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【Cry*6】6-7、黎明の神官

2017.12.28 00:00|【Cry*6小説】第6章


6-7、黎明の神官

 午前の祈りの間での時間が無事に終わる。安堵の表情を浮かべたリルと、いつもと変わらぬ様子のユーファが話をしながら会議室へ向かうと、議会室からカイトが出て来るのが見えた。
「あら、どうしたの? 長老に用事? 議会に用事?」
 巫女の姿のユーファが不思議そうな顔をする。ユーファや議員たちは、議長を務める老人を「長老」と呼び、慕っていた。カイトは手に持った古文書を二人に見せる。
「書庫に本を借りに来った後、中を見せてもらいに寄っただけだ。祈りの間の仕事は無事に終わったのか? これから会議だろう」
 首を傾げるリルの横で、ユーファはにっこりと微笑んだ。
「ええ、つつがなく。私はお邪魔の様だから先に……」
「ちょっと、ユーファぁ……!」
 カイトがリルを待っていたと思い込んだらしい。リルが引き留めようとするより早く、ユーファは嬉しそうに小走りで議会室に逃げ込む。
「だから、寄っただけと言ったろうに……」
 カイトの呆れ声が、手を伸ばして空をつかむリルの耳に届いた。興味津々の笑顔の議員たちが、二人の横を通り過ぎて議会室へと入っていく。恥ずかしさにリルは俯いて、カイトは素知らぬ顔で皆の囁きをやり過ごした。
 ユーファと同じく、リルも朝の神殿での儀式の格好のままだった。ヴェールを被ったリルの顔を見下ろしていたカイトは、無言のままでリルのヴェールをそっとめくり、リルの赤い顔を覗き込んだ。
「え。や、やだ! 何するの?」
「その格好も可愛いじゃないか。……ヴェールを外して顔を見せたらいいのに」
 紺色の星の乙女のドレス姿のリルは、ますます顔を赤くしながらヴェールを深く被り直して震えた。
「カイトのバカバカっ! 恥ずかしいこと言わないでよ」
「リルは可愛いんだから、もっと顔を見せた方がいいと思う」
 真面目な顔で言いながら、再びヴェールをめくろうとするカイトの腕を掴み、リルは頬を膨らませる。
「恥ずかしいことやめてよ。……嘘つくし」
「嘘じゃない。長老と話していたんだ」
「そっちじゃないよ……!」
 小首を傾げ、暫し考えるカイト。リルは膨れっ面のままでカイトを見ていた。
「リルは可愛いだろう?」
「そういうこと言わないで!」
 リルに文句を言われながらも、カイトは掴まれたままの腕を動かし、ヴェールを取ろうとする。リルは必死に両手でカイトの腕を掴んでいる。
 その様子をドアからそっとユーファと議員たちが覗いていた。
「リル、私は調子いいし、カイトといるなら会議には出なくても……」
「私も会議に出る! ……出ます!」
 ユーファの言葉に、リルは慌てて議会室に駆け込むと、議会室から笑い声が起こった。冷やかしではない温かい笑い声に、リルが愛されていることを感じ、カイトは安堵する。開いたドアの隙間から、リルは頬を膨らませて精一杯カイトを睨んだ。その顔を見てカイトが吹き出すと、リルはさらに顔を赤くして勢いよくドアを閉めた。
 カイトはしばらく笑顔のままドアを眺めていたが、廊下を歩きだした時には浮かべた笑みは消えていた。

