【Cry*6】1-5、雨の中

2016.01.25 16:07|【Cry*6小説】第1章
「雨の中」


1-5、雨の中

 この村は雨が多かった。ルアトのいた村は遠くない場所にあるが、さほど雨は多くなかった。この村に来てから異様に雨の日が多かった。
(なんでこんなに雨が降るんだろう。雲が流れないのかな。有り得ないよなぁ)
 雨の中、リルの帰りを待つのは不安だった。不安というよりは心細いが正しいかもしれない。無事に帰ってきてくれるのか心配だった。雨音に包まれて、独りで待つのも嫌だった。
 雨音に雑じり、外から声が聞こえた。リルが帰ってきたのかと、内心嬉しく、慌ててドアを開けると、雨具を羽織った男が二人、荷車を引いて立っていた。村人だろうか。ルアトを見て驚いた様子だったが、二人で顔を見合わせた後、頷きあって手でルアトを招いた。
 不審に思いつつも、雨具もなかったのでルアトはそのまま近付いた。雨粒が容赦なくルアトに落ちてきた。冷たいというより痛かった。
「り、リル?!」
 数歩歩いて荷車にリルがいると分かり、荷車へと駆け寄った。体を揺すって名を呼んでも返事はない。意識はなかった。顔も黒いローブも土にまみれたまま、雨に打たれている。何があったのか、想像できなかった。
「……何があったんですか?」
「何もないさ、いつものこと。気を失ってるだけだ。今回はちょっと無茶したんだろう」
 何もない? 無茶とはなんだろう? いつものこととはなんだろう。打ち付ける雨。硬い荷台。まるで家畜のように、物のようにそこに置かれている。リルはなんでこんな扱いなのだろう。
「お前のことか。助けたって言っていた男ってのは。……服はこいつのためにねぇ」
 性格がきつそうな男がルアトを睨んでいた。リルの姿を凝視するルアトはその視線には気づかない。その様子を眺めながら、男はルアトに話し続ける。
「俺たちは呪い師に触りたくねぇんだ。荷車に載せるのも嫌だったんだ。運ぶならお前がやってくれよ」
 ルアトが顔を上げる。
「まじない?」
 震える声。男に顎で促され、ルアトは慌てて抱き上げる。
「ま、まじないって……リルは何をしているのですか?」
 弱い息遣い。体が冷たかった。
「いつものことだよ。今はお前がいるから頑張っているのかも、な」
 ほれ、と男が差し出したのは袋だった。ルアトは受け取るのをためらったが、村人はルアトに押し付けてきた。雨にぬれないように何重にも包まれた荷物と金属音のする袋。服と、金だろうか……。ルアトが吃驚してなかなか受け取らないでいる様を見て、村人は口元を歪ませて笑った。
「こいつの報酬だよ。受け取れって」
「報酬って、し、仕事の?」
「あれは仕事じゃねーよ。ま、こいつがそういったなら仕事なのかもしれねーが」
「そう言ったなら?」
 これ以上話したくないといった素振りで男は去ろうとする。
「あ、あの」
 一人は歩みを止めなかったが、黙って話を聞いていたもう一人の男は立ち止まって、ルアトの方へと歩み寄った。
「最近、リルは無理をしているから、無理しないようにいってほしいんだ。村の仲間はなんでも押し付けるから」
「え、っと。押し付ける?」
「おいおい! 変なことは言うなよ。今まであいつだって無理なら断ってきていただろ。命削っているようなもんだしな。でも今はやりたいんだろうし、そうでもしないとここで生きていけなくなるからな」
 二人は無言でルアトから離れていく。二人の姿が見えなくなるまでリルを抱いたままルアトは立ち尽くしていた。
「生きて、いけなくなる? 押し付ける? 削る……命を?」
 雨の中、ルアトは意味がわからず言葉を反芻した。
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コメント

後からまた読みに来ます。
面白いのは、もうわかっているから、先ポチしますねww

いつもポチ逃げですいません。ポチ全部

雫さん

いつもありがとうございます<(_ _)>

呪い師?
色々な疑問が、いっぺんに吹きだした。
続きを読みたいが・・時間が無い。。
ごめん、また明日来ます。

応援して帰ります。ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡全部
いつも訪問ありがとうございます。。

雫さん

いつもありがとうございます<(_ _)>

お返事が遅くなってすみません。。
いい雰囲気の疑問になっていればいいのですが……(もやっとする気持ちの悪い疑問もあるので……)
いつもご訪問、コメントありがとうございます<(_ _)>
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