【Cry*6】2-5、闇の力

2017.01.04 23:57|【Cry*6小説】第2章
「湖の神殿」


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2-5、闇の力

「可愛そうな湖の乙女、殺してあげる」
 女の瞳が朱く光る。翳した手から炎を飛ばした――。湖の乙女は悲鳴を上げて顔を手で覆い、その場にしゃがみ込んだ。
「ダメ!!」
 その時、乙女の前に黒い壁が現れ、炎を弾いた。壁はすぐに消失した。乙女は目を開け、自分の無事に驚いた。そして声の主を探し、離れた場所にいる二人を見つけた。
 女も焦った。今まで生きてきて、魔術を弾かれたのは初めてだった。
「だ、誰?!」
 振り向くと杖を翳し、肩で息をするリルが立っていた。その後ろに短剣を握るルアト。
 リルにとっては初めて使った防御の術だった。
「魔術を使えるの? しかも……闇なの?! う、うそ……嘘でしょ。闇の魔術を使える人間がいたなんて!」
 女は驚いた。報告せねば。初めての力。自分たちが最も忌み嫌う存在。
 そしてリルの後ろにいるルアトに気付いて笑った。彼女にはルアトの右手が光って見えている。
「呪いの子もいたのね。フローラのおバカったら……あの子、まだ死んでないじゃない。闇の術師と一緒だったなんて面白い……。ここの三人、殺さないといけないかしら」
「や、やれるものならやってみなさい。今度はこちらから攻撃しますっ」
 リルが杖を構えながら叫ぶ。恥ずかしさと緊張で声も杖を持つ手もひどく震えている。
 女にもリルが攻撃できるほどの魔力と魔術を持っていないだろうと気付いてはいたが、初めての属性の魔力に興味も警戒もあった。だから女は構えた杖をおろし、柔らかく微笑んだ。
「見た目より面倒な女の子ね。でも、いいものを見つけた。その力、その命、いつか奪いに行くわ」
 端正な顔立ちの女は微笑む。歌うように話す甘い声にリルはぞっとした。殺意がこもっていた。女がリルたちに背を向けた。リルが杖をおろす。
「でもただでは帰らない。置き土産をあげる」
 女は杖で床を軽く叩いた。するとあちこちに炎が飛び散り燃え始めた。
「え? 炎!?」
「町にも飛ばしたから、朝には焼け野原になってるわ。そして、貴方たち、生きていられるかしら?」
 女は笑いながら消えた。煙のように消えるのと同時に神殿が炎に包まれ、爆発するように神殿が崩壊した。
「いやぁ……!!」
 湖の乙女はしゃがんだまま動けない。
「ルアト、こっち!」
 リルがルアトの手を引いて湖の乙女の元へ走り、杖を翳して頭上に翳した。防御の術を張り、三人の周りにドーム状の結界を張る。落ちてくる瓦礫と炎から三人を守った。崩れた神殿の中心に三人がいた。
 二人の無事を確認し、リルは結界を消し、地面に膝と手をついた。三人の周囲――防御の魔術の外――は瓦礫すら残っていなかった。
 光の魔術師だろう彼女の魔力で、神殿は一瞬で焼失していた。それほどの火を出現させる魔力を持っていることにリルは恐怖した。めまいがひどい。無茶をしたと思った。
 震えるリルをルアトが支えた。
 湖の乙女は炎に襲われる町並みを目にし、肩を落とした。
「どうしよう、町が……皆が燃えちゃう……」
 ルアトが湖の乙女に声を掛けた。
「君も、君も一緒に逃げよう」
「私はここにいないといけないわ。……私はここで命を湖に捧げて、雨を乞わないといけないから……雨を降らせないといけないから」
 リルは肩で息をしながら、湖の乙女に目をやる。
「あなたがそんなことしても、雨は降らない」
「あなたも同じことを言うの!? それでも、それでも、私はそのために生かされてきたからいいの。もう、生きていても、もう……」
 ――何もないから。湖の乙女がうなだれる。ルアトは悲しそうな目でその様子を見つめていた。
 痺れる頭でリルは考えた。また、同じことを繰り返そうとしている。愚かなことだ。
「私がなんとかしてみる……」
「ちょっと、リル?」
「雨、降らしてみる」
 心配そうに見つめるルアトに、リルは微笑んだ。
「リル、無茶したらダメだよ! そんなことしたら……」
「そうでもしないと、この子、一緒に逃げてくれないもん」
「そんなこと、出来るの?」
 涙を溢しながら、湖の乙女がリルを見つめていた。純真無垢な空色の瞳が揺れている。
「ねえ、お願いがあるの。雨が降ったら――降ったら、私たちと一緒に逃げてくれるかな?」
 湖の乙女はリルに頷いた。「約束だよ」と微笑み、リルは地面に座り込んだ。
 杖を握りしめて念じた。
 雨を降らしたことなんてない。雨雲が移動しないなら動かせばいい。魔術が作用しているならば自分でもできる可能性はある。ルアトと湖の乙女がリルから少し離れた場所で心配そうに見ている。
(おばあちゃん、力を貸して……お願い)
 祖母の杖を手にして、リルはただ空を見上げる。

 炎が煙る中、リルは無言で空を見上げていた。
 空が曇り始め、月を隠した。ゆっくりと雲が動き、灰色の雲が流れてきた。地響き。段々近付く雷鳴だった。そして雨。
 しとしとと降り始めた雨はしだいに強くなり、豪雨になった。三人はずぶ濡れになっても、しばらく動くことができなかった。
「火が、消えていく……」
 激しく打ち付ける雨は炎を消していた。
 都に久方ぶりの雨が降ったのだ。
「本当に降った。すごい、雨だ……雨!」
 湖の乙女は立ち上がり、激しく打ち付ける雨に手を差し伸べて喜んでいる。乙女の横にいたルアトははっとして、倒れかけたリルに駆け寄って上半身を支えた。
「リル!」
 雨に濡れたからではなく、リルの体は冷たく、震えていた。
「うまく、いった? 私、解らないんだけれど」
 痛いほどに雨が打ち付けているというのに、彼女は感じてないのだろうか? 見えていないのだろうか。
 疑問の言葉は呑み込んで、ルアトは優しくささやいた。
「どんどん炎が消えてる。うまくできたよ。頑張ったよ」
 よかった。うっすらと笑みを浮かべて、リルは意識を失った。




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コメント

>リルは意識を失った。

火が消えた、良かった、でも今度は。
次々と難関が待ち受けていますね。
直ぐに続きを読みたいけれど・・・


いつも訪問ありがとうございます。
ポチ逃げで申し訳なく思っています。
応援して帰ります。ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡

雫さん

コメントありがとうございます。
いつもリルは倒れてばかりですwどうしたものかと……
もっと重みのある文章表現にしたいところですがスキル不足のようです(;´Д`)

いつもありがとうございます<(_ _)>
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