【Cry*6】3-3、こわいもの

2017.03.30 00:00|【Cry*6小説】第3章
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村


3-3、こわいもの

 三人は夕食を馳走になる。焚き火の周りに簡易の卓と椅子が並べられていた。大鍋をかき混ぜ、騎士見習たちが調理と配膳をしていた。
「ほら、リルも一緒に食べよう」
 テントの傍に隠れるように立っていたリルを見つけたレイリアが立ち上がる。手を引いて皆の輪へと連れて行く。ルアトは騎士たちに雑じって食事を始めていたが、リルに気付いて手を振る。
 リルは緊張した面持で、配膳をする騎士見習いからスープとパンの載った皿を受け取った。慌てて礼を言い、ルアトのところに掛けていく。ルアトは隣の椅子にリルを招いて座らせる。
 ルアトは楽しそうに騎士たちと話している。同年代と話すのが久しぶりだからか楽しそうだった。たまに話しかけられ、リルは慌てて話せないようだったが、ルアトが助け船を出し、会話にも加わっていた。強張ってはいるが笑みも浮かぶ。
 カイトは不機嫌そうにその様子を見ている。皆とは離れた席で酒を飲んでいた。横にはレイリアがいる。
「あの、俺、睨まれている気がするんですけれど」
 カイトの視線が気になるルアトがそっともらす。騎士たちは苦笑しながらリルを見た。皆に一斉に注目され、慌てたリルはスプーンを取り落し青ざめた。彼に対して何か粗相をしただろうか。
「カイト様は魔術師好きだからなぁ」
「どういうことですか?」
「いや、まぁそういうことなんだよね」
「気になるんだと思いますよ」

 レイリアはカイトの横で酒を注いでいた。始終不機嫌なカイトを不思議がる。
「カイトはリルのことが気になるの?」
 大きな空色の瞳を瞬かせてレイリアが首を傾げる。
「あいつはなんであんなに挙動不審なんだ?」
「リルのこと? リルはおとなしくて少し自信不足なの。でも魅力的で笑顔は素敵だし、とても優しい強い子なの」
「あいつらは夫婦か?」
「違うちがう。でもどうなのかなぁ」
 レイリアは口元に手を当てて含み笑いをする。あの二人の間には不思議な空気が流れている。
「お前もルアトたちのところへ行ったらどうだ?」
 騎士たちが集う卓の方を見て、レイリアが目を伏せた。時折自分に注がれる視線を感じた。
 先程、ルアトが自分を含めて二人を紹介した時に、レイリアが湖の乙女だと聞いて、騎士たちの間にどよめきが起こった。「湖の乙女」という存在を、騎士たちは稀有な眼差しで見ていた。
「湖の乙女は一番偉い方に奉仕するべきかなと思って。皆、私に緊張しているみたいだから、こちらにいた方がいいのかなって」
 目を細めて俯くレイリア。
「俺たち下々の者にとっては、湖の乙女は神に仕えると言われている尊い存在だからな。レイリアの気さくさなら緊張も解けるだろう。俺はただの騎士だ。何かする必要なんてない。お前が過ごしたいように過ごせばいいんだぞ」
「ありがとう。でも、ちゃんと好きにさせていただいてます」
 レイリアはカイトの耳元に唇を寄せてささやく。あえて体を寄せる。
「あなた、見た目より紳士的で優しいのね」
 カイトはレイリアとの距離を取っていた。
「さあ、どうだかな」
 目を細め、カイトは意地悪く笑ってみせると、レイリアも満面の笑みで応えた。
 ぴょこんとレイリアは立ち上がる。カイトと共に騎士たちのテーブルへと向かう。
「楽しくやってるか?」
「はい」
 酒も入り、騎士たちもルアトも笑顔だった。丁度リルの後ろにカイトが立っていた。
「リルも緊張は解けてきたのか?」
 カイトは何気なくリルの頭に手を載せ、髪をくしゃくしゃにした。その瞬間、リルは椅子から転げ落ち、地面に蹲り頭を抱えた。その様子に慌ててルアトがリルの横にしゃがんだ。
「どうしたの、リル?」
「……おい、大丈夫か?」
「な、なんで泣いてるの?」
 カイトもレイリアも周りの騎士も何が起きたのか解らず、呆然としていた。リルは泣いていた。ルアトがリルの顔を覗き込んだ。
「どうして泣いているの?」
「だって……」
 怖い、とルアトにだけ聞こえる声で言った。


「あのカイト様が、謝るためだけにあそこまでするなんて」
 騎士たちが荷馬車を眺めながらにやにやしていた。白い布の幌が張ってある荷運び用の馬車だった。馬を走らせながら騎士たちがひそひそと話している。
「カイト様が自分の馬に乗らないなんてなぁ」
「あら、カイトが馬に乗らないって、そんなに珍しいことなの?」
 レイリアはすでにカイトのことを呼び捨てにしていた。そのことに吃驚しつつも、気さくに呼んでもらえる羨ましさを若い騎士たちは感じてしまう。
「そうですよ。馬車の御者席に乗るなんて、荷運びをしていた見習いの時ぐらいじゃないですか。……あ、あのレイリア様、あのちょっと、いや、すごく体が当たってしまうのですが」
 レイリアは騎士の馬に乗せてもらっていた。初めての体験に笑い声も上げている。その様子を見ている方がひやひやした。
 若い騎士は顔を赤らめるが、レイリアは気にした様子もなく騎士の腰に手を回していた。
「落ちたら困るもの。体が当たっても仕方ないでしょ?」
 カイトの愛馬の綱を引きながら、レイリアたちの横を並走する騎士が羨ましそうに見ていた。
「カイト様、結構優しいからなぁ」
「そうねぇ、ああいう殿方は優しかったりもするのよね」
「あんなカイト様なんてめったに見れないですよ」
 
