【白い思い出と紅い約束】一二、逃亡(2)【小説】

2015.02.22 22:00|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

一二、逃亡(2)


 トオルは目を覚ました。天井の低い屋根裏の部屋は薄暗く、小さな窓から紅い西陽が射し込んでいた。頭を動かし、ヒナの膝枕で眠っていることに気が付いた。ヒナは座ったまま、うつらうつら船を漕いでいた。ヒナの目元にはくまが浮かんでいた。
(俺を、看病していてくれたのか)
 そっと手を伸ばしヒナの頬を撫でると、慌ててヒナが目を覚まし、嬉しそうに笑った。
「トオル、目を覚ました!」
「ヒナ、すまない。今まで、ありがとうな」
 体を起こすと体中に痛みが走り、トオルの顔が歪んだ。
「だいじょうぶ?」
「……大丈夫だ。俺は、何日寝てた?」
 ヒナは指折り数える。指四本……四日。
「ここにも追っ手が来てしまう。皆にさらに迷惑をかける前に、行こう……」
 困った表情を浮かべつつも、ヒナは黙って頷いた。もう少し休むように引き留める仲間達に礼を言い、仲間が用意してくれていた荷を持ち、二人は首都を離れた。


 二人は逃げた。昼に町を歩けなくなり、店で物を買えなくなった。食べる物に困り、小さな盗みを働くこともあった。
 盗むのはトオルの仕事だった。ヒナは物陰に隠れ、目を閉じ、両手で耳をふさぎ、うずくまって身を潜めていた。物を盗む……ヒナはそんなトオルを見たくなかった。そんなことをさせたくはなかった。
 野宿もした、汚い宿にも泊まった。軍服を着た者を見ただけで、二人は逃げた。

 人気の無い河岸で休憩をとる二人。揺れる水面をぼんやりと眺めながらトオルが呟いた。
「なかなか帰るのも難しいな。このままどこかに逃げるか?」
 ヒナがトオルの顔を覗き込んだ。
「トオルの、行きたいところに行きたい、よ。コキョウ、行きたいんだよ、ね?」
 ヒナの真っ直ぐな視線に見つめられ、トオルは目を逸らす。頷きながら苦笑をもらした。
「そうだな。そうだったな……冗談だ、気にするな」

 逃げてにげて、歩いてあるいて。二人は小高い丘に出た。目の前に大きな翠緑色のリトス湖が広がっていた。向こう岸は霞んで見えない。
「遠いね、トオルのコキョウ」
「近くて、遠いな」
 二人の間を風が吹き抜ける。風はすでに冬の寒さを纏っていた。ヒナはショールにくるまって震えていた。
「でも、行ける?」
「ああ」
震えるヒナの体を、引き寄せながらトオルはかすれた声で頷いた。
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コメント

見事に奪還は成功したみたいで
前回のあの流れるような攻め方はかっこいいです


そして開幕ヒナちゃんの膝枕!!!
トオルがこれほどにも
うらやましく思う日があっただろうかww

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます( ´∀`)

戦闘シーンは読み直ししたら無茶な行動もありそう……

そして満身創痍の膝枕です。
ヒナはちゃんとした看病は出来ないので( ̄▽ ̄;)
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