 議会が始まる前の議会室。カイトは議長――長老から黎明の神官について話を聞いていた。彼はユーファだけではなく先代、先々代の巫女に仕えていたという。以前は議会は無く、彼は神殿の相談役だったらしい。
「我々は神官の存在を知りませんでした。噂では神官は先代の巫女の時からいたと聞きました。黎明の神官とは、一体どんな方だったのですか?」
 カイトは単刀直入に黎明の神官のことを問う。カイトの真っすぐな視線から長老は目を逸らし、苦々しい顔をした。
「ここにきてカイト殿に隠しても仕方ない……クレプスクロム王国の国王はご存じなのでしょうな。黎明の神官は月の巫女に対して政の助言をする存在。正体は不明です。滞在は不定期で神殿の内にだけ存在するもの……です。先代も、今の神官も、レグルスと名乗っておりました」
「レグルス……昔の星の名ですね」
「流石、よくご存じで。彼らの本名は知りません。先代の神官は不定期に長期滞在しましたが、今の神官は滞在は年に二度、春分と秋分のあたりに一週間ほど神殿に滞在していました。何処から来ているかは定かではなく、夜明けの国の、もっと奥から来たと話していました」
「アウローラ国の奥? 奥には楔の隔たりがあるだけでは……」
 不穏な事実に、カイトの声が擦れた。
 穢れた世界を封じるために、精霊の放った楔によって、世界は分断されている。
 アウローラ国の先は、未だ分断されたまま閉ざされているはずだった。分断された場所は霞がかかっており、行き止まりも先もなく、深く立ち入れば迷い、生きては帰れぬとも言われていた。
 クレプスクロム王国とアウローラ国のある地も分断されていたが、百年ほど前に再び結びついたという。どのように結びついたのかは人々の記憶にも記録にも残っていなかった。
「判ってはいるのです。神官は……光の魔術師に通じていたのでしょう。疑いは持っていましたが、月の都の為の政はしてくれましたので、詮索はしませんでした。――まず、先代の巫女はそれを許しませんでしたが」
 苦々しい表情のまま、長老はカイトに語ってくれた。
 彼等は門を叩くことなく神殿に現れ、時期が来ると姿を消していたという。その為、神殿の外では存在を知らない者も多かった。長老たちも、星の乙女たちも、神官とは距離を取っていたらしい。今の神官は先代の神官と共に、幼い頃からこの月の神殿に出入りしていたようだが、親子ではなかったと長老は語る。
「神官は月の都に縁がある人間ではないのですか? なぜ神殿にいるのか……」
「先代の神官はふらりと神殿を訪れ、巫女に謁見を求めました。巫女に気に入られ、『黎明の神官』を名乗り、神殿に居座りました。そして、巫女をたぶらかしました」
「たぶらかす……」
「はい。恥ずかしいことですが、先代の巫女は彼の虜になりました。先代の神官は政治的には優れており、クレプスクロム王国から迫害されている状況下で、月の神殿と都を護ったのは確かです。ですが、先代の神官は女癖が悪く、巫女と情を通じました。少なくない神殿の金品も巫女の手から神官へと流れました」
 先代の巫女は愛欲に溺れ、自ら命を絶ったという。長老の話だと、巫女は神官と共に心中した様子だったが、神官の遺体はなかったという。
 その時から、月の都では原因不明の炎が出て、血のような赤い雨が降り続けたという。赤い雨は炎を消すことなく、都は火の海になった。この都に来たばかりの、巫女になる前の幼いユーファが寝ずに祈りを捧げ、炎と雨を止め、都を救う。数年かけて、ユーファが月の巫女になり、平穏を取り戻したと長老は語った。
「ユーファ様をここまで導いたのが幼かった黎明の神官でした。神殿の前で祈りを捧げたユーファ様の横で、共に祈りました。その時から、彼は黎明の神官を名乗り始めました。前代の黎明の神官と同じく、彼の出自も怪しいのですが、彼らしく、幼いながらも、穏やかに月の都の為に巫女に助言をしてくれました。何より、ユーファ様が彼を頼りにしていました。彼を傍に置いてほしいと言うのが、巫女になった時の幼いユーファ様のたった一つの我儘だったのです。先代の巫女とユーファ様と、違う想いから、彼らの詮索は出来ませんでした」
「……そんなことが、ユーファに……」
 同じ名を持つ二人の神官。ユーファの過去。カイトの小さな呟きに長老は頷いた。
「ユーファ様はアウローラ国の生まれで、目の前でご家族を亡くしたと話されていました。故郷を失っておられるユーファ様のたった一つの拠り所が神官でした。幼い頃からこの都の為に身を捧げるユーファ様の安寧の為には、我々も少々のことには目をつぶらないとなりますまい……」

