【Cry*6】3-5、咎められる

2017.04.13 00:00|【Cry*6小説】第3章
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3-5、咎められる

 闇の中、カイトはひたすら馬を走らせた。激しい揺れにも関わらず、リルは一度も目を覚ますことなく、昏昏とカイトの腕の中で眠り続けている。
(よくない魔術の使い方をしていたな。頼む、無事でいてくれ……)
 翌朝には城下町へと着いた。市を始めようと店が並び始め、人々が行き交い始めた城下の大通りも、カイトは速度を落とさずに馬で駆け抜けた。通りは騒然としたが、そのまま城門まで馬を走らせる。部下の出迎えも無視し、馬も乗り捨てるように放り、カイトは城内へと急いだ。
「か、カイト様?」
 城の者もカイトのただならぬ様子に慌てる。たまたま出会った魔術師見習いにカイトは声を掛けた。
「ばあさんは部屋にいるか? いないなら至急呼んで来て欲しい」
 王への挨拶もなしで、カイトはリルを抱いたまま、勝手知ったる城の廊下を歩いた。ノックもなしに宮廷魔術師の部屋へ入るが、部屋には誰もいなかった。古書が積み上げられた大きな木の机に開いたままの本、本の横に置かれたティーカップからは湯気が上がっていた。
 見知った場所へと戻り、一晩中馬を走らせた疲れがどっと出た。肩で息をしながらカイトは抱いたリルの顔を見下ろした。相変わらず眠っている。静かにドアが開いた。
「おや、カイトかい。どうしたんだい? 鎧もつけないで珍しい。今日は可愛らしい娘をお持ち帰りかい?」
 ゆるやかな錆臙脂色のローブを纏った白髪の老婆が、のんびりと部屋に戻ってきた。宮廷魔術師のウルリーカだった。
「……持ち帰りでも何でもいい。ばあさん、こいつの体を診てくれないか?」
「もしかしてあんたの子供でも身籠ったのかい? 私は医師じゃあないよ」
 ふふふと笑い、ドアを閉める。それと同時に部屋のランプに一斉に灯りがともった。
「違う。こいつは魔術を使うんだが、使い方を間違っていたらしくて……眠ってばかりで体が冷たいんだ」
 カイトの真剣な眼差しに、ウルリーカも魔術師の顔になる。カイトはリルを部屋のソファに寝かせると、ウルリーカはリルの胸元に手を翳す。
「この子は魔術師なのかい? どうしてこんなことを……」
「助かるか?」

 昼前に騎士団とルアトたちが城へと到着した。
「カイト様!!」
 くたびれた一行はウルリーカの部屋に向かう。カイトが見知らぬ娘を連れて、ウルリーカの部屋に行ったと城中で噂になっていた。
「早かったな、急いで来たのか?」
 ウルリーカの部屋で皆を迎えたカイト。ウルリーカと共にテーブルに着いて侍女の淹れるお茶を飲んでいる様子が、皆に安堵と怒りとを抱かせた。
「当たり前ですよ! カイト様の後を追ってきました」
「ちょっと、カイト! 置いていかないでよ! しかもあんなこと言い残して行っちゃうなんてひどいわ!」
 涙目のレイリアは顔を赤くして地団駄を踏んでカイトを睨む。
「おいおい、私の部屋で騒がないでおくれ」
 しばらく皆の様子を眺めていたウルリーカに叱られ、一同は鎮まる。騎士見習いの青年が、ルアトとレイリアに彼女が宮廷魔術師のウルリーカだと説明した。
「あの、お嬢さんは?」
 騎士の一人が心配そうに言う。ルアトとレイリアがソファに寝ているリルを見つけ、駆け寄った。
「リルの、容態はどうなんですか?」
 カイトの代わりにウルリーカが静かに答えた。
「今のところ大丈夫だよ。だいぶ、命を削っているけれどね」
 その言葉の重さにルアトが言葉を失い、膝を付いてうなだれる。
「ばあさん、こいつは、リルは俺の屋敷に連れて行こうと思う。あとで来てもらえるか?」
「そうだね、お城には泊められないからね。あんたの屋敷がいいだろうね」
「ん? どういうこと?」
 レイリアが首を傾げる。
 光の魔術師の件もあり、見ず知らずの者、特に魔術師を泊めるとなると、いささか問題だった。
「国王への挨拶はリルが回復してから行こう。俺の屋敷に来てほしい。客人としてもてなそう」

