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2017-05

【Cry*6】1-4、君に 語るべきこと - 2015.11.23 Mon

「追い詰められる」




1-4、君に 語るべきこと

 リルの家は村外れにあるようで、ルアトは未だ村人と会ったことがなかった。ほぼ毎日リルは出掛けていたが、何をしているのかは未だ教えてはくれず、未だ訊くことも出来ずにいた。
 ベッドに横になり、ごろごろと一人暇を持て余していたルアトは、ふと思いつき、誰もいない部屋を見回しつつ立ち上がる。
(気になるんだよなぁ……)
 彼女の生活が気になり、悪趣味だが部屋を物色し始めた。
 壁に沿って緩いカーブを描いている細い階段。そこを登って屋根裏にいくと、木箱と本棚、そしてリルの小さな衣装棚があった。彼女の服を洗濯しようとして激怒されたこともあった。衣装棚を見るつもりはなかったが、扉が少しだけ開いていたこともあり、罪悪感は好奇心には敵わず、指で戸を開け、そっと覗いた。
 簡素な服ばかり入っていた。いつも七分袖のチュニックにくるぶし丈のパンツ姿のリル。外出時には黒いローブ。もっと可愛い格好をすればいいのにと思ったが、装飾のある服は一枚もなかった。
(ドレス……とは言わないけれど、せめてスカートはけばいいのになぁ)
 ルアトは無一文だった。お礼に服ぐらい贈りたかったがそれすら出来ない。
 仕事を探すべきかとも考えた。だが、リルは家にいて欲しそうだ。何も言わないが、村の人と関わりたくない、関わらせたくないようだった。
(このままでいるのがいいのかな。でもなぁ、ヒモみたいだなぁ……)
 一階の暖炉兼かまど側にはごく普通のありふれた木製の棚があった。いつも使っている食器が並んでいる。
 最後に初対面の時にリルが衝突していた棚を覗く。扉にガラスがはめ込まれた古い棚にあるのは、化粧道具や香水の瓶やアクセサリーではなく、分厚い本や薬瓶や大小様々な石だった。女の子らしくないと思った。ルアトと同い年くらいだとしたらそこそこ色気付くだろうに。
 一冊の本が手前に置かれていた。静かに取り出して開いてみると、ルアトが見たことのない文字がびっしりと綴られている。
「異国の……言葉、かな?」
 ルアトには全く読めないが、所々折り目がついているので、リルには読めるのかもしれない。革張りの表紙に銀の文字が打たれている。
(すごく高そうな本だな。こんな立派な本を見るのは初めてだ……リルってお金持ちなのかな? そんな様子はないけれど。あとこの道具……何に使うのかな)
 乾燥させた様々な木の実や葉が小さな瓶に詰まって並んでいる奥に、様々な色合いの石や高価そうな銀の器もあった。
 彼女は薬師なのか? もしくは占い師か? しかし、ルアトを助けた際に薬師は呼んだと話していたことを思い出し、ルアトは首を捻る。
(俺、これからどうしよう……)
 棚に置かれた少ない自分の持ち物を手にした。
 逃げたルアトが持ってこれたもの。一通の手紙と一つのフィビュラだった。
 服は汚れ、とうに捨てた。今はリルが用意してくれた服を着ている。握りしめていたためによれてしまった手紙。そして紋章が入り、宝石があしらわれたマントの留め具。手にすると重く感じた。これを届けなければいけない。苦しい。本当は行きたくない。しかし――ここに居たいかと問われたら、答えに悩む。


 珍しくリルが家にいた日。二人で畑を耕し、川に水を汲みに行った。
 水汲みの帰り、緩やかな坂道でルアトは息が上がってしまった。溜め息をつき、立ち止まる。
「俺、体力なくなったなぁ」
「今まで家にいたから、体力落ちちゃったのかな。すぐ元に戻るよ」
 両手でバケツを持ったままリルが微笑む。
「全身がだるいんだ。すっきりしないというかさ。やっぱり運動不足かなぁ」
 バケツを置いて背伸びをし、右腕を回してみるルアト。その様子をリルが心配そうに見ていたが、何も言わなかった。

