【Cry*6】3-2、追求

2017.03.23 00:00|【Cry*6小説】第3章
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3-2、追求

 隻眼の騎士は団長でありカイトと名乗った。カイトは見習い含め十五名ほどの騎士を引き連れていた。一団はひらけた場所を選び、テントを組み立て始める。この辺りには町も民家もない。野営して炊き出しを始めるそうだ。
 彼は簡易テントにの一つに三人を招いた。折り畳み式だが椅子に卓もあり、卓上には葡萄酒と簡単なつまみも用意されていた。リルとルアトはテント内の豪勢さに吃驚して立ち尽くす。レイリアは勧められるまま席に座っている。酒瓶を手にして、カイトの持つグラスに酒を注ぐ。
「カイト様、あの、どうして私たちのことを?」
 ルアトが珍しく緊張していた。人当たりがいいルアトが緊張するなんて、と自分のことを棚に上げ、リルが不思議に思った。
「様とか付けるな。楽にしてくれ。まあ座れ、座れって」
 ルアトがリルを促して慌てて席に座った。
「俺たちは、光の魔術師に襲撃された村へ偵察に行ってきた帰りだ。帰りがけに寄った先々で、お前たちのことを聞いて追ってきただけだ」
「村……。あ、あの、聞いてって……?」
「とある村で、怪我を負った男が魔術を使える娘に助けられた。その男と共に、娘は姿を消した。湖の神殿を光の魔術師が襲撃した時、都が炎に巻かれたが、その炎が雨によって消えた。湖の乙女の奇跡が起こった場所には黒髪の娘と男がいた、と」
「……」
「宿では大雨の中、若い男女の客の元に美しい娘が現れたと言っていた。家出したどこぞかの美姫ではないかと噂になっていたそうだ」
「女将さん……」
 ルアトは頭を抱えた。口止めはしなかったし、何より世話になったので文句は言えない。
 レイリアは笑顔だったが、二人は青ざめ、体を強張らせる。
「別に捕まえるわけじゃない。興味があって探していただけだ」
 グラス中の葡萄酒を揺らしながらカイトが静かに言った。
 興味……ルアトが呟いた。
「お前は、魔術師か? 杖を構えていたが」
「……私は……じゃ、ない、です」
 顔を上げずに小声でぼそぼそと答えるリルにカイトが顔をしかめた。リルの横で、ルアトが口を結んで苦笑を堪えた。彼女は人見知りだった。特に成人男性に。
「彼女は――リルは、魔術が使えますが。魔術師と言うほど魔術に詳しくないんです」
 ルアトが助け船を出した。
「俺は、リルと旅をしています。俺の住んでいた村は、カイトさんが行った、光の魔術師に襲われた村です。
 お城から兵隊が来ていました。村では皆さんによくしていただいて、隊長には、とてもお世話になりました。俺だけ……命が助かったんです。隊長の手紙を預かって、逃げてきました。その手紙を渡すため、お城へ行く途中でした」
「ルアトはあの村の生存者だったのか。皆亡くなってしまったと思ったが、一人でも助かって良かった」
 ルアトはカイトに手紙と一緒に布に包まれたものも渡した。
「これは?」
「隊長さんに、頼まれました。これが死んだ証、になるって」
 布をめくってカイトは言葉を失う。フィブラだった。手紙を開いてゆっくりと読む。読み終えて顔をあげた。
「すまなかったな。ありがとう」
 目を細め、口元を緩めたカイト。労いの眼差しにルアトは首を振って俯いた。カイトの沈んだ声にリルがそっと視線を上げる。
「私は湖の乙女でした。生贄になったことになっているので、行くところがなくて一緒させていただいてます」
 カイトの酌をしながらレイリアがふっくらと微笑んだ。
「最後の湖の乙女だったのか!生きていて良かった。国王も喜ぶ」
 カイトの顔をじっと見つめるレイリア。その二人の距離にリルは顔を赤くし、また俯いてしまう。
「どうして王様が、喜ばれるの?」
 レイリアは口元に指を当て、首を傾げた。
「レイリアに会いたがっていたからな」
「私のことを憶えていらっしゃるの?」
「湖の乙女のレイリアの可憐さは忘れられないそうだ。手紙は俺が預かるが、お前たちも城へ来てくれ。礼をしたいし話を聞きたい」
「はい」
 二人が返事をした。
 夕食までゆっくりしてくれ、とカイトが立ち上がり、テントを出ようとする。レイリアも付いて行こうとしたが、それを手で制止する。
「慣れない旅で疲れているだろう。のんびりしていてくれ」
 その言葉にレイリアは微笑んで頭を下げる。
「あ、あの」
 リルがカイトを呼び止める。呼び止めたものの、どう話していいかわからず、困り顔でルアトに助けを求める。ルアトは溜め息を吐き、カイトは不機嫌な視線をリルに向ける。
「俺たち、リルのお祖母さんの手紙を渡しに……宮廷魔術師の方に会いに行くつもりなんです。ウルリーカ様、いらっしゃいますか?」
「いるけど。で、リルの婆さんって誰なんだ?」
「えっと、ベアトリスさんです」
 カイトが吃驚したあと笑顔になった。リルは体を固くしたままだ。
「水の大魔術師のベアトリス様! あの方の孫なのか?!」
「孫だけど、血は繋がってないそうです」
 と、ずっとリルの代わりにルアトが話している。
「血は繋がってないのに魔術は使えるんだな。そうか、ベアトリクス様はお元気か?」
「……亡くなりました。遺品の扱い方を、宮廷魔術師のウルリーカ様に教えていただきたいんです」
 だよね、と横のリルに確認すると、うつむいたまま、リルが頷いた。
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コメント

うん、確かに怖くなかったようです。
ww
でも清水結衣さんは、正直者で、親切ですね。
正直にコメントしないで、「実は私も心配です」
「どうなるんでしょう」、とか書いたら
おっかなびっくり、読んで、あとで安心、したかも。ww

でも、それが出来ない、いい人なんでしょうね。

いつも訪問ありがとうございます。
時々ポチ逃げですいません。
応援して帰りますヽ(≧▽≦)/ポチ☆

雫さん

コメントありがとうございます。

そうですねw
あまり本当のことを言ったらネタバレになってしまいますよね(;^ω^)
今度からはちょっと煽り気味に?行こうと思いますw

いつもありがとうございます。
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