 ルアトとレイリアはカイトに連れられて、城壁の中にある屋敷の一つに案内される。カイトの領地は城から離れており、城に滞在時はこの屋敷を別宅として使っているそうだ。豪華さは城には劣るが、煉瓦造りの立派な建物だった。長い廊下の先をレイリアが興味津々に背伸びして眺める。騎士たちが荷物を運んでくれた。カイトはリルを客間へと運び、侍女たちに看病を任せた。
 三人は着替えを済ませ、簡単に遅い朝食をとった。落ち着かず、その後はリルの元にいた。
 レイリアが意識のないリルに寄り添って、リルの手をずっと擦っていた。ルアトも二人の傍にいた。
「ん……」
「リル? 目を覚ました?」
 レイリアが嬉しそうにリルを見る。笑顔のレイリア、安堵したルアトの顔、辺りを見まわしてリルは不思議そうな顔をする。
「ここは……? 私、どうしたんだっけ? 皆もどうしたの?」
 状況が解らないリルは眉をしかめたままゆっくりと体を起こす。レイリアがリルの背にクッションを当てて、楽な姿勢にしてやった。
「憶えてないの? 宿屋で倒れたの。カイトが急いでお城まで運んでくれたのよ。リルの命が危なかったのよ。リルもちゃんとお礼してね」
「お城? ここはお城なの? え? 命って……」
 困惑するリルは、壁に寄りかかって静かに佇むカイトに助けを求める。
「目が覚めてよかった。楽に過ごしていてくれ」
 カイトは笑みを浮かべ、それ以上何も言わず、静かに部屋を出た。

 その日の午後、カイトは偵察隊の全滅の件、ルアト、レイリア、リルの件を国王に報告に行く。現国王・エドヴァルドは静かにその報告を聞いた。
「そうか、生き残ったのが一人……」
「彼――ルアトは隊長の手紙を預かっていました」
「そうか。ルアト君に礼を言いたい。レイリアも無事だったんだね。それは良かった。しばらくカイトのところにいた方がいいかな」
 カイトが頷く。カイトと年が近い王は、玉座で肘をつきながら目を細めた。口元には笑みが浮かんでいた。
「王、どうされたんです?」
「リル……か」
 カイトが不思議そうに見つめる。王は懐かしそうにその名を呟いた。

 リルが目を覚ましたことを伝えると、ウルリーカはカイトの屋敷へと来た。客間でレイリアたちと過ごしていたリルの顔を見た途端に怒り出す。
「あんたはなんてことをしているんだい! こんなことをしていたら死んでしまうよ」
 突然のウルリーカの叱責に、リルだけでなく皆が呆気にとられた。ウルリーカを連れてきたカイトも唖然としている。
「ただ、呪いを、抑えようとして……」
「なんて馬鹿なことを! 魔術を使う基礎がなってないよ。下手に魔術が使えるからあんたは魔術を使っていたんだ。使える魔力の量を超えれば、今度はあんたの命を削るんだよ」
 ルアトとレイリアが青ざめる中、理解できないのか、リルは首を傾げている。
「落ち着いてくれ。このリルは、ベアトリス様の血のつながらない孫なんだ。……魔術の使い方を教えていないんじゃないかと思うんだが」
 カイトの言葉にウルリーカが黙り込んだ。リルは、魔術はほとんど独学です、と話した。
「お前はベアトリスの孫だったのか……そうか、リル……。リル……それで……」
 ウルリーカの声が掠れ、突然に涙を溢した。
「どうしたんだ? ばあさん……」
 肩を震わせるウルリーカをカイトが心配する。
「すまないね。あのベアトリスが連れて来た子どもが……あの幼子がこんなに大きくなったなんてね、嬉しくてね……」
 リルが目を瞬かせる。カイトたちも意味が解らずに首を傾げた。
「あの……私を、知っているんですか?」
「知っているよ。ベアトリスと一緒にしばらくこの城にいたんだからね」
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コメント

おぉ、再会の話になっていく、それも涙の。
いい意味で、先の予測が全くできなくなった。
でも、その方が面白いですよ。。

応援して帰ります。ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡

雫さん

いつもコメントありがとうございます。

物語がちゃんと進むように頑張ります(*‘ω‘ *)
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清水結衣

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オリジナル中心でお絵かき。たまに版権絵。
そしてぼちぼち文章を。
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