【cry*6】2-3、水の都

2016.11.16 17:17|【Cry*6小説】第2章
「買い物」



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2-3、水の都

 数日後、二人はオクトーベルの都へ着いた。
 王国一の規模のマルス湖に隣接する都。
 都へと足を入れると、通りは人でごった返していた。石造りの家々の屋根の山脈から伸びた白い建物が目についた。
 通りの両端には出店が並んでいた。
「何? この騒ぎ……」
 酒を飲んで陽気に踊る者、出店を冷やかし練り歩く者、菓子を手に笑顔で走り回る子どもたち。
「……祭りかな? あの建物は何だろう」
 騒々しい人混みにリルは体を強張らせる。慣れてきたとはいえ大勢の人は怖かった。ほらこっち、とルアトが立ちすくんでいるリルの手をとり、引っ張る。
「どうしたの?」
 顔を赤くするリルをルアトが不思議そうに見た。
「――っ、手、手……!」
「え? 手ならいつもつないでるじゃない?」
 リルは黙り込む。確かに、右手が心配な時は手を繋いでいた。自分から。
「この方がいいよ。離れたら困るし、リルは騒々しいところは苦手でしょ。俺が先を歩くから離れないでね」
 笑顔のルアトに、リルは黙って頷くしかなかった。自分から手を繋ぐのと繋がれるのとでは心持が違うものなのだと知る。人の波に飲まれ、ルアトの背中しか見えなくなった。

 ――湖の神殿も儀式の準備が出来ていたよ――。
 ――とうとう儀式だね――。
 ――雨が降ればいいな。畑が干上がってきちゃったよ――。
 ――火事も起きやすくなったしね――。
 ――雨が降ってくれるといいんだけれど――。
 ――湖の乙女もこれで最後だ――。

 すれ違う人々の世間話、噂話が二人の耳にも届く。白い建物は「湖の神殿」というらしい。
 そこは湖の傍に建てられていて、中に「湖の乙女」なる存在がいるらしい。そして「湖の乙女」が、今日の「儀式」に関係するらしい。その儀式は雨とも関連するようだ。
 飲食店はどこも満席で、席が空いた食堂を見つけた時には二人は息が上がっていた。古めかしいが、落ち着いた雰囲気の店だった。
「はぁ、助かった」
 荷を下ろし、椅子に座った二人は、ほっと一息吐いた。
「歩き疲れたね」
 特産の魚料理を注文した後、二人は窓から食堂の外を見る。
「すごい人だね。儀式があるって言っていたね」
「……儀式と、お祭りは同じで、雨と関係するのかな?」
「そうだよ。儀式の時はお祭りになるのさ。湖の乙女の雨乞いがあるんだよー。はい、注文した料理、どうぞ」
 二人が首をひねって考えていると、食事を運んでくれた食堂の女将が二人の会話に雑じり、教えてくれた。
「湖の、乙女の雨乞い?」
「おやまぁ、旅の子たちなの? あらあら二人で。駆け落ち?」
 女将の言葉にリルが赤面して硬直する。うちは宿もやってるからどう? 安くしておくよ、と女将が笑顔で言うと、リルは固まったまま言葉も発せない様子なので、ルアトが慌てて訂正する。
「違います! 駆け落ちしていません。旅です、旅!」
「旅ねぇ……旅ってねぇ。二人で? 二人だったらねぇ……もうねぇ」
 女将が疑いの目で二人を交互に見ていた。
「あ、あの、湖の乙女、ってどんな人なんですか?」
 リルは固まったままテーブルを見つめている。困ったルアトは話を逸らせようと質問した。
「綺麗な娘さんたちだよ。儀式のために大事にされているんだよ。でももう最後の一人なのよ。儀式も最後になっちゃうのかしらねぇ。困っちゃうねえ。あんたも湖の乙女になれそうね。――でも大きすぎるかしら。恋人もいるんじゃだめねぇ」
 小さい頃から俗世間から離れているからねぇ。盆を片手に、女将は笑ってリルの背をばんばんと叩いて去った。呆気にとられた二人だが、顔を見合わせた。
「湖の乙女って特別な力でも持っているのかな。……って、リルも何とか言ってよ!」
 リルは水を飲み、手で顔を仰いで顔の火照りをとろうとする。
「ごめんなさい。びっくりしちゃって。だってか、かけ、……とか言うんだもの」
 男女二人、何事も無く旅をする方が不思議だと、ルアトも思う。駆け落ちでも良いと言えばいいのだが。
「恋人同士……って言うことにした方が、旅はしやすいと思うよ。勘ぐられないし」
 今度はフォークを取り落して、悲鳴のような声が上がる。
「えぇ……嘘つくの? だ……だって私だよ。私なんかに……」
「俺はリルに恋人がいてもおかしくないと思うけどな」
「え……。で、でもルアトに迷惑かけちゃう。それに、それに、そうしたら、どうしていたらいいのか解らない」
 困惑して目に涙を溜めているリルを見て、ルアトは申し訳ない気持ちになった。
「あの、ルアトが嫌じゃなくって、あのね……」
「ごめん、変なこと言い過ぎた。今のままでいいから、そんな泣きそうにならないで、ね」

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コメント

おおーっ かわゆす。

何だか、ほっこりするi-80

梨木みん之助さん

コメントありがとうございます(*´ω`*)


ほっこり(*´ω`*)


ありがとうございます♪

恋とか、愛とかに不慣れな少女
不思議な「湖の、乙女の雨乞い?」という言葉の意味?
また続きに期待。

ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡

雫さん

いつもいつもありがとうございます<(_ _)>

ネーミングセンスがなくて、あまりひねりがなくて(;・∀・)そのまんまです(;´Д`)

>不思議な「湖の、乙女の雨乞い?」という言葉の意味?
また続きに期待。

ネーミングとかじゃなくて、
なんだろう?って そんな感じで
興味津々という感じで、書きました。

言葉足らずですいません。
(*- -)(*_ _)ペコリ (*_ _)人ゴメンナサイ

応援して帰ります。ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡

雫さん

いえいえ大丈夫です。気にしてませんよー。
気になさらないでください(´-`*)

いつも応援ありがとうございます<(_ _)>
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清水結衣

Author:清水結衣
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オリジナル中心でお絵かき。たまに版権絵。
そしてぼちぼち文章を。
プロフ画は野分シムロさんに描いていただきました
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