【Cry*6】2-8、本心

2017.03.02 00:00|【Cry*6小説】第2章
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2-8、本心

 徒歩の旅は進まない。レイリアが加わり、彼女のペースに合わせて歩むと時間がかかる。時折、通り過ぎる荷馬車を呼び止め、荷台に乗せてもらうこともあった。二人よりもレイリアがいる方が乗せてもらう頻度は多くなったが、長距離は厳しかった。
 夕闇の中、三人は焚き火に当たって過ごす。リルは目を閉じてルアトの右手を両手で包む。その手元を静かに見つめるルアト。
「それは、何かのおまじない?」
 レイリアにも既に見慣れた光景だった。何気なく訊いいただけーはのに、はっと顔をあげた二人に凝視されて、レイリアは吃驚してしまう。
「いつも二人で何しているのかなって気になってたの。それは、私には出来ないことなの?」
「これは……」
 リルが言い淀む様子を見て、ルアトが明るく話した。
「俺の右手には光の魔術師の呪いがかけられているんだ。その呪いを抑えるために、リルが手を握って魔力を使ってくれているんだ」
「そうなのね」
「怖い?」
 ルアトの手を離しながら不安そうにリルが訊く。横に座ったレイリアは首を振って微笑んだ。
「怖くないよ。リルは優しいもの」
 本心のままを言ったレイリアだったが、リルは不安そうに黙り混む。気まずい空気をどうにかしようと、レイリアはリルの膝の上に置かれた本を覗いてみる。
「リルは何の本を読んでるの?」
「……こ、これは魔術の本なの。魔力が込められた本だからレイリアには読めないよ」
 今度はレイリアが沈黙してしまう。
「どうしたの?」
「私ね、字を読めないの」
「ごめん、そんなつもりじゃ」
 慌てるリルに、レイリアは首を振って笑ってみせる。
「大丈夫だよ。湖の乙女はね、神殿に来るお客様をもてなすことと、……命を捧げることが仕事だったから、文字は知らなくていいって言われていたの。作法だけは学んだけれど。字は学んでないから……本や手紙は読めないし、書けないの」
「今から勉強すればいいんだよ。旅の間だって勉強できるし、教えるよ」
 ルアトの言葉にリルも頷く。本を読んでほしいと言われたのは、人の声を聞いて安堵したかっただけではなかったのだ。気付けなかったことをリルは悔やんだ。
「ありがと」
「……」
「ねぇ、レイリア。湖の乙女はさ、いつも何をしていたの? 作法ってどんなことを勉強したの?」
 暗くなった雰囲気を消そうと、焚き火に枝を投げ入れつつ、ルアトが話を変えた。
「最後は私一人になったけれど、湖の乙女が何人もいたころは、偉い方が遊びにいらして。宴が開かれるとその席でもてなしたの。
お酌したり、舞ったり歌ったりしたの。王様もいらっしゃったのよ。勉強したのは美容や化粧のこと。お歌や舞い、楽器のお稽古事もしていたの。いろいろな行事や席でのしきたりも勉強したし。あとはね、夜の寝室で殿方の喜ばせ方もお勉強したかな」
「そんなことまで?」
 唖然とするルアト。リルは赤面し困惑している。その中でレイリアだけがいつもの笑顔だった。
「でも、実際にはまだしていないの。だって湖の神様に嫁ぐことになっていたから。知っているからリルにも教えてあげるね」
 無垢な笑みを浮かべるレイリアに、リルは耳まで赤くして全力で断る。膝の上の本が落ちた。
「い、いいよ。そ、そんなこと」
「だってルアトとそういう関係なんじゃないの?」
「ち、違うよ!!」
 リルが声を発する前に、ルアトが強く否定する。
「そうなの? いつも手を握っているのは呪いのためだけじゃないような気がするんだけどなぁ。リルはルアトのこと好きなんでしょ?」
 頬に手を当て笑顔を浮かべるレイリア。その横で顔を赤くしたリルは、何も言い出せず口をぱくぱくしていた。
「いつかはルアトのところにお嫁に行くんでしょ? だったら知っておいた方がいいなぁと思うの」
「レイリア、それは……」
 困惑するルアトの様子を横目で見て、リルは俯いてしまう。
「わ、私はそんな、そんなこと思ってないし……そんなこと思ったら、……ッ、ルアトが嫌な思いするからそんな……」
 リルが肩を震わせた。膝に涙の粒が落ちる。その様子に、レイリアがリルの膝に手を載せて揺すった。
「り、リル? ごめんね。そんなに深く考えないで? からかっただけなの……ごめんなさい。ねぇ、リル、泣かないで?」
 レイリアも泣きそうになりながらリルに縋りつく。ルアトは二人の様子を見ていた。
「私なんかに……好かれたら、皆、困るから……っ。私は……わたし……は」
「そんなことないの! リルが思ってる以上にリルは素敵なんだよ。リルに好かれたら嬉しいし、嫌われたら悲しいのよ。泣かないで。ねえ、やだよ。リル」
 落ちた本を拾い、土埃を手で払いながらルアトがリルに声を掛ける。
「リル、俺はいろいろとあったから、結婚は……考えられないけれど……レイリアと同じようにリルのことが好きだよ。これは本当だよ」
「でも……」
「俺たちは助けてくれた恩だけでリルと一緒にいる訳じゃない。嫌いだったら一緒に旅には出ないだろ? もっと自信を持ってよ、リル。俺たちが一緒にいたいんだから」
 ルアトの差し出す本を受け取り、リルは涙を拭いながら何度も頷いた。レイリアがリルの背を擦っていた。
「もっと自信を持つね」とリルは二人に笑いかけた。まだ涙は零れていたが、リルの笑顔が見れてレイリアも安堵した。
 ルアトはそっと右手を見た。旅でどんなに埃まみれになろうとも、彼女は毎日、清潔な包帯を巻いてくれている。その包帯を巻かれた右手を見ながら、誰にも聞こえない小さな声で呟く。
「リルに好きになってもらえるなら、俺たち……俺だって嬉しいよ」
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コメント

3人旅、野宿心配だな。また試練が待っているのじゃないの?

いつも訪問ありがとうございます。
ポチ逃げで申し訳なく思っています。
応援して帰ります。ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡

雫さん

コメントありがとうございます。

いえいえ試練はないのですw
女性二人もいたら野宿は怖いので、こっから旅はすいすいと進んでしまいますw

いつもありがとうございます<(_ _)>

でも、考えたら、ネットって、やっぱり思い白いですね。
それは、
作者とこんな風に、コメントで会話が出来るということ。
質問に答えてくれたり、作者の心が分かったり、すごいなぁと思います。

いつもていねいな、お答えありがとうございます。

いつも訪問('-'*)アリガト♪。。
応援して帰ります、ポチ
ニャハハ(*^▽^*)

雫さん

不思議なものですよね。ネットって。
書いたものにすぐに言い訳できちゃったりもするわけで(笑)
いいのか悪いのか。
楽しめているうちはいいことですよね♪

いつもありがとうございます<(_ _)>

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