 鏡台の前、モニカにかつらを外してもらっている間、ユーファは両手を顔に当て、きつく目を閉じていた。
「終わりましたよ」
 モニカが声を掛けると、くるっと鏡に背を向けてからゆっくりと目を開けて、手を離す。すると目の前にレイリアがいて、ユーファの顔を覗き込んでいた。
「きゃあ」
 顔から離した手で自分の胸元を押さえる。とっさに身を庇うユーファを見て、レイリアが目を丸くする。
「そんなに驚かないでよ。なんで服を押さえているのよう。取って食うわけじゃないわよ」
「レイリアに襲われそうで怖いのよ。……あなたなら手あたり次第に取って食うでしょうに」
 ユーファが睨むと、レイリアは呆れ顔で腕を組む。
「もうしないわよぉ。手あたり次第って失礼だわ! ――でも許す、ユーファだもの。それよりどうして鏡を見ないの?」
「鏡は見たくないから……」
 レイリアから視線を逸らし、目を細めて呟くユーファ。巫女の衣装を片付けながら、モニカが心配そうに二人を見ていた。レイリアは気を取り直し、腰をかがめてユーファの目線に合わせる。
「ねぇ、ユーファ。レイメイの神官様ってどんな方だったの?」
「ど、どうしてそんなこと……」
 ユーファが体を強張らせ、モニカが青ざめる。そんな二人の様子を気にせずに、レイリアはユーファの顔を覗き込む。
「そりゃあ、気になるじゃない。ユーファがずっと好きだったんでしょう? 星の乙女たちも誰も話さないし、気になってるのよ」
 無理矢理聞き出そうと言う雰囲気ではなかった。穏やかな表情で話すレイリアは、揺れるユーファの瞳を見て、そっと視線を落とす。
「……髪の色のことは、ちょっとだけリルたちから聞いた。でも、本当のところは何があったのか気になってるし心配している。皆だっておんなじ。何処まで踏み込んでいったらいいのか判らないの。今のままでユーファの為になっているのか不安でもあるわ」
「レイリア様、それ以上は……」
 ドレスを床に落とし、モニカが悲鳴のような声を上げると、ユーファはモニカを見て、優しく微笑んだ。
「大丈夫よ、モニカ。レイリアには敵わないわ。……そうよね、ごめんなさい。話したくなくてここまで来ちゃったけれど、話さないわけにはいかないわ……皆にもちゃんと話すわ」

 夕食後、ルアトが神殿の書庫へ向かおうとするのをユーファが止めた。
「待って。ちょっと話があるの」
「俺にですか?」
 ルアトが怪訝な表情で振り返る。立ち上がったユーファは、皆を見回す。宮殿に星の乙女はモニカしかいなかった。
「皆にも、話があるの。そろそろ話さないといけないと思って」
「ユーファ……」
 リルが心配そうにユーファを、そしてモニカを見た。ユーファの口元には笑みが浮かび、モニカは青ざめて食器を持つ手が震えていた。レイリアたちも真剣な眼差しでユーファを見る。
「お、俺は、席を外します!」
 皆の深刻な様子に、ロニーが慌てて席を立つ。何をいまさらと、ユーファは呆れた様子で笑った。
「ロニー君もいて。だって、私の髪を普通に見ているものね。……見てるから話を聞いてほしいわ」

