【白い思い出と紅い約束】一五、おやすみ(2)【小説】

2015.03.25 22:00|【約束】小説
「白い思い出と紅い約束」

一五、おやすみ(2)


 最近ヒナはぼんやりすることが多くなった。ベッドの上にぺたんと座り、相変わらず、窓から外を眺めていた。
「眠りたいよ、トオル」
 窓の外を見ながらヒナが小さな声で懇願する。毛布に包まり、ただ雪を見ていた。
「ちゃんと寝てただろ? それともこっそり起きていたのか?」
あえてヒナから視線を逸らしてトオルが言った。
「トオル」
 窓の外を見ていたヒナが見つめている。
「眠るだけだから心配しないで。眠るの、ただそれだけなの」
「ヒナ、しっかりしろ! 眠るって、お前……」
 トオルはヒナの両肩を掴んで揺さぶる。
「言われたから」
 ヒナの目は真剣だった。ふざけてはいない。
「誰に……? 何を言われたんだ?」
「死なないって、ねえさまに」
「ねえさま、ってヒナの姉貴か? 誰なんだ?」
「……誰か」
「誰か、って……」
 それ以上はヒナには何も答えられなかった。それ以上のことは本人にも解らないのだ。
 そしていつからか呟くようになった。
「トオルの大好きだけど、悲しい場所、行ってみたいな」

 ヒナを部屋に残し、トオルは買い物に出ていた。部屋に戻ってドアの鍵穴に鍵を差し込もうとすると、ヒナの笑い声がし、鍵も開いていた。またサトルでも来ているのかとドアを開けると、そこにはマリがいた。
「……」
「先輩、お疲れっす!」
 トオルは声を掛けるのをためらったが、マリはいつもと変わらない調子で挨拶をしてきた。ヒナはマリとお茶をしていた。
「マリがね、おいしいお茶をね、持ってきてくれたの。あとね、マリがクッキー焼いてきたんだよ!」
 嬉しそうに喋るヒナを、顔を赤らめたマリが身を乗り出して遮る。
「ち、違うって、私と妹で焼いたんだってば。べ、別に先輩は食べなくても結構ですからぁ」
「……わかったよ」
「じゃ、私帰るから、ね。ヒナ、またね」
 コートを手に、椅子から立ち上がろうとしたマリのセーターの袖を、ヒナが引っ張った。
「やっぱり……駄目?」
 ヒナの手を優しく握りながら、マリは微笑んで頷いた。そっか、とヒナは淋しそうに俯いた。
「んじゃ、お邪魔しました」
 部屋を出たマリを、トオルが追って呼び止めた。
「……あんなことの後で、来ちゃってすみません。ヒナのことは、やっぱり心配だったから」
「わざわざありがとう。何か、ヒナに頼まれたのか?」
 泣き出しそうな顔で俯いたマリだったが、深呼吸し、顔を上げた。
「……ヒナが眠った後、先輩のことをよろしくって。そう、言われたんで、断っておきました」
「マリ……」
 穏やかな表情でトオルの顔を見上げた。
「私には出来ないことだから……。先輩。ヒナの傍に、いてあげてください」


 その日も、ヒナは朝からぼんやり外を見ていた。部屋を暖かくしていたから、ヒナは袖の短い薄手のワンピースを着ていた。白いワンピース。
「もう、眠りたいよ。トオルの大好きだけど、悲しい場所で、私、眠りたいよ。駄目?」
 弱々しく縋りつき、懇願するヒナ。彼女は限界だった。もう限界だった。もう引き止められない。
 俯いて目を閉じたトオル。しばし沈黙が続いた。そしてヒナを優しく抱きしめた。
「わかった。行こう……な」
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コメント

ぼんやりと外を眺めてる...
まるでまどろみの中を泳いでる感じなんだろうな
降る雪を見てるってのは、切なさに拍車がかかりますね。

ヒナちゃん自分が居なくなった後の事考えて
マリちゃんに頼んでたんだね

頼めそうなのはマリちゃんくらいですからね

荒ぶるプリンさん

コメントありがとうございます(^^)

雪を見るくらいしか出来ない状態ですね。
マリがトオルのことを好きだと知ってたから頼んでいます。
そして断られることを薄々わかっていました(´・ω・`)
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