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2017-04

【白い思い出と紅い約束】一三、おかえり(1)【小説】 - 2015.03.01 Sun

「白い思い出と紅い約束」

一三、おかえり(1)



 ミタールに二人が到着した時、船着場には幾人かの仲間がいた。帰還する仲間を待っていたようだった。シンの渡した服は喪服で、喪服姿の二人に駆け寄った仲間達は皆驚いた顔をした。
「え? ……先輩?」
「トオル? 無事、だったのか?」
 皆の驚きぶりを不思議がりながらも、トオルは軽く頷いた。
「? まあ、あまり無事じゃないが、かろうじてな。それより彼女を……」
 トオルがヒナに目をやる。ヒナは青ざめ、ふらつきながらも必死にトオルにしがみついていた。あの酒場にいた者が幾人かいたからだろう。
「先輩、彼女とまず軍の医務室へ!」
「彼女は俺が背負います」
「トオル……」
 ヒナが震えながら目で訴えてきた。怖いのだ。トオルがヒナに優しく囁く。
「大丈夫だ、もう誰もお前を傷つけないから」


 駐屯地の医務室で、ヒナを休ませることにした。ベッドに寝かせると、ヒナは静かに眠りについた。
 トオルが医師に傷の手当てをしてもらっていると、軍服姿のサトルがトオル達の着替えを持って部屋に入って来た。
「トオル、無事だったか」
「お前もな。逃げそびれたかと思ってたよ」
 トオルとの変わらないやり取りに安堵し、サトルに笑顔が浮かぶ。
「籠城しないでくれって皆に追い返された。どうやら俺は、トオルと一緒じゃないと役に立たないらしいんでさ」
 苦笑を浮かべつつぼやくサトルは、持ってきた服を空いているベッドに置いた。手当てが終わると、医師が気を遣って席を外した。
 静かに立ち上がり、トオルは軍服に袖を通す。サトルは壁に寄り掛かっていた。二人共無言だった。
「この子、ヒナちゃんだっけ? 大丈夫? 顔色、悪くない?」
 最初にサトルが沈黙を破った。トオルは顔を上げなかった。
「最近は、こんなもんだ」
「……この子に助けられたのは二回、ってことになるんかね。三回かね」
「サトル?」
 トオルが顔を上げると、トオルの視線を避けるように、サトルは窓の外に目をやった。窓からは枯れた木々と灰色の空しか見えない。
「俺を助けに来た時、この子も囮になったんだろ?」
「……そうだったな」
「次はここいらの町を救ってくれた。緑の会社に捕まった仲間も助けてくれた。……その中に俺いたし」
 天井を見上げながら、サトルが呟くように言った。サトルの横顔をトオルは無言で見つめた。
「謝っとかないと。俺、この子に化け物とか言っちゃったしな。もう遅いかな。他の奴も気にしてたけど……」
「……」
 サトルがトオルに視線を移す。
「誰かが帰ってくるだろうって、船を待ってたんだよ。お前が降りてきたのにはびっくりしたよ。指名手配状態だったしな」
「シンが、チケットをくれたんだ。まだ、向こうで戦っていると思う」
「あのマリっちの同期か。あいつもなかなか使えるようになってきたねぇ」
 拳を握りしめ、トオルが絞り出すように言葉を発した。
「後輩を残して俺だけ帰ってくるなんて……もう船もないんだろう?」
「まぁ、船は無くなっちゃうね」
 定期船は廃止される。険しい表情を浮かべるトオルを見て、サトルはわざと明るく言った。
「少しは自分の後輩を信用しろって。シンちゃんなら大丈夫だよ。……あと」
 サトルが口籠もる。
「お前が、ルチルちゃんを殺ったってのは本当?」
 沈黙し、しばらく時間を置いてからトオルは頷いた。
「そっか……」
 サトルは口ごもり、ちらりと足元に目をやった。
「ま、いんだけど。お前、どうして帰ってきちまったんだ? この子と、どっかに逃げちまえば良かったのに。東の町からなら隣の国に行けたんじゃないか? 東の国はまだ荒れてないって噂だぜ。なのに……」
「こいつが、ヒナが……俺の故郷に行きたいって言ったんだ。それに、俺には他に行く場所がないしな」
 そこで顔を上げ、サトルを見た。
「サトルこそ、なんで戻ってきたんだ?」
 同じことをトオルに訊かれ、サトルは長めの前髪を息で吹いて揺らした。
「俺も行くとこねーし」
 二人は笑った。乾いた笑いだった。サトルはちらりと眠っているヒナを見た。眠っているヒナは繊細で、動かない人形のようだった。
「お前が死んだって話があったんだ。だからお前を見た時は、皆本当に驚いたんだ。生きていたのかってさ」
「俺が?」
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● COMMENT ●

シンと後輩の優しさ...
いい後輩に恵まれたなトオルは

トオルと一緒じゃないと役に立たないなんて
まるでクラナドの岡崎と春原をみてるようだ気分

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(●´ω`●)
お返事遅くなってごめんなさい(>_<)

最近は予約投稿にしているので、投稿ばかり続いています・・・(;´∀`)

シンちゃんと後輩ちゃん達はなんだかんだ無愛想な先輩からいろいろと学んだんです。
ヒナに対する罪悪感もあったんじゃないかと・・・
喪服にしたのは葬儀なら行かせなければいけない、と検問で思わせるため・・・でもあったりしますw

岡崎と春原ほどいいコンビではないかもしれませんがwそんな感じかもしれませんw
春原何処かに落ちていないかしら・・・(笑)


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