 秋風が涼しくなり、薄着のレイリアが長袖を着るようになった。
 レイリアが寒がるので暖炉を入れ始め、居間のソファの配置を変えていたので、皆が暖炉の前に集まった。ロニーは暖炉近くに座り、薪をくべる。思い思いの場所に座ると、モニカとリルが皆に飲み物を運んだ。皆が座ったのを確認してから、ユーファがゆったりと話し出した。
「ずっと、何も話さなくてごめんなさい。最初から、少しづつ話すわ。まず、私のこと。私はね、アウローラ国の村の生まれなの。闇の魔力を持つ人が多い村で、ひっそりと暮らしてたの」
「闇の?」
 ユーファは微笑んで、横に座ったリルを見る。ユーファはリルの手を握っていた。
「そう、それもあるから、リルの気配はとても懐かしくて心地良いの。私の魔力は何の属性かはっきりしなかったの。だから勝手に闇の魔力を持っていると思っていたのよ」
 当時のアウローラ国は、魔力を持つ人間を虐げて殺めていた。ユーファの住んでいた村もアウローラ国の兵士たちに襲われたという。
「村は火の海、容赦なく村の人を殺したわ。私は家族と逃げた。でも、父も母も殺されて……私一人だけになった。同じ村の……闇の魔力を持つ人たちと一緒に逃げた。ずっと追われて、だんだん殺されて数が減って、私たちは崖に追い詰められた。あと少しで殺されるという時に、黎明の神官……レグルス様が救ってくれたの。何故そこにいたのかは知らない。偶然かもしれないけれど、私にとっては運命の出会いだった。
 彼は光の矢を放ち、アウローラ国の兵を倒して私たちを救ってくれた。私の前に来て手を差し伸べて微笑んでくれた。安心して熱を出した私を看病してくれたわ。彼はクレプスクロム王国の、月の神殿に行くと仰った。私も一緒に行きたいとお願いしたら、笑顔で頷いてくれたわ」
 ユーファが懐かしさに優しい笑みを浮かべる。
「光の……矢……」
 震える声で、ルアトが呟いた。
 ユーファと共に逃げて来た人々も月の都に行きたいと懇願すると、神官は快諾したという。魔力を持っているだけで、アウローラ国にいるのは危険だった。
 クレプスクロム王国との国境は容易く超えられたと話す。旅は穏やかで、ユーファはレグルスを心から頼りにしたという。馬車がどのようなものだったか、彼に従者が何名いたのか、そのあたりの記憶は曖昧だと、ユーファは申し訳なさそうに話した。
 ユーファが月の都に辿り着いたとき、都は火の海、そして赤い雨が降っていたという。――先代の巫女が自ら命を絶った後だった。
「先代の巫女様とは面識がないの。私が都に来た時にはお亡くなりになられていたから……。先代の神官様のことも知らないわ。その方もレグルスと名乗っていたと長老たちから聞いたわ。――そう、巫女と神官が乱れた関係だったことも。それに怒ったのが、誰なのか判らない。でも、誰かが怒ったから、都は地獄のような有様になったんだと思うわ。
 気付くと私の髪は色が変わっていた。茶色の髪だったのに、いつの間にか輝く金色になっていた。都の人も、神殿の人も、私を見ると、月の巫女と涙を溢しながら、頭を下げて縋ってきたわ。レグルス様も、私が巫女に違いないと言った。私には何のことかすら判らなかったけれど、レグルス様が悲しい眼差しで都を見ていたから。この都がもっと綺麗で、澄んだ空気がいて満ちてて。美しい場所だったと話していたから……。だから、私は祈ることにしたの。この雨を止めて、炎を止めてくださいと。レグルス様に救ってもらった命で、資格があるならば、巫女になってこの都を優しい空気で満たすって」
 当時、ユーファは七歳だったという。何も知らない幼い巫女は、ひたすらに祈りを捧げた。
「数日経ったかもしれない。空を見上げたら、分厚い灰色の雲の隙間から、暖かい陽射しが差し込んでいた。横を見たら、レグルス様の笑顔があったわ。血のような雨は止んだ。私は巫女になることにした。――ただ、すぐには巫女にはならなかったわ」
「どうして?」
「だって何も知らない子どもだったのよ? 巫女になるまで三年待ってもらった。まず、教育を受けて、皆と対等に意見を交換できるようになる時間と知識が欲しいと、巫女の仕事もだけれど、神殿のことも解らなかった。修業として星の乙女として働く時間も欲しいと言ったわ。午前に会議、午後に勉強。政は議会と共に。というのは私の代になってからなの。巫女が勝手に都の財産を使えないように、巫女を補佐するために、議会を作ったわ」
「三年もお勉強にお仕事……ユーファは真面目ねぇ」
