ねない」の言葉が気になる
約束ってのが果たしてヒナちゃんにとって辛い選択をせまるものなのか否か

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(●´ω`●)
サルファは感じ悪いやつです。ルチルも嫌いな感じ悪い奴なのです(大事なことなので2d(ry)

このへんからちょっとファンタズィーなかんじが入ってくるので
読みにくくならないかと心配です・・・・(;'∀')
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