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2017-04

【Cry*6】1-6、小雨の朝 - 2016.06.27 Mon

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1-6、小雨の朝

 深い睡眠に落ちたはずなのに、夢を見た。幼少、村の子どもと楽しく過ごした頃、そして村の人間から嫌われた頃、好かれるのを望まなくなった頃。全てが怖くなった頃。過去を見るのは苦痛で悪夢だった。
 澱んだ悪夢から這い上がり、リルが重い瞼を開けたとき、部屋は明るかった。ルアトはリルに背を向けていた。包丁で野菜を切る音が響き、火にかけられた鍋からも温かい湯気が上がっている。夕食の準備中かと思ったが、夜にしては明るかった。雨が屋根に当たって小さく跳ねる音が聞こえている。
「あれ……? 今は……夜、じゃないの?」
「おはよ、リル。朝ごはんもうすぐできるよ」
 リルは額に手をやり青ざめた。帰ってくるときから記憶がなかった。大雨の中、どうやって帰って来たのだろう。疲れて寝てしまったのか。ルアトに何か知られてしまっただろうか。
 はっとして起き出そうとするリルをルアトがとめる。
「疲れてるんでしょ? 夢でうなされてたし、眠れなかったんじゃない? 出来るまで寝ててね」
「でも、あなたは怪我を……」
「俺の傷はもうほとんど治ってるよ。暇を持て余してるくらいだから大丈夫。休んでいてね」
 ルアトは慣れた手つきで野菜を刻んでいる。そういえば何度も食事を作ってもらっていた。――毎回自分に必死で気づかなかっただけだ。
「慣れてるのね」
「うん、料理はたまにやってたからね」
 口元に笑みを浮かべ、目を細めてルアトの手元を眺めていたリルが、突然掛け布で顔を隠した。突然黙り込んだリルを心配して、ルアトが振り返った。
「どうかしたの? 具合悪い?」
「こ、ここ。ルアトがいつも寝てるとこ……」
「それはこっちも同じだよ。いつもベッド借りててごめん」
 視線を動かしてリルが凍り付く。
「あ、あああたし。ふふふふふ服、私……私のふふふふくが」
 夜着を着ている。着た記憶がない。
 今度はルアトが包丁を取り落す。
「――ごめん。あのままってわけにいかなくて。あんなに濡れていたら風邪引くと思って、着替えさせた。あ、あのべ、別に……見てないから」
 無言で耳まで赤くなったリルが睨む。じっと睨んでいる。何か言わねばとルアトは慌てた。
「リルだって俺のこと着替えさせただろ? 俺、変なことしてないよ!」
「でも、でも見たでしょ?!」
 沈黙。ルアトは嘘を付けない性格だった。
「そんな見てないから……」
「そんなって! す、少しは見たんでしょ?!」
「少しだよ! そんなに気にしなくて……」
「気にしないほど、も、もしかして見慣れているってこと? ダメってこと?」
「い、いや違うよ。……ダメとかっていうんじゃなくて」
「見られたよう見られた……」
「ごめんよ。でも悪意ないし、見られても減らないでしょ」
 お互いに無言になる。
「私なんかの、体じゃ気にしないよね。ごめんね。見せちゃって……」
 嫌味ではなく心底申し訳なさそうに項垂れるリルを見て、ルアトは今まで言わないでいたことをあえて言った。
「リルは可愛いし、スタイルだって、い、いいじゃないか。私なんか、とか言わないで自信持った方がいいよ。いろいろなことに自信もっていいんだよ。見たのはごめん。本当にごめん。でもリルのこと、すごく心配だったから」
 少しだけ顔を上げて「ごめん」とリルが謝り、すぐに掛け布に顔を埋めてしまった。小さな声で「ありがとう」と言った。
「昨日……村の人と話した? 何か……言われた?」
 心配そうに揺れる黒い瞳が覗いている。ルアトは平静を装い、言葉を選ぶ。
「いや、疲れているから無理しないようにって。そんなことを言ってた、かな……」
 他の物は長椅子の上に置いたから、と付け加えておいた。
 そう、とリルは掛け布の中に潜り込んだ。話したくないのだろうし、顔色も悪いから、おそらく動けないのだろう。見ると掛け布が震えている。声を殺して泣いているようだった。
(何か、あるんだろうけど、なんて訊いていいか、なんて言ったらいいのかわからない)
 そして。
 ――知ったらいけない気がする。
 その時、カツンと家の外で物音がした。リルの体が跳ねるように反応したのが分かる。
「ちょっと見てくるから。リルは寝てて。すぐ戻ってくる」
 外に出ると、丸まった紙が落ちていた。拾うと石に紙が包んであるようだ。何気なく視線を上げると、村人が走り去る姿が見えた。昨日話した人かどうかもわからなかった。何でこんなことをするんだろうと、ルアトは小さくなる後姿を睨んでみた。
 息を吐き、気を取り直し、手にあるものをじっと見つめる。
(これに、リルが命を削ってやっていることが書いてあるんだ。何をしているかわかるんだ。でも……)
 手が震えた。家の中で震えながら泣いているであろう娘を想い、ルアトは手を握りしめる。
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● COMMENT ●

もう、いいところで、困ったけれど、時間が無い。
でも、約束は守れた。
面白かった、あの女の子が・・って、シーん。
昔、北海道に居た時、生演奏、フォークソングとかのお店で。
そのひ、知り合った女の子が、酔っぱらって、タクシーに。
載せようとしたら、断られた。本当にぐでんぐでん。
仕方なく、家までタクシーで、部屋に。
独り住まいのアパートだったから、寝具が一つしかない。
仕方なく、その子を寝かせ、私は寒くて震えながら・・。

朝、その子が目を覚まして、僕を起こして、ここに寝てくださいと・・。
そんなことがあった事を、思い出しました。


いつも訪問ありがとうございます。応援して帰ります。
ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡全部

雫さん

コメントありがとうございます<(_ _)>

二人の気持ちの微妙な距離感が出ればいいなと思っています。

とても甘酸っぱい思い出ですね。
その子とはどうなったのかなって気になります。

いつもありがとうございます<(_ _)>

表まで送りました、もう時間帯も地下鉄が動いていたから、駅まで。
ただ、改札口を入ってからは、後一度もあっていないのでわかりません。
何度か、その生演奏の店には、友達とか言ったけれど、会わなかった。
でも、あれだけ泥酔するまで呑んだのだから、何かあたのだとは思いますが。

逆に、聞いては悪いような気もしたので。
聞かずに置きました。
元気でいてくれればと、思いますね。

訪問ありがとうございます。
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ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡全部

また読みに来ますね。

雫さん

その後は会うことがなかったんですね。
お店に行けばあってしまうと、あえていかなかったのかもしれないですね。

こんなことがあったな、ってその方も思い出しているかもしれませんね。
不思議な出会いですね。


いつもありがとうございます<(_ _)>


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清水結衣

Author:清水結衣
いつもご訪問いただきありがとうございます。

オリジナル中心でお絵かき。たまに版権絵。
そしてぼちぼち文章を。
プロフ画は野分シムロさんに描いていただきました
(*´ω`*)

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