【白い思い出と紅い約束】一四、雪天(2)【小説】

2015.03.13 22:00|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

一四、雪天(2)


 もっと言ってほしいと、ヒナはトオルのコートを引っ張りせがんだ。トオルは無視を決め込み、そのまま歩き出そうとした。
 その時、灰色の空から何かが落ちてきた。
「これ、何?」
 不思議そうに見上げるヒナに、トオルが笑顔で答えた。
「ヒナ。これが雪だ」
「雪!」
 ひらひら舞い降りる白いモノ。ヒナは雪を初めて見た。嬉しくて飛び跳ねて手をかざす。
「雪って、手を白くするね!」
「体温で溶けるから白くはならな……」
 冗談でも言ってるのかとトオルが見ると、ヒナの手に舞い降りた白い雪は、手のひらにうっすら積もっていた。
 トオルは通りの真ん中でヒナを抱きしめた。
「トオル?」
 突然のトオルの行動にヒナが驚き、トオルの顔を見上げた。トオルは無理して笑ってみせた。
「冷えるから帰ろう」


 出会った時、天使だと思った。
 乱暴に扱ったのに、何故か懐いてきた。
 任務のただの「獲物」だった。
 毎晩傍にいた。どんなに追い払っても腕にしがみつき、眠った。
 いつも傍にいた。よく泣いたし、笑った。
 純粋なヤツだと思った。
 いつも体が冷たかった。
 いつからか抱きしめるようになった。
 いつからか唇を重ねるようになった。
 いつからかいとおしくなった。
 いつからか離したくなくなった。
 たくさん、俺を助けてくれた。
 たくさん、辛い思いをさせてしまった。


 翼を切り落とした時の感触を、トオルはまだ忘れられない。
 安宿の浴室でヒナは翼を広げた。羽根が落ち、以前に比べみずぼらしくなった翼。シャワーの横の手摺りを握りしめ、「いいよ」とヒナは小さな声で言った。
 ヒナが自らの首を切ろうとしたあの刀を、今度はトオルが握る。刀を手にして、初めて手が震えた。
 翼の根元に刃を当て、翼を切ろうとした。途中、固いものにあたった時、トオルは手に力を入れるのを躊躇した。
 その時ヒナは、「そのまま切り落として」と震える声で懇願した。ばさりと翼が床に落ち、羽根と血が飛び散った。真紅の水たまりの中で、ヒナは苦痛に耐えながらもトオルに「ありがとう」としっかり言った。
 トオルは返事ができなかった。ヒナは座ったまま動かなかった。動かすこともできず、夜が明けた。
 翌日、ヒナの翼は部屋から消えていた。背の傷からの出血も止まっていた。何故翼が消えたのか、何故背の傷がふさがったのか、そんなことすら考えられなくなっていた。
 二人は無事に船に乗ることが出来た。ヒナは震えながらトオルの手を握りしめていた。その手は冷たかった。トオルの心はヒナ以上に冷えて、ただただ震えていた。
(ありがとうはこっちだ。ヒナ。すまない、ヒナ。お前がいなくなったら……)
 トオルは怖かった。ヒナが死ぬかもしれない。ここまで何かを失う恐怖に苛まれたことはなかった。
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