【白い思い出と紅い約束】一四、雪天(1)【小説】

2015.03.11 22:00|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

一四、雪天(1)


「青空、見えないね」
「冬だから仕方ない。そのうち雪が降りだすぞ」
 雪見たい、窓の外を見ながらヒナが楽しそうに言う。
 あの時、気を失ったヒナを病院へ運んだ。しかし、ヒナへの有効な治療はなかった。そしてヒナの回復は見込めないだろう……そう判断された。
 ヒナは病院を怖がり、今はトオルの部屋にいる。研究施設での件がヒナの心に傷を残していた。ヒナはトオルの部屋の窓から、しきりに外を眺めていた。
 上官はトオルに「休暇」という形でヒナの傍にいさせてくれた。
「ありがとうございます」
 トオルは深々と頭を下げた。
「冬はやることもない。お前みたいな冷酷な男の判断を狂わせるくらいの女性だ。大事な人だろう。最期まで看病してやりなさい」
 上官は優しくトオルに言ってくれたのだ。顔を赤くしつつ、深々と頭を下げたトオル。しかし「最期まで」という言葉が重くのし掛かった。

 寮だから部屋は居間と寝室、バスとトイレのみ。広くはないが、ヒナには安心できる場所だった。トオルがいた。トオルが傍にいてくれた。トオルの傍に立ち、座れ、眠れるだけで安心で幸福だった。
 トオルは自炊をしたから、ヒナはよく隣に立って邪魔をしたり、味見をした。よくヒナは笑ったし、ヒナの嬉しそうな顔にトオルも笑った。二人が笑顔だった。
 たまにマリが遊びに来た。大勢の後輩達が「先輩の彼女」を見に来て、マリが刀を振り回して追い出したこともあった。差し入れを持ってくることもあったし、「汚い」と怒りながら掃除をしていくこともあった。……トオルの部屋には余計なものは置いておらず、汚れてはいなかったのだが。
 ヒナはマリにもくっついて歩き、「うっとうしい!」とよく言われた。その時のマリは笑顔だった。トオルは椅子に腰掛けながら、そんな二人を優しい眼差しで見ていた。

 毎日のようにヒナを抱きしめるトオル。ヒナは腕の中で幸せそうに微笑んでいたが、トオルの胸には不安ばかりが募った。
(俺は、俺はこれからどうしたらいい? 何をしたらいい……? 何を……ヒナにしてあげられる?)
 たまには二人で散歩をした。町並みはリトス湖の南側に比べたら寂れているが、トオルはこの故郷の風景が嫌いではなかった。ヒナも厚手のコートを羽織り、嬉しそうにトオルに寄り添って歩いた。
 ヒナの服はマリが用意してくれていた。ヒナに似合う白いコート、白いブーツ。
「何もない町だが、俺はこの町が好きだ」
「私も大好き。トオルがいるんだもん」
 ヒナはトオルの腕にぶらさがるようにして、歩きながら楽しそうに言った。
「お前は素直だなぁ」
「トオルは素直、じゃないね。どうして?」
 ヒナが立ち止まり、トオルもつられて立ち止まった。ヒナに見つめられ、トオルはその視線をかわしてまた歩きだす。
「いろいろあるからな」
「いろいろって? 何? 何? 素直、なトオル見たい!」
 腕にしがみつき、しつこく話し掛けるヒナを引きずるように歩く。
「私のこと。嫌い?」
「……嫌いじゃ、ない」
 怒ったような顔でトオルが言った。照れ隠しで無愛想になったことがヒナには解らない。さらに心配そうな顔でトオルを見上げ、しがみつく。
「じゃ、嫌いじゃないなら好き? 愛したオンナしか、抱かない、て前に言ってたよ? 私は? 私は? 素直なトオル、はどうなの?」
 変なことを覚えてるな……トオルが愚痴をこぼす。しがみつくヒナの耳元で、顔を赤くしてトオルが囁いた。
「……」
 ヒナはトオルに抱きついて喜んだ。トオルは横を向き、怒ったように言った。
「……もう言わないからな」
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コメント

もう新婚さんの空気がひしひしと
看病だけども幸せオーラが部屋中に漂ってる
この話だけ見たらまるで
ラブコメのような甘酸っぱさがしますね

この幸せな時間も長く続かないんだろうな
って思うと苦しい
ふとクラナドアフターと重ねてしまったら
泣きそうになってしまった

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございますぅぅ
そしてお返事遅くなってごめんなさいいい(´;ω;`)

二人の初めてのありふれた日常を過ごす場面なんですよね。
恋人っぽいですね(〃∇〃)

クラナドと重ねたらクラナドに失礼になってしまうですよ(;´д`)
クラナドは人生、そして便座カバーなのです!←
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