「で、お前はどうして端っこに座るんだ」
 だって……とリルは俯く。
 カイトが手綱をとる荷馬車の御者席。カイトの横にルアト、リルが座っていた。
「俺は怒っていないぞ。……どうしてお前は」
 昨晩のことをカイトは気にしていた。リルはカイトが怒っていると思い込んでいるようで、リルの誤解を解こうとして馬車に乗った。部下に笑われていることも知っていた。
 が、何故か横にはルアトが座っていた。
「すみません、カイトさん。俺、とても邪魔ですよね」
 ルアトが謝罪する。カイトは溜め息を吐き、横のルアトを見る。緊張しているようだが物腰も口調も柔らかい。性格もまっすぐに見えた。穏やかな家庭で育ったのだろうか。面倒見もいいのだろう。夫婦というより二人は兄妹、幼馴染のようにも見えた。
「ルアトがリルを甘やかすから悪いんだろう? 時には怖いものにだって立ち向かうことも必要なんじゃないのか?」
 ルアトは無言で頷いた。その通りだった。それを聞いたリルはさらに震えている。
「……でも立ち向かうのが俺かよ」
「ねぇ、リル、カイトさんは怖くないよ。真ん中に座りなよ」
「でも……」
「村の人みたいにわけもなくひどいことをするような人じゃないよ。口調がきついのは職業柄だと思うよ。俺もいるし、大丈夫だよ。それに、昨日のことは、どう考えてもリルが悪いよ。ちゃんと謝りなよ」
 小声でリルを諭すルアト。横に座るカイトにも聞こえていたが、あえて何も言わず、前を向いていた。村で何かあったのだろうか。しぶしぶルアトと席を変わるリル。
「おい、俺は別に怒ってもいないしお前に悪さをしたいわけでもないからな」
「でも。でも怖い……」
「あのなぁ」
 カイトがリルを見ただけで、リルが体を強張らせる。カイトは息を吐き、なるべく穏やかに話そうとする。
「で、どこがそんなに怖いんだ?」
「しゃべり方……歩き方……。背が高い……睨んでくる」
 ルアトの顔から血の気が引く。
「リル、そんなこと言わないで……」
「それって全部じゃねーかよ」
 呆れたカイトの声にリルは涙ぐむ。その様子にカイトは鼻を鳴らす。
「俺のことは嫌っててもいい。でも、世の中いろんな人間がいるんだ。ガラが悪くても良い奴もいる。少しは慣れた方がいいぞ。いつまでもルアトに頼ってばかりで何も出来ないままでどうする?」
 リルは小さく頷いた。
「それに、誰が何に傷ついているかは他所からはわからないんだ。お前ばかり一人で怖がっていてどうするんだ」
 溜め息混じりに呟いた言葉が、リルの心に引っかかった。
「俺も少しは気をつける。すまんな」
 静かな声での謝罪に、リルが少しだけ顔を上げると、カイトがリルを見降ろしていた。
「ようやく少しだけ顔を見れた。可愛い顔なんだからもっと見せろ」
 意地悪そうな笑みを浮かべるカイトを見て、リルは赤面して手で顔を隠した。
 揶揄いすぎても逆効果かとカイトが視線を前に戻すと、しばらくしてリルがカイトにもたれ掛ってきた。今度は積極的になったのかと横を見ると、意識を失ったリルがカイトに倒れ掛かり、馬車から落ちそうになっていた。カイトが慌ててリルの体を抱きとめる。
 放られた手綱をルアトが掴み、咄嗟に手綱を引き、馬車を停める。
「おい、どうした? しっかりしろ!」
スポンサーサイト

コメント

>しばらくしてリルがカイトにもたれ掛ってきた。
え、どうしたの?って思ったら・・
>意識を失ったリルがカイトに倒れ掛かり
って、なんで、って思ってしまった。

こういうのって、前途多難、って、いうのかな?ww

>今度からはちょっと煽り気味に?行こうと思いますw

さぁ、つづく は どんな言葉になるのかな?wwポチ

雫さん

コメントありがとうございます。

前途多難ですねwどうなるんでしょうねぇこれから( *´艸`)

いつもありがとうございます。
非公開コメント

10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
プロフィール

清水結衣

Author:清水結衣
いつもご訪問いただきありがとうございます。

オリジナル中心でお絵かき。たまに版権絵。
そしてぼちぼち文章を。
プロフ画は笹間シムロさんに描いていただきました
(*´ω`*)

にほんブログ村 イラストブログ オリキャライラストへ
にほんブログ村 イラストブログへ
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ



現在、木曜日に創作物語を予約投稿しています。


ブロとも様&リンク様募集中です♪

最新記事

カテゴリ

月別アーカイブ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

アルバム

カウンター

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
小説・文学
739位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
ファンタジー
17位
アクセスランキングを見る>>

ブログ村