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2017-04

【Cry*6】2-1、ふたり旅 - 2017.01.17 Tue

「夜の森」


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2-1、ふたり旅

 旅に出ることを決意した朝、リルは祖母の部屋の扉を何年かぶりに開けた。「この村を出る時には私の部屋に入りなさい」と言い残し、祖母が閉ざした部屋だった。
 押してみると木の扉は音もなく軽く開き、部屋には穏やかな空気が漂っていた。木のテーブルと椅子、戸棚には本や魔術に関わる様々な物が並んでいた筈だが、棚は空だった。
「本も、水晶もないんだ……」
「もしかして誰かに盗られたとか?」
「違うの。お祖母ちゃんが自分で片づけたんだよ。こんなに物がないとは思わなかったけど」
 ルアトは首を傾げた。リルの祖母の死因は何なのだろうか。リルに必要な物がすでに準備されていることが気になっていた。しかし死因を孫のリルに訊くことははばかられる。魔術師なりの片づけ方法があるのだろうと思うことにした。
 部屋には余計なものは一つもなかった。ただテーブルの上に黒い布張りの箱と背負える大きめの鞄が置かれている。銀の小ぶりの杖、青い宝石で装飾の施された短剣。黒革の装丁の古めかしい本が一冊。そして手紙。ほこりすら被っていなかった。
「おばあちゃんの杖だ」
 リルは目を細めて、懐かしそうに杖を撫でた。
「今、置いたばかりみたいだね」
 辺りを見回しながら、ルアトが呟いた。二人以外に部屋に誰かがいるような錯覚を覚えてしまう。
「これもおばあちゃんの魔法だ」
 深呼吸すると懐かしい匂いがした。静かにテーブルの上の手紙を広げる。ルアトと目が合う。彼にも聞こえるように、声に出して読んだ。
「この部屋に入って、もしこの手紙に目を通すことがあるならば、この箱を持って城へ行き、宮廷魔術師・ウルリーカに渡すように。
彼女宛の手紙と貴女の力の欠片、贈る言葉はこの夜の箱の中に ベアトリスより」と書かれていた。
 テーブル上の鞄には旅に必要な荷物が入っており、お金も用意されていた。

 国境近くの村に住んでいたルアトは、南東へと逃げてリルの住む村へと辿り着いた。
 この村を南下すれば、大都市のオクトーベルの都に辿りつくはずだった。旅の準備をし、昼過ぎに村を出た。街道を徒歩で進んだが、夕暮れまでに宿場町にすら着くことが出来ず、野宿をした。
 ルアトが起こした火に当たりながら、持ってきた少しの食料で二人は空腹をしのぐ。闇と樹々に包まれ、獣の遠吠えが森に響く。マントに包まったリルが辺りを見回し、ルアトの顔を見て笑顔になる。怖いわけではないらしい。
「ねぇ、ルアト」
「ん?」
「不謹慎だけれど、わくわくしてるの。こんな気持ちになったの、初めて」
「よかった。俺も同じだよ」
 笑顔のリルを見て、ルアトの顔にも自然と笑みがこぼれた。魔力を無駄に使っていないせいかリルの顔色も良い。ただ、ルアトに「無駄に」魔力を使っている。
「このパン半分にしようか」
「じゃあ、これも半分」
 お互いが手にした食糧を半分に割って渡しあう。些細なことが初めてで楽しかった。それはリルも同じらしく、ルアトは嬉しかった。
 武器はリルの祖母の形見の短剣しかない。今はルアトが身に着けていたが、戦いに不慣れな二人が夜盗や獣に襲われたらまず助からない。ランタンの灯りを頼りに、リルは魔術書を開き、独り言を呟きながらページをめくる。
「攻撃、は怖いし。防御……これは使えるようにしておこうかな。えっと、気配を消す呪文、か。これなら大丈夫そう。念のため唱えておこうかな」
「気配を消すこともできるんだ。……でも魔力を使うことになるんでしょ?」
 心配しないでと笑い、リルは短い呪文を詠唱する。辺りに黒い靄が生じ、すぐに夜に溶け込み見えなくなる。
「よし」
 辺りを確認して頷いた。マントに包まり直して、そっと手を差し出す。
「ん?」
 リルの手を、そして目を見た。
「手、心配なら」
「平気だよ。リルが寝る番でしょ?」
「手が震えてる」
 責めるでもないリルの穏やかな眼差しに、ルアトは唇を噛んだ。