 クッションの上に寝転びながらレイリアが呆れた声を上げる。「仕方ないじゃない」とユーファが唇を尖らせた。
「あとは、長老たちにレグルス様が私の傍にいることを許してほしいとお願いをしたわ。それは彼にも……。ずっといる訳じゃないけれど、一年に二度、会いに来てくれると約束してくれたわ」
「たったそれだけ?」
 ルアトとリルの声が重なる。呆れ果てているレイリアの様子を見て、ユーファは苦笑する。
「それでも十分だったの。あの時の、私にとっては」
 少しの間、ユーファが口をつぐんだ。ロニーがくべる薪が爆ぜる音が響く。
「あの日、ユーファの髪が変わった日には、何があったの?」
 レイリアがクッションに座りながらユーファを見上げた。
「あの夜。レグルス様が私に言ったの。一緒に来てほしいと。何処にとは言わなかった。嬉しかったけれど、断った。断ったら、私に……呪いを……そして呪いを受け入れてファルセーダになった……? なったのだけれど、憶えていない。何があったのか。私は魔術を使ってもいなかったから、抵抗していない。だとすると、私は納得したのかもしれない。何かあったような気もする。何か酷いことを言ってしまった気もする。とても怖くて……怖いのは何だったのかすら……でも、でも、優しくて……あの時……私は一緒に行こうとした……?」
「ユーファ。もういいよ」
 ユーファの記憶は混乱しており、頭を押さえて呻く。ユーファの肩をリルが優しく支えた。
「レグルス様は……彼は、アウローラ国の光の魔術師だったのかもしれない。薄々気付いてた。でも、そんなこと、関係なかった。だって、彼がいて、とても救われてきたんだもの。でも私は彼を救えていない。最後に、拒んだわ……」
「ユーファ……」
「俺たちに話してくれて、ありがとう。大変だったんだな……」
 潤んだ瞳のまま、涙を溢さず語ったユーファ。カイトが労うと、ユーファが笑みを浮かべながら首を振る。
「いいのよ。あんたの苦しみに比べたら、私なんて大したことないの。だって苦しみたくなくて、受け入れたんだもの。でも、こんな私なのに、未だ巫女の魔力は持っているのよね。不思議だわ」
「ユーファ様!」
 皆と離れた場所に座っていたモニカが涙を溢して震えていた。
「モニカ……ごめんなさい。私はあなたが思っているほど立派な人間ではないの。私は呪いに負けてファルセーダになったの。自分を律することもできなかった。先代の巫女と同じだわ」
「そんなことありません。ユーファ様は立派な巫女です。ご自分を犠牲にし過ぎなんです」
 頭を振りながらユーファに縋りつくモニカ。彼女の取り乱し様に、皆が吃驚する。モニカの肩をそっと抱いたユーファが首を傾げながら目を細めた。その時、涙が一筋頬を伝った。
「モニカは私を心配してくれているの。……そんなに立派な人間じゃないのよ」
「だって、ユーファ様は私の命の恩人です! あの時助けてくれなかったら私は……私は」
「モニカ。助けたのはレグルス様よ。私は動けなかった」
「でも、ユーファ様が私を護ってくれました。月の魔術で私を治療してくれました!」
 泣きじゃくるモニカを落ち着かせようと、ユーファは床に座り、静かにモニカを抱きしめた。
「モニカは私が貼った結界をこじ開けて入って来てくれたの。私は自分に触れる人を傷つけるように、とても、酷い結界を張ったの。痛かっただろうに、私の為に、苦しんで、傷ついてまで傍に来てくれたの。私は恩人なんて立派な人じゃないわ。貴女は気高くて優しい。貴女の方が巫女にふさわしいわ。出来るなら、巫女の力を早く譲りたいわ。段々、髪の色が変わってきているもの。時期はもうすぐだと思うわ」
「そうなの?」
 驚くレイリアに、ユーファが頷いた。モニカは頭を振りながらユーファを見た。
「私は巫女にふさわしくありません。弱くて、何もありません。魔力も、意志の強さも。ユーファ様以外に巫女に相応しい人はいません!」
「私も何もないわ、モニカ。あなたと同じ。でも、時期が近付いているのは確かよ」
「ユーファ様……このままお傍にいさせてください……!」
 涙を溢しながら唇を震わせるモニカを見つめながら、ユーファは髪を優しく撫でながら、優しい声音で囁いた。
「私もあなたの傍にいたい。でも、ずっとは無理。――あなたなら大丈夫。何かあったときには、この都を頼むわ」
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コメント