 二人で昼食をとり、他愛ない雑談を交わしていた。とても穏やかな時間だった。目の前の娘の笑顔と、棚に置かれた書状。視線をさ迷わせていたルアトは、決心した。
「リル」
「ど? どうしたの」
 ルアトの深刻そうな顔に、リルが心配して席を立とうとするので慌ててルアトが制止した。
「違う、大丈夫だよ。違うんだよ。今までのこと……リルに助けてもらうまでに、あったことを話そうと思うんだ」
「え? い、いいよ、辛いことなら無理しなくて」
「リル、俺のこと全然訊かないだろう? でも話すべきだと思ったんだ。こんなにお世話になっているし」
「嫌なことなら、無理しなくていいんだよ。私にはそんな権利……」
「権利はあるよ。俺の命の恩人なんだし」
「でも、私が勝手にた……」
「死にかけてたら、お願いして助けてもらえないものだよ」
 真剣な眼差しに、リルは沈黙し、ルアトの瞳を見て頷いた。
「俺の村はさ、ここよりもっと山の方にあるんだ。ここより北西。国境の近く。あの日もいつもと変わらない一日だったんだ。なにも変わらない、普通のありふれた日常。……あいつらがくるまでは」
 ルアトは淡々と話し出す。リルを心配させまいと明るく話そうと思っていたが、実際、口を開いたら声の調子は暗くなり、視線はテーブルに固定されてしまった。
「あ、あいつらって?」
 震えるリルの声にも、顔を上げられない。自分の顔が引きつっているのが判るから。
「隣の国の、光の魔術師ってやつらだ。最近、隣の国に不穏な動きがあるからって、城から兵隊さんが国境近くの俺たちの村に来ていたんだ。
 魔術師は突然現れたんだ。そして攻撃をしてきた。兵隊たちは、あっという間に殺された。光の刃に、切り刻まれて、血が、飛んで……。
 魔術を使ったのは女一人だった。あいつは、一人で村の人を、殺して、俺の大事な人たちも。俺の、家族も、恋人も、殺して、殺して……あいつが……あいつらが許せないんだ。あいつらのせいで、あいつらの魔法のせいで、俺たちの村は滅んだんだ」
 ルアトを静かに見つめていたリルだが、彼女の膝の上では、握りしめた手は震えていた。
 心を落ち着かせようとルアトは大きく息を吐いた。椅子から立ちあがり、棚に置かれた手紙とフィビュラを手にし、戻ってきた。リルが助けた時、ルアトは手紙とフィビュラを握りしめて意識を失っていたという。
「兵の隊長さんが、死ぬ前に手紙と、紋章入りのこのマントの留め具を渡してきたんだ。この留め具が隊長さんの死んだ証拠になるって。手紙には今回のことが書いてあるって。だから、生き残った俺はこの二つを持って、逃げ……逃げてきたんだ」
 フィビュラと手紙をテーブルに置いた。その震える手を見つめることしか出来ないリルは目に涙をためていた。
「逃げるしか、できなかったんだ。俺はあいつらを許さない。魔術を使うやつらを……」
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● COMMENT ●

少しずつ、確信へ近づいてきているようですね。
鼓動への接近みたいな。
また読みに来ますね。
あ、コメントとか気にしないでくださいね。
気に入った作品があれば、その拍手を押してくれたら、嬉しいです。
けっこう、どの作品を読んでkれているのか?って、見ていますから。
珍しいものに、拍手があると、喜んでいます。ww

作品は、私の子供たちですから、人気がないと、やっぱり気になって・・
その子に、拍手があると、喜ぶんです、良かったね、って。

いつも訪問ありがとうございます。
普段はポチ逃げで申し訳ないと思っています。
今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
応援して帰ります。ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡全部

雫さん

コメントありがとうございます(*'ω'*)
お返事遅くなってしまってごめんなさい<(_ _)>

まだまだ試行錯誤しています。
小説って難しい。もっと本を読んでおけばよかったです(勉強不足)
わかりました(*'ω'*)拍手させていただきますね。
いつもありがとうございます<(_ _)>

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お忙しい中、いつもありがとうございますm(._.)m


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