 二日掛けてようやく宿場町へと着いた。足が棒のようになって地べたに座りたい衝動に駆られるが、何とか堪えて宿を探す。値段を確認して、こぢんまりとした宿を選んだ。
「久々にベッドで寝れるね。疲れただろうから別の部屋にしとかない? その方がお互いゆっくり出来るだろうから――」
 ルアトの提案に、宿の扉に手を伸ばしたリルの動きが止まり、ふと考え込む。
「お金のこととルアトの手のこと考えたら、心配だから同じ部屋にしよう? もし何かあっても私がなんとかするから」
 振り返ったリルの顔を見、今度はルアトが考え込む番だった。出来るならば宿では久しぶりに独りになりたかった。度々魔力を使っているリルの体も心配だった。
「……私と居て、勘違いされたら嫌だよね。恋人さんのこと偲ぶ時間も……。心の整理すらできないし……」
「いや、やっぱり同じ部屋にしよう! 俺、まだ心の整理できないし! したくないし!」
 それが本心なのかリルには解らなかったが、ルアトの表情が切なすぎたので、リルは頷いた。ルアトに余計な気を遣わせたかと不安になる。
 部屋に荷物を置いた二人は、町へと出た。リルはルアトの背に隠れて歩いている。
 今まではあの黒いローブで顔を隠して村を歩くくらいで、人が多い場所へは行ったことがないらしい。村でも身を隠すように路地裏を歩くばかりで、大きな通りを歩いたことがないとリルは話していた。
 黒いローブをリルが何度も被ろうとするので、呆れたルアトが奪って鞄にしまい込む。リルは心もとない様子だったが、黒は目立つし、彼女が顔を隠す理由もない。
「顔見られたくない。顔隠したいよ、隠したい。ルアトひどいよ。ひどいよ……」
 ルアトの後ろから嘆き声が聞こえている。背を丸めてルアトへの文句を言う姿は呪いの言葉を呟いているようにも見えた。
「顔を隠す理由もないんだし、ここはもうあの村じゃないんだから。リルは堂々と歩いていいんだよ」
 正論に反論も出来ず、しかし吹っ切れないリルは俯いていた。その肩を叩いて笑顔を向けた。
「ねぇねぇ、リル。服を見ていこうよ」
「えっ? あまり無駄遣いは……」
「無駄遣いじゃないよ。女の子は可愛い服着た方がいいんだよ」
 ルアトがリルを引っ張る形で服屋に入る。リルは村にいた時と同様の質素な服だった。彼女を可愛くして普通の娘のようになってほしいと、ごく個人的な願いを抱いていた。
「でも……」
「ねぇ、リル。皆いろんな服を着ているよ。リルだって可愛い服着てごらんよ。ここなら何を着たって、誰も文句言わないから」
 確かに皆、慎ましくありながらも色鮮やかに、思い思いの服装をしている。耳や首元にも飾りをし、髪にも飾りやリボンを付け、頬や唇に紅をさし化粧をしている。
 リルが顔をさらしても、道を歩いても誰が文句を言うわけでもない。リルは黙り込む。
「リル、こういう服も似合うと思うよ」
 ルアトは丈の長いワンピースを手にしている。長袖は袖口がゆるくなってレースがあしらわれ、ウエストがくびれたデザインだった。ほうっと見つめていたが、我に返り、両手を振って赤面する。
「えぇ、私じゃ、む、無理むり」
「無理じゃないよ。似合うと思うんだけどな。これは旅には向かないか。でも、やっぱり可愛い服着た方がいいと思うなぁ」
 旅もあるので、とドレスはやめて、ブラウスとスカートを買ったがリルはスカート丈が短いと泣き言を言っていた。顔を隠したがるリルに、顔を隠すためのマントは禁止する。




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● COMMENT ●

こんばんは。

異性との二人きり旅…訳ありでも心躍りますよね。
私も美少女と旅をしたいものです。で、自分好みの服を勧めたい\( *'ω')/

今週も寒さが厳しいですが、お互い体調には注意しましょう。

あとリンクさせていただきました。
こちらでも、いつお願いしようかなと考えていたところだったので(←へたれでございます)
ありがとうございました。

では、失礼いたします。

ひもたかさん

コメントありがとうございます♪
そしてリンクもありがとうございます(*´ω`*)

二人旅なのに色恋沙汰がないというのもつまらないものですよね(違
のんびりと旅をする感じです(*´ω`*)

今週末も寒くなるとの予報で心配しています(;´Д`)
風邪、インフルには気を付けましょう(`・ω・´)ビシ

>「このパン半分にしようか」
「じゃあ、これも半分」

こういうの、大好きです。
助け合う、分け合う、
悲しみは半分に、喜び二人で。

いつもポチ逃げですいません。
応援して帰ります。
ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡

雫さん

コメントありがとうございます♪

いろいろと半分、お互い気を遣いあっている姿が
初々しくて不器用で可愛い頃です(*´ω`*)

いつもありがとうございます♪


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オリジナル中心でお絵かき。たまに版権絵。
そしてぼちぼち文章を。
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