No title

こんばんは。リルちゃんにストレートに3回くらい
可愛い、と言っちゃうカイトさん、赤くなるリルちゃんに
にやにやしちゃいます(笑)カイトさんは天然で言っている
のでしょうか…格好良いカイトさんに言われると…もうっ
ドっキドキですよ…!(笑)そしてユーファさんの、レイリアに
襲われそうで怖い、あなたなら手当たり次第…に笑っちゃい
ました~!私はレイリアちゃんに襲われたいです…(笑)
それからユーファさんのお傍にいさせてください、と涙する
健気なモニカさんにきゅんきゅんです…! 今年も物語、
魅力的なキャラクターの活躍、まったり楽しみにしています♪

先日はコメント、あちらでのご対応もありがとでした!
ご迷惑だなんてあり得ないですよ!元気になられて良かったです!
冬アニメ、CCさくらは自分の家ではうつらなくて諦めましたが
あの年であの高クオリティーな衣装を作る知世ちゃんのスキルは
脱帽(笑)fate/extraは、推しのかわいこちゃんの活躍が楽しみです(笑)

いつも丁寧なお返事もありがとです!遅くないですよ…!
本は印刷して製本、とても大変そうですが…実行する際は
告知、楽しみにしています♪ご無理のないペースでの
ご更新、リクや企画も楽しみにしていますね!
では読んでくださり、ありがとでした☆

風月時雨さん

コメントありがとうございます(*´ω`*)

リルを褒めるかどうか……カイトとルアトの違うところです。
ルアトはリルを困らせることはしたくないので、思っていても褒めない。
カイトは天然なのか真面目なのか、ストレートに褒めます(多分馬鹿真面目なの……)
褒めることも自信をつけるためには必要なので、皆の兄さんはしっかりとリルを褒めます。
それ以上にカイトはあたふたしたリルが可愛くて、相手をするのも嬉しくて楽しいんです(笑)

レイリアの行動はユーファのトラウマになってしまったかも(笑)
レイリアは手当たり次第ではなく、美しいお姉さま、面倒じゃない頼れる人を狙っています(´-`*)
ユーファとモニカとの間にあったことも書けたらいいなと思っています。
(いったいいつになるのだろう……(;'∀'))

冬アニメ、CCさくらはなんとか見れるのですが、何でBSなのかと……何でBS……
再放送もやっているからEテレでやってほしかったです。
クリアカード編、中学生のさくらが小狼くん大好きになっていてちょっとびっくりしました。
(途中までしか漫画もアニメも観ていなかったので……(;´∀`))
fate/extraも楽しみです(´-`*)

製本するとしたらオンデマンド印刷にしたいのですが、超超少部数だと金銭的にきつくなりますよね(;´∀`)
でもイベントに出るとなると、どピコで売れないのは確実なので、
やっぱり必要な分だけの思い出印刷にしようかなと思っています(;´∀`)
話が終ればいいなぁ……終わるといいなぁ……(厳しいかも……)

企画はそのうちやろうと思っています(*´▽`*)
いつも丁寧なコメントありがとうございます(*´ω`*)
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プロフィール

清水結衣

Author:清水結衣
いつもご訪問いただきありがとうございます。

オリジナル中心でお絵かき。たまに版権絵。
そしてぼちぼち文章を。
プロフ画は笹間シムロさんに描いていただきました
ありがとうございます(*´ω`*)

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