【Cry*6】3-6、宮廷魔術師

2017.04.20 00:00|【Cry*6小説】第3章
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3-6、宮廷魔術師

 食堂でウルリーカを含め皆で夕食を囲んだ。騎士見習いの青年がドアの傍に立っている。食後の紅茶が終り、ひと段落すると、リルは持っていた祖母の遺品をテーブルに載せ、ウルリーカの前にそっと差し出した。開け方の分からない箱と古びた本と。
 リルはウルリーカに失礼を詫びると、ウルリーカは笑っていた。
「さっきはすまないね。カッとしてしまってね」
「私こそ申し訳ありません。助けてくださってありがとうございます」
 笑みを浮かべながら丁寧に話すリルを、カイトが静かに見ていた。
「ベアトリスは私の友人であり先輩にあたるんだよ。今は無くなってしまったが、城下にあった魔術学校では共に学んだ仲だったんだ。学校を出た後は二人とも研究や旅をしていてね。三十を過ぎてからこの城の宮廷魔術師になったんだよ」
 魔術学校でもベアトリスは優秀で、天から降りた精霊「水の戦士」の化身と噂されていたという。それだけの魔力を持ち、魔術を使っていたという。そのベアトリスの幼馴染であったウルリーカは彼女に憧れて同じ道に進んだと話した。ウルリーカの魔力は風。カイトと同じだそうだ。
 ウルリーカは魔術嫌いだった先代の王にも信頼されていたという。
「十五年前になるかね。ある日、突然、『大事な人を迎えに行く』と言って、ベアトリスは城を出たんだ。誰を迎えに行くのかすら分からず、困惑した私たちのもとにあんたを連れて戻ったんだよ。しばらく二人で城にいてね。ベアトリスは宮廷魔術師を辞めると言った。そして彼女の仕事を私が引き継いで、ベアトリスは城を去ったんだよ」
「私は闇の魔力を持っているから、怖くて捨てられたんです。そんな私をおばあちゃんは拾ってくれたんです」
 俯きがちなリルが自嘲気味に話す。
「夜は怖くないわ。優しいもの。素敵な力よ」
 レイリアがリルに微笑んだ。
 ――この子はね、夜の女神様だよ。とってもあたたかくて優しいんだよ――。
 ウルリーカは、赤子を抱いたベアトリスが嬉しそうに話していたことを思い出した。カイトは吃驚したが、何とか平静を装った。
「闇の魔力だけが怖いわけじゃないよ。どの魔力も同じさ」
 どこで拾った赤子かはウルリーカにも話さなかったという。ベアトリスはその赤子を孫として育てることにし、魔力を封じて生活に支障がでないようにしたという。
「しかし、少しだけ魔力を封じ損ねたと話しておった。それだけ孫の力が膨大だったせいらしいが」
 リルに魔術を教える前に亡くなった。闇の魔術をあえて教えなかったのかもしれないとウルリーカは話した。それでも、力を封じた珠と宮廷魔術師への手紙を準備していた。古びた本は闇の魔術書だった。
 布張りの箱の読めない文字は二人の暗号だった。幼い頃から仲が良かった二人が考えた、秘密の手紙の送り方だったらしい。

 ウルリーカが言葉をなぞると布張りの箱は簡単に開いた。中には黒い珠と手紙が入っていた。
「これがリルの力を封じた珠だね。命の半分になるのかな」
 水晶玉のようだったが中は漆黒の闇、光が星のように煌めいていた。手のひらに乗る大きさの珠をリルがそっと持ち上げる。
「夜空みたい。キレイ」
 レイリアが珠を覗き込みうっとりしている。ルアトもカイトも身を乗り出して見た。
『この手紙を読んでいるとしたら、あの村を出たのだろう。時期が来たんだろうね。あんたがここを出るきっかけが早く来ると良いと願っているよ。そうさね、きっかけは出来たら男がいいね。
 頑固な孫を連れ出せる男。でもただの優男だったらがっかりだ。あんたに幸せを与えてくれる良い人が見つかると良いけどね。あんたの力を理解してくれる、度胸のある良い人がね』
 祖母の言葉だった。声に出したら涙がにじんだ。カイトもルアトも静かに聞いていた。
「素敵なお祖母ちゃんね」
 リルの横でレイリアが微笑む。これは普通の文字で記されていたが、レイリアに読んでほしいと頼まれた。
「なんてわがままな手紙。昔のまま。ずっとあの家のあの部屋にいてくれたのかな」
 リルがルアトと共に旅立つ時分まで、ウルリーカはベアトリスの水の魔力の気配を感じていたそうだ。まさか亡くなったとは思っていなかったらしい。
「光の魔術師のことも予知して、魔力を残してあの場所で孫を護っていたのだろうね。――ただ、あんたがまさか力を封じたままで、魔術を使うとは思ってなかったんだろう」
 孫娘が命を削ってまで力を使うことまでは。そこまでやさしさを持っているとは思わなかったのか。魔術を使えることに罪悪感を抱くとは思わなかったのかもしれない。そして、村人の態度が変わることも。
「この珠の力をリルに戻せば、何とかなるのか?」
「そうだね……危険だが、たぶん命も戻るだろう。あとは命を削る魔術の使い方をしているから、魔力を正しく使えるようにしないとだね。闇の魔術書もある。私としては魔術を教えたいが、リルはどうだい?」
「私は……魔術で何をしたいのか、まだわからないんです。でも、この力で何が出来るのであれば……」
「リル。自分の力のことを勉強したらどうだ? 俺も少しなら魔術を教えられる」
 リルがあからさまに嫌そうな顔をするので、カイトが睨んだ。
「カイトももっと勉強しておくといいよ。呪いがかかってるんだからのう」
 三人が吃驚する中、カイトは不機嫌そうに目を細める。
「カイトさんが呪い?」
「……少しな。気にするほどのもんじゃない」
 ウルリーカがルアトとレイリアの顔を見た。
「誰でも魔力は持っているんだよ。あんたたち二人も勉強すれば魔術を使えるようになるよ」
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コメント

色んな意味で、「良い方向に進んでいるようで、安心しました。
でも、すごいね、これだけの長編を書けるなんて。

いつも訪問ありがとうございます。
応援して帰ります。ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡

雫さん

良い方向かどうかは分かりませんよ……(笑)
|д゚)!

脳内妄想をアウトプットしている状態で、今回は終わりまで行きたいのです……!
途中で止まったらまたやり直しになるのです(;´Д`)

え、本当?良い方向じゃないとしたら・・悪い方に?
全く悪い想像をしていなかったので、絶句。。

応援して帰ります。ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡

雫さん

コメントありがとうございます。
さて、これからどうなるでしょう……(*‘ω‘ *)

いつも訪問ありがとうございます。
応援して帰ります。ヽ(≧▽≦)/ポチ☆彡

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清水結衣

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